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    曲を書いている時に嘘っぽかったりするのがすごく嫌なんですよ。だからまったく希望がない状態って、もはやリアリティがないじゃないですか?

    ──なるほど。ちなみに歌手としての自分を客観的に見た時に、どういうタイプのシンガーだと思いますか?

    「うーん……不足? 歌手としては。歌下手すぎる」

    ──あまり自分の歌に自信がない?

    「ないですねえ。特にここ3日ぐらい、あんま声が出ぇへんからよけいに『……歌手で?』って思いますけどね、こんな感じで(笑)。昨日たまたまカラオケに4時間ひとりで行って歌ったんですけど、歌下手すぎて。『ああ、ヤバいなあ』と」

    ──それは技術的な問題? 声量とか、トーンとか、キーがとか?

    「うーん。ピッチ悪いしなあ……。もっと歌うまくなったらいいなとは思うんですけど。あたし、エレカシの宮本さんが一番、歌手としては好きなんですよ。あの人、めちゃくちゃ歌うまいじゃないですか。でも変な技術を入れないで、スッと歌うでしょ? あの感じがすごく理想的なので。技術を磨こうとかはまったく思ってなくて、単純にピッチ外さないとか、ロングトーン伸びる、みたいな感じで歌いたいと思っていますね」

    ──なるほど。そして最後3曲目の"朝焼けの番人"。これはもう身も蓋もないことを言うなら、あとに取っておいてもいいんじゃないかなっていうぐらいの曲ですよね。

    「ほんとですか? あたしもこれ、ライヴで歌うのめちゃ好きなんで。うん、好きですあたしも。書いた時は、ほんとに悲しみの淵で。朝、チャリで帰ってきている間、ずっと悲しくて、つらくて。『あぁぁぁぁ』って泣いているぐらいの時に朝焼けがあったので、そのままバーッて1曲書いたんですけど。なんで、これを書いた時はひたすらつらかったです。たぶん1、2時間ぐらいで書いてるとは思うんですけど」

    ──ただ不思議と重くないというか、スッと入ってくる曲になっていますけど。

    「ほんとですか? よかった」

    ──情念の塊!みたいな曲ではないですよね。

    「(笑)気持ちもわかるんですけど、女の子って別れたとかもう会わないみたいなことを決める時って、すごく大袈裟やなあ!と思うんですよ。だって今別れたとしても、何かあったらまた付き合えるわけじゃないですか。お互いその後、彼氏とか彼女ができようが、やっぱり好きやなあと思ったら、付き合ったらいいじゃないですか。わかるんですよ、悲しみの淵に立っている時の気持ちは。でもうちの母親とかそうなんですけど、『つらぁい! 私は何も生きていく糧がないから、もう死にます!』みたいなところを見ていると、嘘やなあと思う」

    ──クールですね(笑)。

    「だから《14時間後にはふつうにメールを送るよ》っていう歌詞はそういうことなんですよね。だから曲全体も重くないのかなと思うんですけど」

    ──なるほどね。だからさっきから話している植田真梨恵の書く「せつなさ」っていうのは、終着点が絶望とか闇じゃないんだよね。ラストにはちゃんと光が残されている。

    「うんうん。メジャーデビューしてからは、そういう曲しか歌いたくないというのは思っていたので。それはこれからも、そう作っていくと思います。何か心境の変化がない限り」

    ──こういうことができるのも、メジャーに行って極端に「明るくなろう」「もっとみんなに愛される人間になろう」っていうスタンスで音楽活動をしてないからだと思いますよ。

    「そうですねえ。あたしは特に曲を書いている時に嘘っぽかったりするのがすごく嫌なんですよ。だからまったく希望がない状態って、もはやリアリティないじゃないですか? そんな状況になったことってないじゃないですか。何かひとつを諦めれば、今は救われたりするっていうことが絶対にあるので。ほんとに八方塞がりっていうのをあたしは経験したことがない。だからあたしが書けるせつないとか悲しい曲には、たぶんこれくらいの希望感は含まれるのかな。それが一番リアルだからですよね」

    提供:GIZA studio

    企画・制作:RO69編集部

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