おいしくるメロンパンが『flask』で織りなす「攻めた」アンサンブル。このバンドサウンドはいかにして生まれたか

おいしくるメロンパンが『flask』で織りなす「攻めた」アンサンブル。このバンドサウンドはいかにして生まれたか

わかりやすくおいしくるメロンパンの新しい一面みたいなものを見せられたっていうのはあるかな。こんなにギター歪ませた曲ってなかったし、歌詞も今まで以上にファンタジックになって(ナカシマ)


──どれくらい、試行錯誤でアレンジを試したりしたんですか?

峯岸 5万通りくらい(笑)。ドンピシャでハマりそうなものができても、ちょっとした違和感があると、やっぱり違うねって。いかんせん悩み過ぎてたもんで、正解を見つけても、正解だと思えないくらいまで悩んでたから。結局、5万通り目が今採用されてるアレンジなんですけど(笑)、これはけっこう来たなと。

ナカシマ 毎回さあ、好き勝手展開してくのはいいけど、帰ってこれなくなってるじゃん? そうやってスピード変えたりとか、拍子を変えたりして、そのまま戻れなくなって、うわこれどうしようってね。それに今回けっこう苦しめられたよね。

──いろいろ試して「これでしょう!」っていうのは全員一致で決まったんですか?

ナカシマ そうですね。

峯岸 テンポが速くなって、アルペジオが入ってくる流れは、僕は間違いなく正解だったと思います。まあ、元のリズムに戻る帰り方っていうか、それが難しかったからね。

ナカシマ でも、わかりやすくおいしくるメロンパンの新しい一面みたいなものを見せられたっていうのはあるかな。こんなにギター歪ませた曲ってなかったし、歌詞も今まで以上にファンタジックになって。わりと他の曲ってさらっとしてて、だからこの曲が、聴いてて一番引っかかるものになったかなと思います。

──聴いていて、他の曲がさらっとしているとは、私は全然思わなかったですけどね。それこそ峯岸さんが言ってた「コントラスト」の結果なのかな。“candle tower”が際立ってる分、他の楽曲はさらっと感じるのかもしれないけど、たぶん単体で聴いたら全然そんなことない。

ナカシマ そうですかね。ありがとうございます。

──“candle tower”は言ってみれば没入感の塊のような曲で、否応無く引き込まれていくけど、でも、そのあとに入っている“走馬灯”にしたって構成は相当ユニークだと思うんですよ。すごく興味深い曲だし、この作品のイメージを象徴するような不穏さとポップさがある。

ナカシマ この曲は、歌詞的には“epilogue”と対になるものを作りたいと思ってて。なので歌詞を読んでもらうと、ちょっとリンクしているようなところがあると思うんですけど。今回“epilogue”を、この盤を作るにあたっての軸みたいに考えていたから、最後に対になるこの曲が必要だなって思って書いたんですよね。

──ナカシマさんは、歌詞については説明しすぎないほうがいいというスタンスだから、詳しくは語ってもらえないと思うけど、『flask』で表現したかったことってどんなことですか?

ナカシマ 言えることがあるとしたら、『無垢である』ということと『濁る』ということ。このふたつの対照的な事柄について、いろいろ長ったらしく表現してるアルバムなんじゃないかなって思いますね。

僕がこうしたいっていうのが伝わってるっていうのがあって。今回はわりと、アレンジもみんなに相当やってもらって、僕が作るデモからイメージやニュアンスを、説明せずとも理解してくれるようになったなって(ナカシマ)


──『flask』っていうタイトルはどういうイメージでつけたんですか?

ナカシマ 前回同様なんですが、「フラスコ」そのものの意味ではつけてないです。これまでの作品を並べてみた時に、今回はこういうイメージっていうか。入れ物の名前として考えた言葉でしかないです。僕は、なんか「なんとなくわかるでしょ?」っていう考え方しかしてないし、そういうのが好きなので。楽曲も歌詞の言葉ひとつとってもそんな感じなんです。

──うん。何かを説明しているタイトルでも歌詞でもないんだけど、でもそこに浮かぶ風景、イメージっていうのは、作品をリリースするごとにどんどん明確になっていくのが面白いなあと思います。それこそ「コントラスト」が強くなったってことですよね。コントラストが強くつくようになったっていうのは、それぞれプレイヤーとしての力量の向上だったり?

峯岸 ひねくれの向上だったり(笑)。

──それもありますね(笑)。

ナカシマ イメージっていうか、感覚が近くなってきた感じはあるよね?

峯岸 3人の? ああ、そうだね。

ナカシマ なんとなく、僕がこうしたいっていうのが伝わってるっていうのがあって。今回はわりと、アレンジもみんなに相当やってもらって、僕が作るデモからイメージやニュアンスを、説明せずとも理解してくれるようになったなって。

──ほぼ1年に1枚、ミニアルバムをリリースしてきて、今作が4枚目なわけですけど、どんどんおいしくるメロンパンというバンドの個性や持ち味がくっきりと濃く表現されてきていると思うんですよね。

原 最初の頃は使える色が少なかったんですよね。12色の色鉛筆で描いていくみたいな。それが今は使える色も増えて、グラデーションもつけてみようかみたいな。ちゃんと1歩ずつ進化してるなあと思います。

峯岸 僕はあんまり自分たちの曲を並べて、その違いを哲学したりはしないんですけど、最初の頃の曲とかを今聴くと、「だっせえなあ、このベース」とか思ったりはします。で、今なら「そのフレーズ、こっちのほうがよくねえ?」とか、「こうしてたらもっとかっこよくなったのに」とか思うんですけどね。でも、たとえば“色水”のあそこのフレーズすごいダサいけど、でもそこを変えたら“色水”じゃなくなっちゃうし、あの時はあれが正解だったんだって思います。けど、やっぱり今のほうがおいしくるメロンパンっぽいなって思いますね。あの頃はまだ横に他のバンドを並べられたけど、今はもう横にはいないなって感じがする。その流れが1stから今作までの4枚ですごく見えますね。

──今回もレコ発のツアーが決まっていて、今作の楽曲がライブで演奏されるのがまた楽しみです。

ナカシマ ワンマン。意識としてはでも、前回とそんなに変わらないですけどね。

峯岸 でも前回より頑張りたいな。曲も増えたし。

──そうですよね。昨年の『hameln』ツアーもとても充実してたんですけど、もう少し長くやってほしいなあって思ったのが正直なところでしたから。

原 ですよね。だから今回それが増えるのも、僕らとしてもライブが楽しみになる要因のひとつなんです。あと、僕らがちゃんとレベルアップしたっていうところを感じてもらえるようにしたいですね。楽しみにしていてください。

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