メジャーデビューから14年、これまで9枚のアルバムをリリースしてきたRIP SLYME。どれもが革新的でフレンドリーなサウンドと、圧倒的なキャラクター性を持つ4MCによるラップ/歌が貫く、間違いのないポップミュージックアルバムだ。ついに10枚目! ニューアルバム『10』は、緻密に整理された先鋭的なトラックに、ラップ/歌がすっと自然と乗っており、聞こえ方はごくシンプル。リリックの内容は、日常が透けて見えるような等身大さ。全体的にすごく自然体なんだけどちゃんと漲ってる、とても良いアルバムだ。ゆるいムードは出しつつも、自分たちが楽しくないとつまらないというスピリットを約20年もの間、実践し続けているリップのすごさがよくわかる。
記念すべき10枚目ということで、5人それぞれにとっての「リップのNo.1アルバム」をあげてもらった。RYO-Z曰く「常に新作が一番良い」ということもあり、ニューアルバム『10』は除きました。リップの真似をしようとも真似できない絶対的なオリジナリティがたっぷりと伝わる内容だと思う。
インタヴュー=小松香里
ILMARI
「『TIME TO GO』は、『TOKYO CLASSIC』のあとの自分たちらしさっていうか。攻めたのが良かったな」
ILMARI
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TIME TO GO
GOLDEN TIME
ILMARI 俺、『TIME TO GO』か『GOLDEN TIME』だな。
RYO-Z 『TIME TO GO』は『TOKYO CLASSIC』のあとに振り切ってる感じあるよね。
ILMARI 『TOKYO CLASSIC』がいっぱい売れたからね。だし、この時ものすごいめまぐるしく作ってて、俺はSteady(& Co.)やってる時期ともかぶってて、ほんと辛かった記憶しかないんだよね。だけど、『TIME TO GO』は自由にできた感じがする。
――『TIME TO GO』は性急なビートで、つんのめってる曲が多くて。『TOKYO CLASSIC』からの反動もあって、わりとやりたいようにやった感じですよね。
RYO-Z そう。ちょっと尖ってる印象がありますね。“HOTTER(THAN JULY)”とか“JOINT”とか、ドラムンベースやっちゃうし。まわりを見回したら、「俺たちみたいの絶対あり得ないな」って、当時すごい自負があったんだよね。
ILMARI そうね。意気込みっていうか、アプローチが良かったなっていう。『TOKYO CLASSIC』のあとに何を提示する?ってなった時の自分たちらしさっていうか。「じゃあ『TOKYO CLASSIC』と同じようなものを」っていう作り方は自然としてなかったし。
RYO-Z むしろ『TOKYO~』があるから、イメージを払拭しようみたいな空気が絶対強かったと思う。
ILMARI だいたいヒットが出たあとって同じようなの求められるじゃないですか。そこは嫌だっていうのが良かったかなと。
――“One”と“楽園ベイベー”のRIP SLYMEからの、っていう。
RYO-Z そうそうそう。
ILMARI でも、MTVのランキングみたいなのを家でたまたまぼーっと見てて、10位くらいから2位くらいまで来て、「あ、リップ入ってない」って思ったら、1位が“JOINT”ですげえ良かったと思った。攻めたのが良かったなって。
RYO-Z
「『FIVE』は全部に思い入れが詰まってるアルバム」
RYO-Z
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FIVE
RYO-Z 『FIVE』は、インディーズからメジャーに行っての記念的なアルバムですし。『10』もそうなんですけど、1年以上かけてプリプロをしてっていう、同じくらいの制作期間で。これ以降結構コンスタントに出していくので、そこまで時間をかけられてはいないんですけど。だから、練りに練った曲たちが入ってる。すごく目立つ曲ではないんだけど、“光る音(feat. YO-KING)”とかすごいいいなと思うし。1曲1曲に全部思い入れがあるという意味では、重みとして『FIVE』だったりするんだけど、『GOLDEN TIME』ができた時に、ほんっといいアルバムできたなと思って。あとは常に新作がいいってことであれば、『10』以外で言うなら『GOLDEN TIME』だから、この9枚のなかの進行形で言えば一番いいっていうことでもあるかな。
ILMARI わかる。
RYO-Z だから俺は『FIVE』か『GOLDEN TIME』ってこと。
ILMARI 『GOLDEN TIME』は、いいアルバムなんですよねえ。
RYO-Z できた時の「ハイ来た!」みたいなものをすごく感じて。もちろん、他のアルバムでもそれぞれ感じてきてるんだけど、これの手応えは一番良かったから。
PES 『GOLDEN TIME』、いいね。
ILMARI いいよね。
――『GOLDEN TIME』は結構メロウな曲が多いですよね。
RYO-Z そうですね。だから大人な感じがするんですよね。40で何言ってんだって思うけど(笑)。当たり前じゃねえかって話なんだけど。
――でもリップって、いかに大人になっていくかっていう歩みだなと思うんですけど(笑)。
RYO-Z ええ、確かに(笑)。『GOLDEN TIME』はジャケも含めてシンプルでいいもんなあ。でも『FIVE』かなあ。やっぱりこれは、ほんとに全部に思い入れが詰まってるって感じのアルバムだから──俺、じゃあ『FIVE』で!
PES
「『GOLDEN TIME』の制作は、『FIVE』から『STAR』までを濃縮したような1年ちょっとでしたね」
PES
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GOLDEN TIME
――PESさんは?
PES まあ『GOLDEN TIME』ですかね。
RYO-Z 出ました。
PES 僕にとってはちょうどソロのあとのアルバムだったんで。結構自分たちでやったところもあって。途中からまたスタッフの方々がこう──。
RYO-Z 忍び寄る(笑)。
PES 感じもありましたし。元の形にだんだん戻ってくる前の、一からやってる感じがあって。“ロングバケーション”から始まって、主催イベントの「真夏のWOW」とか、いろいろ思い入れがありますね。
――じゃあ久しぶりにリップやったみたいな感じも良かったんですかね。
PES そうですね。最後のほうにできた“SLY”のあたりからだんだん「あ、RIP SLYMEって、スタッフの人が入ってきてこうなるんだな」っていう感じがありましたね。『GOLDEN TIME』は、『FIVE』から『STAR』までをギュッと濃縮したような1年ちょっとでしたね。
――それ、1年に相当濃縮してますよね(笑)。
PES はい。そして「今」っていう感じです(笑)。
――その濃縮って、具体的にどんな感じだったんですか?
PES 一からコツコツ手作りっていうか、FUMIYAん家で“ロングバケーション”のコードがどうだみたいな、細かいところをやってて。それでちょっとずつ作っていって盛り足して、そこにスタッフの人がのっかってきて、だんだん主導権をスタッフの人がとり(笑)、そして僕らはだんだん受け身になっていくっていう、その濃縮具合がはっきり表れてるなっていう(笑)。