“貴方の恋人になりたい”がSNSをきっかけにとんでもない広がりを見せ、一躍大注目の存在となったチョーキューメイ。傍から見れば劇的な変化にも思えたが、彼女たちは嬉しさを受け止めつつも決して浮き足立つことなく、しっかりと自分たちが鳴らすべき音楽にフォーカスを当てている。ニューシングルの表題曲“promise you”はまさにそのスタンスが形になった一曲だ。このタイミングだからこそ、安易にポップ路線を歩むのではなく、深く響き、共に生きようと呼びかけるバラードを提示する。さらに同シングルには、TVアニメ『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。』のエンディングテーマ“PRIDE”も収録。メンバー全員がアニメ好きということで、原作へのリスペクトを込めながら自分たちらしさも込めた絶妙なバランス感覚を誇る曲であり、その対比も面白い。また、1月から放送のTVアニメ『ゆびさきと恋々』のエンディングテーマとして書き下ろし、可愛らしさとポップに振り切った“snowspring”についても語ってもらった。この1年でよりグルーヴが高まったという彼女たちは頼もしくもあり、ワクワクもさせてくれる。
インタビュー=ヤコウリュウジ
注目されてる今だからこそ、チョーキューメイの真髄っぽい曲を打ち出せたら、かっこいいんじゃないかって(麗)
――先日、SNSを見てたら麗さんが路上ライブをやられてて。ものすごい人だかりでしたね。麗(Vo・G・Vn)「そう……かもしれないです(笑)。予告したのもあったんですけど、新しいお客さんが増えてました」
――2023年は以前より求められてると実感することも多かったと思います。ステージ上から見える景色も変わったでしょうし。
空閑興一郎(Dr)「シンプルに会場が広くなっていって、広さに比例してステージの高さも上がるじゃないですか。たくさんのお客さんを見下ろす形になることが増えてきて。『すげえな、これがみんなが言う景色ってヤツか!?』って(笑)」
麗「確かに(笑)」
れんぴ(EPf)「あと、ステージが大きくなると言っても一気にバーンッていうより、1年かけて徐々に大きくなっているので、ずっと変化してるのがめちゃめちゃ面白かったなと思ってます」
藤井ごん(B)「観客が増えてきたのもありますし、曲終わりに歓声が上がるようになって。自分たち、コロナ禍に結成したので、最初の頃はパチパチパチぐらい(の拍手だけ)だったんですけど、今だと『ヒュー!』みたいな声が上がるようになってきて。そうやって喜んでもらえて嬉しいな、と」
――世間的には“貴方の恋人になりたい”で劇的に状況が変わったようにも見えるんですけど、皆さんの実感としてはちょっとずつ、っていう。
空閑「そうですね。これまでもずっとライブをしてきて、リリースもしてきたので。聴いてもらえるようになって、数字も増えてきたけど、やることは変わらないよね、って」
麗「ただ、ライブをやること自体に前向きになったのはあるかもしれない。喜んでくれる人の数が前よりも格段に増えたのもあるから、うちらも楽しいし、みたいなところで」
――そういった中で、シングル『promise you』が完成しました。表題曲“promise you”は共に生きようというミディアムバラードですが、こういったテイストの曲がきて驚きましたよ。
麗「結構言われます(笑)」
――夜の深い時間に溶け込むようなムードをまとっていて、持ち味のひとつだとは思うんですけど、路線的にもっとポップなところを打ち出していくのかなと想像してて。
麗「……っていうのを裏切りたかったのもありますね。もともと昔から、こういうテイストの曲のほうが多かったので」
――もともとは暗い曲ばかり作っていたというお話でしたね。
麗「高校生のときはそうだったので、“貴方の恋人になりたい”がバズりました、それっぽい曲をまたリリースします、っていうのはちょっと……昔の自分を裏切りたくないなって。注目されてる今だからこそ、チョーキューメイの真髄っぽい曲を打ち出せたら、かっこいいんじゃないかと思って」
空閑「それに、シンプルにメンバー全員が好きな曲だったっていうのもあって、満場一致でした」
(“promise you”は)麗らしい、めちゃくちゃヤバい曲だなって。聴いてるうちから自分がどこに入るべきか、みんながどうくるか、しっかりビジョンが湧いた(空閑)
――この曲は、2023年6月にサバシスターのなちさんと一緒にやられた弾き語りライブで初披露されたという。
麗「その頃、初めて引っ越しをして――生きるのっていろいろ大変じゃないですか。自立の壁にぶちあたり、他にもつらいことが重なって、ダークな気持ちになってる自分がいて。そういう自分の気持ちをまとめた曲を作りたいなと、その弾き語りライブ前日の深夜に思い立って、そこから急いで作って発表しました」
――そのライブにメンバー皆さんで足を運んだそうですけど、印象としてはどうでした?
