ゆるめるモ! 豪華作家陣とコラボしたアルバム『YOUTOPIA』を語り倒す!


音が鳴っていると素直になれるし、ライブハウスはそういう場所(しふぉん)


――すごくいいアルバムですね。

ようなぴ ありがとうございます。タイトルを『UTOPIA』ではなくて『YOUTOPIA』にしているんですけど、「私と君との距離感」っていう形での楽園を作れないかなと。そういう思いをこめて今回のアルバムを作っています。

――ライブでお客さんと作れる空間も、ある意味、今作で表現されているユートピアでは?

けちょん そうですよね。自分たちもライブ中に感情が入るんですけど、お客さん自身も感情を露わにしてくれるのを感じるんです。「楽しい!」っていうものを一緒に作れていると、すごく嬉しいです。

あの なかなか思ったようなことができない時もあるけど、自分たちとお客さんとの距離感というか、「そこでしか存在しない」っていうものがあるのがライブなんですよね。ひとりひとりのお客さんと会話している気持ちにもなれるからライブは好きです。

しふぉん 私はもともとライブが大好きで、よく観に行って泣いたり笑ったりしていたんです。今こうしてステージに立つようになりましたけど、泣いたり笑ったりしてくれている人が、めちゃくちゃよく見えるんですよ。言葉で感情を表すのは、難しいことがよくありますけど、音が鳴っていると素直になれますし、ライブハウスってそういう場所ですよね。

あの ぼくはゆるめるモ!に入る前は、何ひとつやりたいことがわからない状態で、やることもなかったんです。「楽しい」とかいう感情も、もともとあんまりなくて。そこからゆるめるモ!に入って、音楽とかに触れて、「これが楽しいっていうことだな」というのがライブを通してわかったりするようになりました。やりがいも感じるようになって、ひとつの居場所というか、「ここで歌ってるのは、嘘がないな」と思えるようになっています。

――このアルバムの曲たちも、聴いた人にとっての大事な居場所になっていくんだと思います。サウンドも圧倒的にかっこいいですし。例えば“歩くの遅い犬”は、サイケデリックなサウンドが好きなロックファンが大喜びする音ですよ。

ようなぴ この曲はメンバーそれぞれの歌い方で新しい挑戦をしています。音の中で酔い痴れると言いますか、トリップするような感じで歌いました。

あの この曲はギターも弾いて、初めてアームを使ったんです。安原さん(編曲で参加した安原兵衛)のお家で録ったんですけど、「マイブラっぽい」って言って頂けたのが嬉しかったです。

――たしかに、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインっぽいです。“永遠の瞬間”にもシューゲイザーっぽいギターが入っていますし、こういう演奏する機会が増えていますね。

あの はい。こういう音、かっこいいと思います。ライブで毎回違う音を出せるのも楽しいです。レコーディングの時もぶっつけ本番でやるんです。そういうものと曲のポップさが合わさって完成された音を聴くと、すごく「わあっ!」ってなります。

けちょん アルバムの1曲目から面白いことができました。イントロが超長いですし。

――1分ちょっとありますよね。

けちょん はい(笑)。「ちょっと長いなあ」って思っていたんですけど、何回も聴いている内に心地好くなってきています。ライブでどうなるのかが楽しみな曲のひとつですね。

しふぉん 1曲目のイントロで1分ちょっと経つまで歌が始まらないというのは、結構チャレンジャーだなと(笑)。でも、すごくこのアルバムのオープニングにふさわしいと思います。ロックが好きな人にも、ぜひ聴いてほしいですね。

音楽業界の人には褒めて頂けるんですけど、世間には受けが悪い(笑)(あの)


――“天竺”も、聴いて仰天しました。アフリカの民族音楽的だったり、ミサ曲っぽかったり、いろんな展開を遂げるこんなサウンド、他で聴いたことがないです。

ようなぴ この曲は、たしか『孤独と逆襲EP』の頃にはありました。でも、「今の自分たちでは、まだこの壮大さを表現できない。4人としてもっと成長した時にやりたい」っていうことになっていたんですよね。“天竺”は、『YOUTOPIA』の中でも軸になっていると思います。みんな「社会」っていうものの中でしかいろいろ考えられないですけど、人間の根本、「生命」としてこの星で生まれて生きるという部分を考えるきっかけになるのが、この曲だと思います。

――三島想平さん(cinema staff)がベース、張替智広さん(HALIFANIE)がドラムを叩いているんですね。

ようなぴ はい。それも聴きどころです。コーラスも歌って頂いたんですけど、鳥肌が立つくらいグッとくるものになりました。

しふぉん 私たちがサルとかゴリラになった声も被せてあります。

ようなぴ ガヤのレコーディングの時、私はけちょんと一緒に録ったんですけど、ふたりでゴリラセッションをしました(笑)。川村美紀子さん(舞踊家、コレオグラファー。水曜日のカンパネラ、amazarashi などの作品も手がけている)にお願いした振り付けも、すごい印象的なものになっています。頭で考えるんじゃなくて、身体から溢れ出たものを表現するような感じの曲ですね。

