あいみょん、超・名曲“愛を知るまでは”&極上のスタンダードナンバー“桜が降る夜は”――そのすべてを語り尽くす!

あいみょん、超・名曲“愛を知るまでは”&極上のスタンダードナンバー“桜が降る夜は”――そのすべてを語り尽くす!

何から愛されていないんやろ?って思った時に、音楽からまだ愛されていないなっていうのがあって。
この歌の中で言ってる《愛》って、自分にとっては音楽やったなって

――そして“愛を知るまでは”。これ、決定的な名曲じゃない?

「いい曲なんですよ。めっちゃいい曲」

――いつ作ったの?

「2017年かな? ドラマ(『コントが始まる』)の書き下ろしのオファーを監督さんから直々にいただいて、5、6曲、ワンコーラス書き下ろしたんですよ。でも『コントが始まる』のような青春群像劇にハマるのって、2017年、自分がいちばん這い上がりたかった時に書いた曲なんじゃないかなって思ったんですよね。それで、この曲どうですか?って提案をさせてもらった感じです」

――なるほどね。ちなみに、その頃に作った曲って、何曲ぐらいあるの?

「当時は、めちゃめちゃ作ってましたね。年間50曲ぐらい作ってました。メジャーデビューが2016年で“生きていたんだよな”とか、次の年に“愛を伝えたいだとか”とか“君はロックを聴かない”とかを出したんですけど、その頃は、誰かがいいって言ってくれてるのはたまに聞くけど、メディアに取り上げられるような知名度はなかった時で。私は、自分が決定的にアーティストとして世に出れたと思ったのは2018年なので。だから、2017年は自分の中で音楽ではまだまだみたいな時期で、いっぱい曲を作ってましたね」

――これは何かを探している曲だし、自分に何かを言い聞かせている曲でもあるし、つまりそういう時期だったと。

「そうですね。歌詞を読み返すと、当時の自分の状況が浮かんできます。《愛を知るまでは死ねない私なのだ!》って言ってるんですけど、当時の自分にとって愛ってなんやったのかって考えて。私、家族から愛されていないっていう実感はなかったし、愛されているなって思っていたほうですし。で、生活も、もちろん音楽をもっと頑張らないとなって思いながらも、死にたくなるような出来事がそんなにあるわけではなかったので。唯一、何から愛されていないんやろ?って思った時に、音楽からまだ愛されていないなっていうのがあって。この歌の中で言ってる《愛》って、自分にとっては音楽やったなって、あらためて思いましたね」

――今聴き返すと、焦ってるというか、苛立っているなあとは感じるの?

「ああ、感じます。やっぱり自分の長所は、意外とポジティブなところで。あんまり表には見せないですけど、自分に自信を持っているタイプですし、『音楽に関しては絶対に才能がある、天才だ!』って言い聞かせながら活動してきて。でも、デビューしてCDを出すと、目に見えてわかるわけじゃないですか。自分がどういうふうに聴かれているのか、どういうふうに注目を浴びているのか。思っていたほどじゃなかったから、それに対して焦りとか、『自分の音楽は受け入れられへんのや』って思うところがあって。歌詞よりも言葉の選び方を見ると、すごくイライラしていたのかなって思います」

――どのあたりに感じるの?

「なんやろ? サビの《優しい心を持ちたいのだけれど/時にはがむしゃらに怒って/涙は真に受け止める》は当時やからこそ出た言葉で。“生きていたんだよな”を出した時、ほんまにイライラしていて、譜面を部屋に叩きつけて踏みつけたりしてたので。でも、時々そういう自分がいないと逆にやってこれなかったと思うんですよね、がむしゃらに怒る自分もいないと。悔しくて、めちゃめちゃ泣いたりもしましたし。だから、音楽っていうものに与えられた、怒りとか涙とか悔しさみたいなものがあって――『私はこんだけ音楽にいじめられてきた』っていう。やったら、音楽でどうにかしたいって思ってたのかもしれないですね、この時は。音楽からの愛を知るまでは死ねないのかなあ、みたいな。周りの売れてるバンドマンとか音楽をやっている人がうらやましかった時期ではありますね」

あいみょん、超・名曲“愛を知るまでは”&極上のスタンダードナンバー“桜が降る夜は”――そのすべてを語り尽くす!

