「空想と現実の融合」を鳴らすバンド
THE SIXTH LIEとは何者だ!?
ロックとEDMがひとつのアンサンブルの中で「混ざり合う」「共存する」レベルを超えて、まったく別次元の音楽へと合体&極限進化したような覚醒感。「空想と現実の融合」をコンセプトに掲げた世界観と共鳴し響き合いながら、無限のイマジネーションの「その先」へと飛翔するようなスケール感――。
2016年9月7日(水)に1stアルバム『INTEGRAL』をリリースする新鋭4人組=THE SIXTH LIEの音楽には、鳴った瞬間に目の前をスタジアムクラスのロマンで埋め尽くすような、ハイパーでハイブリッドな高揚感が確かに備わっている。「永遠の近未来」の風景を音像だけでなく、Ray(Dr)が監督・編集を務めたミュージックビデオの映像美にも結晶させた“Wake Up Your Fire”に触れれば、彼らの才気と音楽的探究心が十分に伝わることと思う。
RO69初登場となる今回のインタビューでは、果たして彼らはどこから生まれて、どこを目指しているのか?という基本的なバンド像からその表現の核心までじっくり迫ってみた。
「ジャンルとしてEDMを取り入れよう」っていうより、バンドの世界観を作る上でその「音」が必要だった(Ray)
――すごいアルバムですね。「ロックにEDMを取り入れた」とかじゃなくて、それこそロックとEDMがDNAレベルでひとつになったみたいな感覚があって。もともとこういう音を志向していたんですか?
Ray(Dr) そういうわけではなかったですね。最初はよくあるエモロックみたいなことをやってたんですけど、「バンドの軸となる方向性がほしいね」っていうことで、去年の6月ぐらい……ちょうどHiroto(B)が加入したぐらいから、EDMを取り入れたサウンドにはしてますね。「ジャンルとしてEDMを取り入れよう」っていうより、バンドの世界観を作る上でその「音」が必要だから入れたものなんで。
Reiji(G・Programming) ロックとEDMを融合してるバンドって多いイメージがあるんですけど、それじゃダメだと思って。本場の海外のDJとか、ミックスしてる人たちの音源をいっぱい聴いて。“Wake Up Your Fire”のミュージックビデオを去年の11月に公開してるんですけど、それまで俺、打ち込みを1回もしたことなくて。1ヶ月ぐらい、ほんとに猛勉強しましたね。
――そういうサウンド面での勉強、っていうか研究の過程はどうでした?
Reiji いや、それが思った以上に楽しくて。作ってるうちに、「あ、これは新しいものができたんじゃないか?」って。
Ray あの曲と、あのビデオを作る流れで、今の形ができたというか。その時にいろいろReijiが考えてあの曲を作って、映像も「こういうふうにしていこう」みたいな。あの映像と曲を通して、世界観を作っていけた感じはありますね。
――そもそもTHE SIXTH LIEを結成する時に、「こういうバンドをやろうぜ」的な合言葉、コンセプトみたいなものはあったんですか?
Ray 最初の頃は、結構転々としてて……。
Reiji もともとこのふたり(Reiji&Ray)はメタルが好きで、メタルの情報交換をする掲示板で会って。最初ふたりで曲を作ってたんですけど、その頃は結構、メタル調の曲をいっぱい作ってて(笑)。
Ray 曲を作りながらずっとメンバーを探して――Arata(Vo)とHiroto(B)もネットで見つけたんですけど。メンバーもちょっと替わったりしながら、今の4人になって。「このメンバーでできることは何だろう?」って考えた時に、今みたいな音楽性になって。それまではわりと、ふたりで本当にいろんな曲を……メタルとかももちろん作ってたし、打ち込みの多い曲は作ってなかったですけど、いろんなジャンルの曲を作っていて。わりと引き出しはたくさんあったので、新しいメンバーが揃った時に「じゃあこういう音楽性で行こうか」ってすぐに決められましたね。
――ArataさんとHirotoさんは、どういう形でバンドに加わっていくんですか?
Arata 僕、大学2年まで陸上で長距離をやってて。故障続きで、「このままじゃ箱根(駅伝)走れねえ」ってなって。自分探しをしてたところもあって、「バンド始めようかなあ」って思って。メンバー募集サイトで結構いろんなバンドを見た中で、ふたり(Reiji&Ray)に会って。カラオケに行って「ちょっと歌ってよ」みたいな感じで言われて、ONE OK ROCKを歌ったら「いいじゃん!」って――。
Ray 「歌ってよ」とは言ってないよ!(笑)。僕とReijiでいろんなメンバーに会ってて――だいたい最初に会う時は、どんな人か見たかったんで、歌を聴きたいっていうより「一緒にカフェで話そう」っていう感じだったんですけど。Arataだけは最初から「歌聴かせたいんで、カラオケ行きましょう!」って。
Arata え、俺が言ったんだっけ?
Ray そう(笑)。そんな人はArataだけでした。で、聴いたら歌うまくて。すぐ決まりましたね。
――Hirotoさんは?
Hiroto 僕、モデルやってるんですよ、今でも。
――それでマスクで顔を隠してるんですか?