空閑「麗らしい、めちゃくちゃヤバい曲ができたなって思いました。聴いてるうちから自分がどこに入るべきか、みんながどうくるか、しっかりビジョンが湧くような曲でしたね」
れんぴ「ずっと鳥肌が立ってて、この曲は俺が楽しむために作られた曲なんじゃないかってぐらい大好きだと思いました。これは早く弾かないと気が済まないぞ、みたいな(笑)」
藤井「僕も、いつかバンドでやるのかなと思いながら、その場ですぐにベースラインを考えてました」
――実際、この曲のアレンジってすごく難しそうだと思ったんです。
空閑「でも、弾き語りからほぼイジってなくて」
――えっ、そうなんですか!? こういうメロディだからこのフレーズをっていうより、曲全体が生命体みたいだから、どう仕上げたんだろう、って。
空閑「それが麗の……」
麗「魅力という(笑)」
空閑「自分で締めたね(笑)」
――(笑)。構成も変わってない?
空閑「変わってないです」
麗「弾き語りで作った時点で頭の中でこれはこうだ、って全部できあがってて。あとはそれをメンバーに伝えるのみでした」
空閑「細かいすり合わせぐらいでしたね」
――まず、ド頭のギターのアルペジオからいいですよね。
空閑「弾き語りの時点でああなってたけど、麗はアルペジオに自信がなくて、れんぴに一緒に弾こう、みたいなことも言ってて」
れんぴ「でも、『一緒に弾くのは絶対に違うからひとりで弾いてください』って言いました。あれはギターひとりだからかっこいいし、ピアノが邪魔しちゃいけないって」
麗の曲作りは、まず固定概念のないアイデアがポンッて出てきて、それを形にする過程で計算が入ってくる感じ(れんぴ)
――ギターのブラッシングからグッと踏み込むところだったり、間奏でのベースとピアノのフィーチャーの仕方も緊迫感があっていいし、《君の鼓動が代わりに叫ぶ》のあとのドラムも印象的です。
麗「ビートが変わるところですよね」
空閑「それこそ『鼓動みたいにバスドラを踏め』って麗に言われて。リズムがキープされてるところにバスドラといういちばん大事な楽器を動かそうなんて、何を言ってるんだ?って最初は思ったんですけど(笑)、実際にやってみたら歌詞とのリンクが完璧すぎました」
麗「ここに関しては歌詞を優先したかったのもあって、そこにふわさしい伴奏を、と。心臓の音をあとから入れるのでもよかったんですけど、だったら一発入魂のバスドラのほうがいいだろうって」
――麗さんのそういう表現は計算なんですか? それとも感性で?
れんぴ「固定概念のないアイデアがポンッて出てきて、それを形にする過程で計算が入ってくる感じ」
麗「それは言えるかも」
空閑「転調とかもそんな感じだよね?」
れんぴ「そうそう。転調もその先の展開が用意されてるんじゃなくて、まず『転調をしたい』っていうアイデアが出てくるんです。でも、そのアイデアがいい味を出してて、それがなきゃ今の形にならない曲がたくさんあるんです」
――歌声も場面によって表情が全然違いますよね。感覚的に歌われてるのか、出したいニュアンスによって発声を工夫してるのかで言うと?
