mzsrz、「生きがい」とまで語る、歌わなければならなかった理由。それぞれの声とDECO*27の歌詞で表現する5人の人生観をインタビューで探る

mzsrz、「生きがい」とまで語る、歌わなければならなかった理由。それぞれの声とDECO*27の歌詞で表現する5人の人生観をインタビューで探る

mzsrzは生きがいです。私には何もないなって思っていたので、このオーディションに受からなかったらすべて終わりにしようと思ってました(ゆゆん)

――みなさんが「歌いたい」と強く思う背景にはどういった経験や感情があるのかを探りたいと思っています。なぜ歌手になりたいと思ったのか、なぜ歌うことが好きなのか、ひとりずつ聞かせてもらえますか?

ゆゆん 私、ボカロが好きで、顔を出さないで匿名でネットに歌をあげる「歌い手」さんにすごく憧れてて。小学5年生の時に歌を投稿するようになったんですけど、コメントや拍手、いいねをもらうと、自分が認められたんだなって思うことができるので、それがモチベーションになって投稿を続けてました。

――生活、学校とか、歌以外のところだと、なかなか自分が認められないといったフラストレーションや寂しさみたいなものがあったんですか。

ゆゆん 自分の人格、顔……というか自分自身が(自分を)認められなかったかなって。私、自分の容姿が嫌いで、いつもマスクをして学校に通ってて。中学2年生の3学期あたりに、いきなり朝起きられなくなって、通院もして。高校生になっても症状がずっと続いてたので、高校を中退しているんですよ。中退して、一時期ずっとひきこもりだったので。ひきこもり時代も「親に迷惑かけちゃってる」とか、自分が情けなくって、毎日すごく沈んじゃって。生きる意味がないなってずっと思いながら生きてました。

――じゃあ今mzsrzという環境にいれることは、なんというか……。

ゆゆん 生きがいです、私にとって。このオーディションにかけていたので。私には何もないなって思っていたので、このオーディションに受からなかったらすべて終わりにしようと思ってました。今こうやってデビューもできて、そして今回アルバムを出せる……「出せる」というか「出させていただく」という気持ちなんですけど、自分の存在証明ができてすごく嬉しく思います。

――実果さんはこれまでどんな人生を送られてきたんですか。

実果 私が歌手になりたいと思ったタイミングは2回あって。1回目が幼稚園の時で、もう1回がこのオーディションの一次審査を通過した時で。その間は、忘れてた、というか、歌手になるのは普通じゃないことだって周りを見て思ってたのでその夢はなかったことにして、私は公務員になるんだと思って過ごしてたんです。今回(オーディションの課題曲が)DECO*27さんの曲だったので歌ってみたら「オーディション通過しました」というメールがきて、そのタイミングで「私、そういえば歌手になりたいって思ってたな」っていうのを思い出したというか。

――実果さんはもともと「クローゼットの住人S」という名前で歌の投稿をされてましたが、クローゼットの中で歌うことが、実果さんの日常生活においてどういった楽しさをもたらしてくれるものになっていたんですか。

実果 小6くらいの時に自分の部屋ができて、クローゼットがあったので歌い始めたんですけど。暗くて狭い場所が、なんかすごく好きというか、安心するというか。小さい頃からひとりでいる時間が多くて。その時に寂しくないように歌ってたというのもあります。「公務員になりたい」とか、「勉強ができない」とか、いろんな不安を忘れられる時間だったなとも思います。

――作山さんはいかがでしょう。

作山 由衣 私は、祖父から「歌手になりたい」と思わせてくれるきっかけをもらいました。幼少期によく親戚一同でカラオケに行っていて、そこで祖父が歌を歌ってくれてたんですけど、そしたら親戚みんなが一気に笑顔になるんですよ。私自身も笑顔になって。歌で人を笑顔にできることの素晴らしさを知って、自分も歌で世界中の人たちを笑顔にしたいって思ったのが歌手を目指したきっかけです。

――じゃあ、おじいちゃんは今の作山さんを見てなんて言ってますか?

作山 ……祖父は……亡くなって……(涙ぐむ)。

実果 大丈夫、ゆっくりで大丈夫だよ。

作山 (涙を拭きながら)デビューする前に亡くなっちゃったので、実際の言葉は聞けてないんですけど。こうやってmzsrzで活動する前も歌手を目指してたくさんオーディションを受けてたので、きっと天国で……喜んでくれてると思います。

――泣かせてしまってごめんなさい。では、きらりさん、お願いします。

大原きらり 自分は、中学時代に出会った音楽の先生がスパルタで厳しい教育を受けて、見返してやろうみたいな気持ちで歌声を磨いていくうちに、「あ、こういうのが私は得意なのかな」と思って、そこから目指すようになりました。学校の先生なんですけど、本当にスパルタで。どこぞの合唱団みたいな勢いのレベルですっごく厳しく教育されて。自分は歌を歌うのが好きだったし、ちょっと自信があったんですけど、全然評価されなくて、「頑張って歌ってるんだけどねえ、声が出てないよねえ」とか言われた時に、カチン!ってきちゃって。もとから負けず嫌いなんですけど、特に歌は好きだったからこそ、どうにかこの人の評価を変えてやろうと思って、満点を取ることに命をかけてたら褒められるようになりました(笑)。

――よせいさんが「歌いたい」と思うのはどうしてですか?