Hiroto あ、全然それは関係ないんですけど(笑)。ツイッターのプロフィールに、自分がやってることだけ「ゲーム、モデル、ベース」って書いてたんですよ。そしたらふたり(Reiji&Ray)が、ツイッターで「モデル」「ベース」で検索してたらしくて(笑)。
Reiji 「技術的なものは練習でなんとかなる! 潔く、顔で行こう!」って(笑)。
Ray わりとReijiが背が高いので、左右にある程度背が高い人がいたほうがいいなっていうのがあって。それで検索したら、「あ、イケメン出てきた!」と思って(笑)。ダイレクトメールでアポ取って。
Hiroto 「超怪しいなあ」と思ったんですけど(笑)。まあでも、人が良かったんで、「楽しいかなあ」と思って入ってみたら、結構ガチでびっくりして(笑)。
Ray あんまりこういうタイプがいないんですよ、メンバーに。わりとみんな真面目で――って言うとHirotoが真面目じゃないみたいだけど(笑)。ちょっと抜けたところが、ムードメーカーみたいな感じで、今はわりと必要なキャラになってますね。
Reiji で、せっかくイケメン入ったのに、気がついたらマスクしてたっていう(笑)。
Hiroto あのマスク、カッコいいじゃないですか。それだけで決めました。
SFも美術も「世界をこういうふうに見たんだよ」って新しい世界の見方を教えてくれる。それを音楽で表現できないかなあって(Ray)
――ReijiさんとRayさんは、リスナー体験的にもメタルはルーツとして根強い感じですか?
Reiji そうですね。どんな音色を使ったとしても、根本的な土台はそこでできあがってる感じですね。小学校の頃に、兄にリンキン・パークを聴かされて。それが今になって表れた感じで。
担当スタッフ Reijiはアンビエントミュージックも大好きだよね?
Reiji ああ、そうですね。俺、好きなアーティストも、勉強として聴いちゃうんで。一貫して聴いてるのはほんと、川のせせらぎとか、しずくの落ちる音が延々流れるやつとか(笑)。
Ray 宗教音楽の、子供たちがコーラスしてるようなCDを、ボックスで買ってきて(笑)。
Reiji 大全集ね(笑)。
――音楽だけじゃなくて、そもそも「音」が好きなんですね。だから逆に、EDMのアレンジも「このシンセの音圧すげえ!」っていう観点で素直に取り入れられるのかもしれないし。
Reiji それはあるかもしれないですね。
――Rayさんもわりと洋楽寄り?
Ray そうですね。高校の時からずっと聴いてたんで、ジェネシスとか……僕はジャケットのデザインとかもやってるんですけど、たぶんそういうところにも表れてるんじゃないかと思います。歌詞を書く時も、日本語の歌詞でも響きを大事にしようと思ってて。楽器のそれぞれの音色と同じように、歌詞も音の響きをちゃんと考えたいなと思うので。曲の響きを崩さないような日本語を書くように意識してますね。
Arata 僕は、MR.BIGとかマイケル・ジャクソンとかから入って。で、そこからEDM系で言うとモードステップとか……わりとエモ系のバンドも聴いてたんですけど、スリーピング・ウィズ・サイレンスとか。あとR&Bとか、結構幅広く聴いてましたね。邦楽も、高校の時はみんな「この詞がいいよね」みたいな感じで、RADWIMPSとかも聴いてて。そこでこう、日本人がグッとくるようなメロディもわかってきた感じがします。
Hiroto 僕はレッド・ホット・チリ・ペッパーズですね。それがルーツっていうか、気がついたら聴いてた、みたいな感じですね。邦楽も、(凛として)時雨とかいろいろ聴いてますけど、一番ハマったのはレッチリですね。
――っていうお話を聞いていると、やっぱり「ロックがロックのまま、マスに届く図太さを獲得するにはどうしたらいいか?」みたいな視点を、4人それぞれが常に持ってるような気がしますね。
Reiji 難しい曲知ってるわりには、わりかしみんなシンプルなもの作ってるよね。
――(笑)。不思議な成り立ちのバンドではあるけど、4人で鳴らしてる音を聴いてると、ちゃんと全員の音が必然的なものとして響いてくるし、ハイパーな世界観を作り上げてるのが面白いですよね。
Ray わりと僕は美術系のものも好きで。夢と現実が合わさったようなものとか、子供の頃の夢みたいな世界観が好きで、そういうのを入れていこうと思ったところがありますね。「空想と現実の融合」っていうイメージを掲げてバンドもやってるんですけど、それも自分の興味が強いと思いますね。
――SFっぽいような、でも現実で鳴ってるような。『ブレードランナー』みたいな感覚ありますよね。
Ray そうですね。SFって――美術とかもそうですけど、作品の監督とか作者とかが「世界をこういうふうに見たんだよ」っていう、新しい世界の見方を教えてくれるものだと思うんですよ。そういうのを音楽で表現できないかなと思っていて。僕は歌詞を書いているので、歌詞の面で「こういう世界の見方があるんだよ」っていうのが言えたらいいなぁと思って。結構「曲先」のことが多いので、僕が曲を聴いた時に「あ、こういう世界観の歌詞がハマりそうだな」って書くパターンが多いですね。
――曲とメロディにインスパイアされて言葉が出てくるっていうことは、これから生まれてくる曲なり音なりが変わっていくと、また歌詞の世界観も変わっていくかもしれない?
Ray そうですね。でも、その「空想と現実の融合」っていうところはたぶん、そんなに変わっていかないかなと思ってますね。