phatmans after school改め「saji」、新たに描き始めたポップとバンドの進化形

phatmans after school改め「saji」、新たに描き始めたポップとバンドの進化形

3人でやったもののベストが武器だったり「らしさ」になっていく感じが一番、今は出せてるのかなって思います(ヤマザキ)


――今回の表題曲“ツバサ”はアニメ『あひるの空』のエンディングテーマですけども。

ヨシダ アニメのプロジェクトが始動する段階でお声掛けいただいて――僕自身も小・中と僕もずっとバスケやってて、中学校の時に連載スタートした『あひるの空』をリアルタイムで読みながらバスケをやってた人間なんで。「『あひるの空』っていう作品のフォロワーとして大好きな僕が主題歌を書いたら」っていうことで一回自由にやります、っていうことで第一稿でお渡ししたものが一発OKで、歌詞もほぼ変わってないです。バンドらしさもあり、アニメにも親和性の高いものが自然とできたかなって。

――phatmans時代のエッジィなギターロック感に比べれば格段にポップな方向に踏み出してますけども、じゃあポップスかと言えば、外でもないバンドとしての温度感の中で絶妙に表現していて。

ヨシダ sajiってバンドですけど、ただロックバンド然としたものを提唱してやっているわけではなくて。音楽をやっていく上で、僕らがやってきたこととか、僕らが証明していることが、たまたまバンドっていうだけで。「俺たちロックバンドなんですよ」っていうことは、良くも悪くも特になくて。ただ、僕らの表現というか発信はあくまでバンドなので……とはいえ、phatmansでも僕らは「バンドをやってるのにバンドだと思われてない」っていうのがあって。僕はニコ動のクリエイターの知り合いがめっちゃ多いんですけど、僕はニコ動出身でもないし。「歌ってみた」とかの人でもないし、曲を作って上げてた人でもないんだけど――。

ユタニ 結構、P(ボカロP)と間違われてたからね。

ヨシダ そうそう。そっちの畑の人だと思われてたから。それは別に、僕らとしては何とも思ってはいないんですけど、そういうこともあって一度「バンドとして一回ちゃんと見せよう」って思ってやったら……超ハマんなかったんですよ(笑)。「これは良くも悪くも、僕の土俵じゃないな」っていう感覚があって。そういう中で、たまたま今回の『あひるの空』の主題歌の書き下ろしの話をキングさんからいただいた時に、「一緒にやるんだったら、僕らをバンドと思わずに、キング・アミューズの成功体験の中でやってくれるのが一番いいのかもしれないです」っていう話をしていく中で、今回のスキームになったので。僕にとっては実験的でもあり、実はバンドのキャリアの中で一番合ってる、ベストなスタンスに落ち着きそうな気がしますね。

ユタニ 確かに、今が一番しっくり来てる感じはありますね。試行錯誤をしたりする中で、今は結構落ち着いてるなというか。気持ち的に気楽に、ナチュラルにやれてる感じはありますね。

ヤマザキ まあでも、今回の『ツバサ』もそうですけど、わざわざ3人で集まって出すのって、やっぱり「らしさ」がなきゃいけないし。3人でやったもののベストが武器だったり「らしさ」になっていくと思うんですけど。そういうのが一番、今は出せてるのかな、って個人的には思ってますね。

思想的にもアウトプットもロックっていうバンドと比べると、僕はそこが結構雑多な人間なので。でもそれも個性だし(ヨシダ)


――今までphatmansを聴いてた時は、ヨシダさんってもっとアーティスティックかつストイックに音楽に向き合うタイプのバンドマンかな?と勝手に思ってたんですけど。こうやって話を聞いていると、すごく俯瞰的なプロデューサー視点を持ってる方ですよね。

ヨシダ それが僕は、昔からジレンマだったんですよ。わりと冷めてるというか、俯瞰視しようと小賢しくしちゃうんで(笑)。でも、そういう人間だったからこそ、今の関係が合ってるのかもしれないです。思想的にもアウトプットもロック、っていう他のバンドと比べると、僕はそこの部分が結構雑多な人間だったので。でもそれも個性だし、自分で変えられるものでもないじゃないですか。だったら僕は僕でやれることをやろう、って思い始めたのがここ数年、個人の仕事をやるようになってからですね。

――なるほどね。

ヨシダ だから、面白ければいいかなって思ってます。「僕バンドマンなんで、それはちょっと」みたいなことは全然ないですし。だから別に、たとえばユタニくんに熱湯風呂の仕事が入ったとして――普通のバンドなら受けないわけですよ。でも僕は、オファーが来たらたぶん「いいじゃん」って言いますよ。「やらされてる感じを出すなら受けなくていいけど、君の中で勝算あれば出ていいよ」って(笑)。普通のアーティストは、「いやあ、夏フェス(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)出たいんですよ」って言うじゃないですか。彼に関しては「DJで出たい!」ってずっと言ってますからね(笑)。

――DJブース、似合いそうですよね。

ユタニ ぜひ! バンドもね。バンドも出れると――。

ヨシダ 「バンドもね」っておかしくないですか? 僕が普通のバンドマンだったら「逆だろ!」ってキレますよ(笑)。バンドで一度も出てないのに、DJで出てたら面白いですからね。

ユタニ 「来年はバンドで出ます!」(笑)。

ヨシダ (笑)。でも今の時代、そういうやつがいてもいいと思うんですよ。

――12月にはsajiとして初のワンマンライブも控えてますけども。それも含めた今後については?

ヨシダ たぶんみなさん、「どういうライブをやるんだろう?」ってすごく気にされるところだと思うんで。「sajiってどういうものなんだろう?」っていうものを体現できるような――ひとつのショウとして観れるものにするのか、あるいはいろんなものを削ぎ落として、逆にすごくソリッドなライブをやるのか、そこはまだいろいろ考えてるところですね。で、「『ツバサ』の後にはこういう曲を歌おう」っていう次作のイメージは、僕の中にすでにあって。『ツバサ』とその次の2作品である程度、世間的に面白い影響を及ぼせるようなものを作れたらいいなと。で、phatmans時代から名前は耳をかすってたけど音は聴いてなかったような人も、「あ、こんな感じの音楽だったんだ」って逆輸入的に聴いてくれるようになればいいなと思いますね。

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