よせい 私は、物心がついた時から歌うのがすごく好きだったんですけど、大きなきっかけはBIGBANG様のライブを観に行った時で。あまりにもワクワクと感動と元気をもらって、音楽のエンタメの素晴らしさに改めて気づいて、私もこうやって誰かの人生に彩りを与えられるような歌手になりたいなと思ったことがきっかけです。BIGBANG様がライブのパフォーマンスに全集中といいますか(笑)、全力で全身で伝えているのが見てわかるし、彼ら自身が音楽を愛してるというのもわかるので、アーティスト側の「喜び」と観客側の「喜び」、両方が合わさって「最高」みたいな(笑)。その会場全体が愛に包まれてる感じが素晴らしいなと。元気がない時でもBIGBANG様の曲を聴くとすごく元気をもらえるんですよ。盛り上がってなくても盛り上がっちゃう。私の中で欠かせない存在です。

DECO*27さんに、深いところを読み取られた感じがしてびっくりしました。自分から滲み出るものが言ってはなくても伝わったんだなって(作山)

――デビュー曲“夜明け”は、DECO*27さんがみなさんへインタビューをしてから書き下ろした楽曲ですよね。DECO*27さんは、メンバーひとりずつの背景を巧みに歌詞に落とし込んでいらっしゃるなと思うし、それぞれが「なぜ歌を必要としているのか」の証にもなっていると思います。当時、DECO*27さんにどういったことを話して、そしてこの歌詞にどう共感しているか、聞かせてもらえますか。

よせい みんな同じことを聞かれて、「最近むかついたことあった?」「嬉しいことあった?」とか。“夜明け”はそれぞれのパーソナルな部分が出てると思うんですけど、私はサビの《逃げよう さあ今日がやってきた/絶望を照らした偶然が まだ大丈夫って笑うんだ》が、逃げてもいいんだっていう気持ちにさせてくれて、そこに共感してます。

――よせいさんは、何から逃げたかったんですか。

よせい 現実、っていうんですかね。私は、ずっと歌手になりたかったんですけど、親に反対されてて。「歌手なんかで食っていけないよ」って。本当は歌手の道を進みたいけど結局大学に進学することになって、大学の勉強から逃げたいという気持ちとかがありました。

大原 私自身も、友達が少なかったり、信頼できる大人が今までいなかったりで、誰に対してもあけすけに話したくなかったところがあって。「むかついたことは?」って聞かれて、本当はめっちゃくちゃあるけど言えなかったんです。でも歌詞を見た時に、私が感じていた嫌なことや不安なことから「目を背けてもいいんじゃない?」って誘いかけてくれてる感じがあって。自分のことを話して、相手から「つらかったねえ」とか言われても軽く聞こえてしまったりするけど、いちばんかけてほしかった言葉が、隣で寄り添ってくれて「違ってもいいよ」「泣いてもいいよ」「忘れな」という言葉だったんだなと思って衝撃を受けました。

――サビ頭の《ここで泣いていいよ》が、DECO*27さんからみなさんに対しての「ここmzsrzで泣いていいよ、感情を爆発させていいよ、自由になっていいよ」というメッセージであり、そしてこれをmzsrzが歌うことでみなさんからリスナーへのメッセージにもなっているという。そういった大きなストーリーが、たったこの一言で表現されてるわけですね。

作山 私も「むかついたことは何?」って聞かれて、学校の勉強や先生への不満をしゃべったんですけど。《答えを探して 迷い込んだ/僕の“正解”はなんだろう? わからないままで》という歌詞が、学業と歌手活動どちらに進めばいいんだろうって悩んでた、深いところを読み取られた感じがしてびっくりしました。DECO*27さんに、自分から滲み出るものが言ってはなくても伝わったんだなって。

実果 作ちゃんと一緒で、DECO*27さんはしゃべってないところまで歌詞にしてくださったなと思います。《辛くたってひとりで抱え込んでいたんだ》は、(自分が)悩みを人に相談できないこととかが表れてて。全部ひとりで抱え込んじゃうから、本当にその通りだなって思います。あと、DECO*27さんに推しの話をして「音楽に救われた」みたいなことを話したので、《絶望を照らした偶然が》という歌詞を歌うたびに、自分を救ってくれた音楽とか、あと先生や友達の顔を思い浮かべます。

ゆゆん 私は《誰かと違うから 指をさされ/“本当”だって偽物 信じられないよ》というパートを歌ってるんですけど、高校を中退してアルバイトをしてるのって、私の周りから見たら普通じゃない考えだと思ってるので。きっとこの歌詞は、私とDECO*27さんが話した時のものから切り取っただけじゃなくて、オーディションの頃から私を見守って書いてくれているんだなって解釈してました。

次のページ純粋な気持ちでみんな歌ってるので。それが5人分集まれば、すごく力の強い、想いの強いものになってるんじゃないかな(大原)
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