――“must 正”も、不思議な雰囲気です。テクノポップを下地にして、アイリッシュフォークっぽい要素も入っていたりして……これ、なんと表現したらいいか難しいですね(笑)。鳴っている独特な音色は電子バグパイプですが、頂いた資料によると、日本のレコーディングで使われたのは初らしいですよ。

しふぉん そうなんですか? 今、初めて知りました(笑)。

――こういう新鮮な刺激が満載なのも、ミュージシャンとかの間でゆるめるモ!の人気が高い理由のひとつだと思います。あのさんも、いろんなクリエイターの間で大人気じゃないですか。

あの 音楽業界の人とかには褒めて頂けるんですけど、世間には受けが悪いです(笑)。

新しいことにどんどん挑戦している実感は自分たちでもある(けちょん)


――ゆるめるモ!はいろんな発見もさせてくれるグループです。

けちょん ありがとうございます。新しいことにどんどん挑戦している実感は、自分たちでもあるんです。みなさんは、そういうところに注目してくださっているんですかね?

――そうなんだと思います。参加しているクリエイターも、ワクワクしながら曲を提供しているのを感じますし。例えばPOLYSICSのハヤシさんが手がけた“しんぼりくむ れすぽんす する”なんて、聴いているとすごくキュンとなるテクノポップです。

ようなぴ ハヤシさんもこの曲が気に入っているとおっしゃっていました。ゆるめるモ!は、ハヤシさんの愛を受けているなと感じています。「ゆるめるモ!の親なんじゃないか?」っていうくらいの目線で見てくださるので。私はもともとPOLYSICSが好きで、ライブにも通っていたくらいなので、とても嬉しいです。

――ゆるめるモ!は、クリエイターの創作意欲を掻き立てるところが、すごくあるんだと思います。“永遠の瞬間”も、後藤まりこさんの胸の内にいろんな思いがあったんですよね?

ようなぴ はい。この4人なってからのゆるめるモ!のライブを後藤さんが観て、「今のゆるめるモ!はこの曲だ」と思って作ってくださったんです。

――大森靖子さんが作詞作曲をした“うんめー”も、みなさん各々の姿とゆるめるモ!が鮮やかに表現されていますし、すごく愛を感じます。《あげられるものはひとつ 絶対 全部うまくいく歌》とか《ここにあるのは 君と僕の透明な運命と境界線/こっち側なんてないんだから 君もおいでよ》とか、とても温かいです。

ようなぴ 今回のアルバムの『YOUTOPIA』ということと、すごく繋がっている曲だなと思っています。

けちょん すごく反響があった曲でもあります。

――《ずっと誰にも言えなかったけど/僕は誰より 愛が上手いんだ》って、とても優しい言葉ですね。表に出せなかったとしても、感情や愛ってちゃんとあるものですし、尊重されるべきなんですから。

しふぉん そうですよね。この曲をライブでやると泣いている子がすごく多くて。「わかってくれた」とか「自分が言いたかったことをゆるめるモ!が言ってくれた」という感想をよく頂くので、お客さんと繋がったなと感じられる曲です。

あの 「自分がお客さん側でこの曲を聴いたら、目の前にいるファンの子みたいに泣くかもしれないな」と思える空間が、女子限定のライブをやった時にあったんです。すごく好きな曲です。ゆるめるモ!は、境界線を作らずに活動してきたつもりなんです。住んでいる世界はみんな一緒だから。

社会で窮屈な想いをしている人たちに寄り添いたい(ようなぴ)


――眠れない夜を描いたミドリカワ書房さんの“ごろごろ物思い”も、独特な雰囲気ですね。

ようなぴ ミドリカワ書房さんには前にも曲を提供して頂いて、「またお願いしたいよね?」っていう話をずっとしていたんです。何曲かデモを作って頂いたんですけど、いろいろお話をして出来上がったのが、“ごろごろ物思い”です。

プロデューサー・田家さん 他にも面白い曲があったんです。でも、シチュエーションとかが限定されている感じだったんですよ。新入社員が花見の場所取りをしている歌とか。

――ユニークな設定ですね(笑)。

しふぉん めっちゃ面白い曲でした。

けちょん インパクトがすごかったです。

あの ミドシンさん(ミドリカワ書房の本名・緑川伸一の愛称)のいいところが出過ぎていたんです(笑)。前に“夢なんて”を作って頂いた時も、最初はDVの曲だったんですよ。

