LiSA、新曲“HADASHi NO STEP”を語る。自身の主義、その現在地と、新たな挑戦としての「ラブソング」まで――今の胸中を明かした最新インタビュー

LiSA、新曲“HADASHi NO STEP”を語る。自身の主義、その現在地と、新たな挑戦としての「ラブソング」まで――今の胸中を明かした最新インタビュー

いちばんピッタリだなって思ったのは、《みんな いつもYES,NOで 決めたがるけど》っていう、2番のサビ。私が知りたいのは愛なんだよ!みたいな感じ

――サビの頭は、《世間はいつも愛だ恋だ それもいいけど/じぶんを ねぇ、ちゃんと 抱きしめてたいよね》っていう。これ、すごいフレーズだと思う。LiSAのひとつの価値観が出ていると思う。

「はい(笑)」

――さっきも話したけれども、白だか黒だかなんてどうだっていいんだっていう。自分が決めたことをやり抜くか、やり抜かないかだけの話で。白なら白で選んだし、黒なら黒で選んだらそれを貫こうとするんです私は、っていう。

「私、いちばんピッタリだなって思ったのは、《みんな いつもYES,NOで 決めたがるけど》っていう、2番のサビでした。私が知りたいのは愛なんだよ!みたいな感じ。好きとか、恋の気持ちを気にしなくちゃいけない職業ではあるし、それを表現していかなきゃいけないっていうのはわかったうえで、でも、時にそれを気にしないで、ちゃんと自分を抱きしめるために、あとのことはケツ拭いておくんで!って言える自分の気持ちの落とし前は、大事かなって思いました」

――LiSAっていう人の腹の括り方みたいなものが、すごく出ているよ。

「何も嘘はないです」

――だから、“ADAMAS”などで書いてきたことと、この曲で書いていることは、形は違うけども、根本的な部分では一緒という感じがする。自分の価値観と、落とし前の付け方。

「そうですね」

――面白いよね。

「うん(笑)」

――で、Dメロもまたすごくよくて、《私らしくない 趣味も、主義も》そして《思想も》っていう言葉を使っているのね。《思想も》っていう言葉って、歌詞に多用されるものではなくて。考えや想いっていう言葉じゃなく、《思想》という言葉をわざわざ使っているっていう。しかも《主義も、思想も》って、近しい言葉を2回も使っている。ここは、なんでなの? 音が気持ちよかったとか、そういう理由もあると思うけど。

「そうですね、音が気持ちよかった、全部『し』から始まる言葉にしたかったっていうのはあるんですけど。でも、私の中で、主義とか思想って、めっちゃ大事なところなんですよ。自分の中で作ってきた思想ノートみたいなものがあって、たとえばこうやって小栁さんが話してくれた言葉によって、あ、ピッタリなほうはそっちだ!って書き直す、みたいな。やっぱり、私は素敵な人の好きなところを集めて自分ができている感覚がすごくあるから。それを書き換えてしまうほどの、簡単な言葉で言うと好きだなって思う人に出会えることがいっぱいあります、大人になって」

――なるほどね。でも、わざわざ主義と思想って……まあ、「し」で合わせたからなんだろうけど。

「なんか、『私って、そういう主義じゃん?』って言われても、知らんがなってなるじゃないですか(笑)」

――なるよね。

「そういう子、たまにいますよね。『私、好きなものから食べる派』って、知らんし!みたいな」

――ははは、そうだね(笑)。

「そうですか!ってなるんですけど。でも、なるほどね、それ考えたことなかったわってなることもいっぱいあるし。そういう、人の主義とか考え方とか、言葉の選び方とか、見え方って面白いなって思うんですよね。でも、それって、好きな人に会ったからこそ思うことだなって。なので、きっとそれを大きく言うと、恋とか愛とかって呼ぶんじゃないかなっていう感覚です」

嘘なんて一個も書いていないんだけど、血を流していない感覚もあるっていうのは、その自分を許せなくはないから。自分らしく生きるための主義を提出した気持ちです

――LiSAが、自分という人間の価値観や考え方を、強く出すことを、許している曲に聴こえるんだよね。自分を堂々と出している曲に聴こえる。愛も恋もいい、だけどそれ以上に、自分は自分をちゃんと抱きしめたいんです、主義や思想っていう言葉を歌う人間であることを肯定したいんですっていう。こういう形で隠さずに書いている曲は、実はあまりなくて。もう少しペルソナがあるというかね。でも特に素直に書けた曲という感じがする。そう言われるとどうですか?

「そうですね、適当に書いたところは本当にひとつもないです。これまでもごまかしてきたことなんかないんだけど、あらためてごまかすのをやめようって思いました。それは、ある意味、これまで血を流して書いてきた曲と同じで。ただ、自分の経験とか感情を掘って書いたものというよりは、自分会議みたいな、私って、これに対してどう思っていますか?っていう会議を繰り返した結果です」

――これまでと違う書き方をしているの?

「いや、違う書き方はしていないけど、新しいテーマだったかも。強くなりたい歌は山のようにあったので。自分の中の強くなりたい会議では、たくさんの答えがあったんですけど(笑)。生きていく中で、恋ってなんだ? 愛ってなんだ? 私にとっての恋とか愛って、家族愛と一緒だな、みたいな。だから、考えることがいっぱいあったっていうか、新鮮なテーマがいっぱいあった」

――自分を削るようにして書いている、という意味では、これまでの多くの曲にも通じているんだけども、この曲は自分を生け贄にするような、そうすることで大衆の欲望を満たそうとするようなスタンスとも違っていて。相手が求めるタイミングじゃなくて、マイペースで血を流す、ある種のわがままさみたいなものがあるような気がするんですよ。そしてそれは、LiSAがここから10年続けていくために必要な自分書きなんじゃないかなと、僕は思ったわけです。

「今、小栁さんの話を聞いていて、なんだろうな、これまでって、誰にもわかってもらえるわけないな、でも、私こんな汚い部分あるな、こんな悲しい部分あるな、寂しい部分あるなっていうのを、吐き出したほうがいいな、吐き出さないと伝わらないなっていうところで吐き出していたんですけど。うん……長年向き合ってきた、恋に対して、恋愛ソングを書くことに対して冷めている感覚みたいなものの理由を、自分で突き止めたらこれだったっていう感じです。なんで私、恋しちゃった!とか歌わないのかなって。だから、真剣に向き合って書いた曲だし、嘘なんて一個も書いていないんだけど、血を流していない感覚もあるっていうのは、その自分を許せなくはないから。自分らしく生きるための……この言葉を使うと、主義を提出した気持ちです」

――そうなるまでに、何が大きかった?

「んー、やっぱり、“炎”までが大きかったかな。絶対天下獲る!みたいな気持ちがずっとあったし、そこで獲らなかったら私はいつか終わる、いつかなくなる、いつか年を取って、いつか歌えなくなるっていう危機感でずっと走ってきたんですけど。コロナのこともあって、絶対ここに行かなきゃいけないっていう気持ちよりも、本当に大事な人たちと長く生きていくために、自分が後悔しないような人生を歩んでいくために、どういう走り方をして、どういう生き方をしようかっていうのを、ひとつの山のてっぺんで考えたんです。だからかな。もちろん、全力で走りたいし、できることなら誰にも負けたくないし、誰にも奪われたくない場所だけど、でも、自分がそこに行けたこと自体がすごく幸せだと思えたんですよね」


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