この曲は自信あります。今、こういう曲を歌えるのは自分しかおれへん!って思ってます

――この曲を聴いて、そして、あいみょんの話を聞いて思ったのは、やっぱり今リリースされてよかったんだなあって。2017年にリリースしようと思ってアレンジをしたら、もっと苛立ったアレンジになっていたと思うんだよね。

「ガシャガシャした?」

――そうそう。アレンジは曲によって呼ばれるものだと思うから。この曲は、スタンダードなアレンジ、王道なアレンジを呼べる時期に、世の中に出るべきだったんだなという気がするんだよね。

「すべては、導かれるままになっていくんやなって思いますね。そういう意味で言うと、今後自分が書いていく曲ってどんなんやろう?っていうのは楽しみでもある。でも、この曲は自信あります。今、こういう曲を歌えるのは自分しかおれへん!って思います」

――ほんとにそうだと思う。この曲って、ポエム的というより、文章的じゃない?《走れど走れど続く/人生という名の死ぬまでのエピソードは/軽いままの身体では/吹き飛ばされて/すぐに終わってしまうな》って、一文で1ブロックっていう。これ、歌詞なんだけど、文章だよね。

「ああ、嬉しいです。読み物だと思ってもらえて。日記っぽいですよね」

――まさに。うまいこと象徴的な言葉を並べていこうっていうよりも、言いたいことを全部書こうっていう。

「そうですね。うまいことを言ってやろう感はないですよね(笑)。そうそう、2017年以降は、いろいろ学んで、うまいことやろうとしていくんですよ、私も。そういうのは、この曲にはあんまりないかもしれないです」

――だから、言いたいこと、あるいは自分に言い聞かせたいこと、整理したいこと、そういう思いがある中で作った曲なんだろうなあって感じがした。

「歌詞の《夢で終わる夢ならば/見なくていいと 自分に言い聞かせた》も、『こんなに思い描いてきたシンガーソングライターっていう夢、しんど!』『夢見てたままのほうがよかった』って思いますね、いまだに。マジで、シンプルに叫びたかったんだと思う。若いなあって思いますもん(笑)。こういうがむしゃらな曲を歌っている人はいても、最近こういう曲は誰も歌っていないのかもしれない。だから、久々のヒリヒリ感。『元祖あいみょん、再び』みたいな(笑)。22歳の時に書いているので、そりゃそうなんですけど」

――だって、《愛を知るまでは死ねない》って、なかなか言えないよね。

「ほんまですか(笑)。やっぱり“君はロックを聴かない”でバーンってなるって信じていたから。音楽に対する理想が高かったからこそ、突きつけられたものが大きかった。だから、大きいことを言ってやろう、じゃないですけど。それは、歌詞を読むと感じます、《誰にもないものを持っていたい》とか」

――あと、この曲には、すっごいドラマチックな展開があって。

「声だけになるところですか?」

――そう。どういう感覚で作ったの?

「いつもはDメロがあるんですけど、この曲はないんですよ。だから、そういうちょっとハッとする部分をどこに作るかって考えた時に、ここかなって。珍しく、“桜が降る夜は”も“愛を知るまでは”もDメロがないので。最初『“愛を知るまでは”にDメロ作る?』って言われたんですけど、基本的に私、(最初に作ったものから)書き替えるのが好きじゃないので、アレンジでDメロ的な見せ場を作ろうと思って。自分の声が唯一、もろに楽器になるところですね。音に包まれている音源がいっぱいある中で、声だけになる音源って意外と痺れるなって思います。自分の曲ですけど、『よっしゃー!』って感じになる。そういう気持ちになってくれる人が、ひとりでもいればいいなと思いますね」

――その「よっしゃー!」は、どういう「よっしゃー!」なの?

「え、なんやろ、『ここまできたぞ!』みたいな(笑)」

――あの頃の音楽に愛されていないっていう気持ちをここまで連れてきてやれたんだ、っていう感じなの?

「っていう感じですかね? なんかガッツポーズしちゃう感じです。これが聴かれへんかったら『マジか……』って落ち込むな、絶対(笑)。ま、こうしてリリースできるだけで幸せなことですけどね」

――でも、あいみょんにとって、たくさん聴かれる、いろんな人に聴かれることは、ひとつ重要な価値観なんだね。

「めっちゃ重要です! どんな芸術も、人に見られて宝になっているわけじゃないですか。ピカソの絵も、岡本太郎の絵も、人に見られて、人に評価されて育っていったものたちですし。だから音楽もそうじゃないですかね。人にいっぱい聴かれて名曲って呼ばれるようになるし。人に評価される、人に見てもらうってことは、どういうものでも大事だと思います。やっぱり聴いてもらいたいですし、評価してもらいたい。そこは絶対的ではあります。もちろん、ファンのみんなが喜んでくれたら、それだけでいいと思うこともありますけど、やっぱり、それ以外のところにも届くっていうのが理想ですね」

JAPAN最新号 表紙は星野源! BUMP OF CHICKEN/宮本浩次/ゆず/東京事変/あいみょん/WANIMA/UNISON SQUARE GARDEN/JAPAN JAM 2021
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