プロデューサー・田家さん その時は、僕が「さすがにエグ過ぎるので、もうちょっとソフトにしてください」と(笑)。

ようなぴ そうでしたね(笑)。“ごろごろ物思い”も、ゆるめるモ!にとって新しいタイプの曲になりました。初めてのテンポ感ですし。

プロデューサー・田家さん みんなに今までになかったテンポ感で踊ってほしくて、CHAGE and ASKAの映像でイメージを掴んでもらったんです。「ASKAさんのこのテンポ感。ゆっくりなんだけど16分が染みついている、踊らせる感じ」と。

ようなぴ その感じでリズムをとって、レコーディングの時も歌いました。いろいろ考えたりしながら音楽をやるのが、毎回楽しいんですよね。

――あと、“逃げない!!”も、注目するリスナーがたくさんいると思います。代表曲の“逃げろ!!”と関連付けて受け止めるんじゃないでしょうか。

しふぉん タイトルだけ見ると“逃げろ!!”のアンサー曲のように捉える人もいそうですけど、そうではないんです。人生の中では逃げるのが必要な時と、「今はちょっと頑張れるかもしれない。頑張ってみたい」という時、どっちもあると思うんです。だから“逃げない!!”は、“逃げろ!!”に対する「私は逃げないぞ」っていうものではなくて、「私は術をふたつ持てる」という感覚の曲なんですよね。

――なるほど。各曲にたくさんのメッセージが込められていますし、『YOUTOPIA』は、様々な形でリスナーの心の支えにもなれるアルバムだと思います。

ようなぴ ゆるめるモ!は、社会で窮屈な想いをしている人たちの心に寄り添いたいんです。

あの ゆるめるモ!の曲にはそういうものがあるので、ぼくも歌っています。もし自分がゆるめるモ!に入る前に、この4人のグループが存在していたらと考えると、なんか変な気持ちになります。「人生変わってたかもしれない」って思うし、「そうだったらいいなあ」っていうことも感じます(笑)。でも、自分はゆるめるモ!のあのなので、今が一番いいです。

けちょん ゆるめるモ!が、いろんなところに届いてほしいと思っています。地球外生命体のところにも行けたらいいなと、真面目に思っていますから(笑)。

――(笑)今作は、4人のゆるめるモ!になってから最初のフルアルバムでもありますけど、この編成になって、どういうグループになったと感じています?

しふぉん 最近、より個々がゆるめるモ!でいることについて考えるようになりました。しっかり感情を伝えられるようなグループになってきましたし、人間味も増してきたと感じています。

ようなぴ 自分たちを何かに当てはめる気持ちはないんです。ゆるめるモ!の昔の曲の“ぺけぺけ”という曲の歌詞に《道無き道をゆく》というのがあるんですけど、まさにそれだなと。今ある誰かが作った道じゃなくて、道がまだないところに自分たちなりの道を作っていく気持ちでいます。

しふぉん どんな人に対しても刺さる曲がきっとあるはずなので、とにかく広げていきたいですね。最近家族連れが増えてきていて、「よし!」と思っています。

あの 道で歩いている家族連れを見ると、「こういう人たちに届いてほしいのに、まだ届き切ってないんだな」と感じて悔しくなったりするんです。だからなんとしても広めていきたいです。

MV

リリース情報
『YOUTOPIA』通常盤
『YOUTOPIA』初回盤
『YOUTOPIA』
発売中
(通常盤)¥2,500+税/YLRC-027
(初回盤)¥3,000+税/限定16Pブックレット写真集付き/YLRC-028
収録曲:
1.歩くの遅い犬
2.逃げない!!
3.ミュージック 3、4分で終わっちまうよね
4.モイモイ
5.しんぼりくむ れすぽんす する
6.Youとピアザ
7.サマーボカン(Remastered)
8.やる
9.うんめー
10.あ!世界は広いすごい
11.ごろごろ物思い
12.ナイトハイキング(Remastered)
13.永遠の瞬間
14.must 正
15.天竺

ライブ情報
2017年12月2日(土) 松本MOLE HALL 「啓志(kOTOnoha)pre.ECSTACY OF GOLD」
2017年12月4日(月) 新宿ロフト 「ゆるめるモ!×NIGHT ON THE PLANET!presents 『バトルニューニュー』
2017年12月6日(水) 原宿アストロホール 「H.I.P. presents さよならASTRO HALL公演」
2017年12月15日(金) 大阪ロフトプラスワン 「ほなめるモ!〜ゆるめるモ!味園ユニバース前夜祭〜」
2017年12月21日(木) 渋谷O-EAST 「GIRLS ROCKS」
2018年1月3日(水) お台場・青海周辺エリア 「TOKYO IDOL PROJECTと@JAM『ニューイヤープレミアムパーティー 2018』」

「ゆるめるモ!YOUTOPIA TOUR」
2017年12月10日(日)  HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2(SOLD OUT)
2017年12月16日(土) 味園ユニバース
2018年1月6日(土) Zepp Tokyo

掲載情報
『ROCKIN‘ON JAPAN』1月号
2017年11月30日(木)発売

提供:You'll Records(アソブロック株式会社)
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部