麗「半々ですね。やっぱり歌詞に沿った歌い方をしたいので、“promise you”で言うと、Aメロとかは優しく、『ひとりじゃないよ』みたいな感じでいきたいんですけど、ブレイクのあとは力強く、嵐に負けないみたいなイメージをしてたり。サビの裏声はあえてやってて。高い声は地声でも出るタイプなんですけど、表現としてフワッとさせたいっていうのが根本にあったから」
――それが自由な表現に繋がってるんでしょうね。リミットを決めてないし。
空閑「音域に関してもそうですしね」
麗「《君の鼓動が代わりに叫ぶ/“まだ生きていたい”と》っていう歌詞も本当に叫ぶほうがかっこいいし、ドラマティックかなと思って。自分自身が魂から叫んで歌わないと相手に届かないって思うところがあるので、それは意識して歌いました」
――歌詞で《箱庭宇宙》や《摩天楼》みたいなファンタジーっぽい言葉選びをしてるのは、リアルにしすぎないようにというところがあるんでしょうか?
麗「そうですね。自分が感じた春先のつらさをリアルにしすぎず、ファンタジックに落とし込んで曲の雰囲気に合うようにするっていうのは考えました」
――あと、この曲を最初に聴いたとき、チョーキューメイが世間に見つかったタイミングだから生まれたのかな、ともちょっと想像してて。
麗「時系列的にはそうかもしれないです。“貴方の恋人になりたい”は2023年の4月からみんなに聴いてもらえるようになって、“promise you”は6月に誕生した曲なので。私はメンタルが強いほうだと思うんですけど、それでも“貴方の恋人になりたい”が他の曲に雰囲気が似てるとか、誰かと声が似てるとか書かれたりして、『自分ってなんだろう?』みたいに思ったこともありました。最初は『そうだよね〜』ぐらいでいけるんですよ、メンタルが強いと。でも弱ってるときって、『似てるのか……』ってなったりもして。そういうときに『私は私』って思いたいし、同じように弱っている人にも届いてほしいって思いますね」
演奏以外でもバンドのグルーヴが大事だと思ってて。2023年はいろんなライブを経て、よりグルーヴ感が出てきたし、チームワークがよくなったなと思ってる(麗)
――シングルにはTVアニメ『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。』のエンディングテーマとして配信されている“PRIDE”も収録されています。
麗「作品のファンからの評価が高くて嬉しかったですね。『この曲は何巻まで読んでいるはずだ。そうじゃなきゃ書けない』っていう書き込みがあって(笑)」
れんぴ「歌詞がもう……たまらないですよね」
――れんぴさんは「麗さんファン」ですね(笑)。
麗「高校生のときからそうですね(笑)」
れんぴ「そもそもバンドは自分のとこのボーカルがいちばん好きじゃないと楽しめないですしね」
――アニメの世界観ともリンクしてますし、そういったところがちゃんと届いたんでしょうね。ただ、曲展開としてはやっぱり普通じゃないし、キメも多く、らしい曲ではあります。
麗「転調がまた多いんですよね、この曲」
空閑「結果、そのバランスがいい感じにできあがりました。作ってるときはヒヤヒヤしてましたけど」
麗「私自身もアニメが好きでよく観ているので、そのアニメを愛している人たちに届いたら嬉しいと思っていて。自分もそういうふうに書ける人になりたいなと思っているので、作品重視で曲を作っていたけど、転調を外さないとかチョーキューメイらしさは残しつつ作りましたね」
空閑「歌詞の最後に《君と一筋の光を》ってあるんですけど、それはアニメに出てくる、主人公が転生する先のゲームのタイトルなんですよ。これを自然にスッと入れてるのが完璧で」
麗「ゲームタイトルを見た瞬間に『これは歌詞に入れたほうがいいな』と思ったんですけど、テレビ尺に入れるのはやりすぎだと思って。だからフル尺で聴いた人しかわからないように、最後の最後に入れました」
――振り幅のある2曲がひとつの作品に収録されてるのって、すっぴんとメイクアップというか、Tシャツ1枚の日もあればドレスを着る日もある、みたいな感じがしました。
麗「私自身、そういうオン/オフの差が激しいって言われます……服装ですよ、気性じゃなくて(笑)」
一同「(笑)」
麗「自分の中でそういう性質は絶対に抜けなくて。頑張る日は頑張る。でも、素直にやる日は素直にっていう。そういうのも反映されてるかもしれないですね」
――リリースとしてはまだ先になるんでしょうけど、TVアニメ『ゆびさきと恋々』のエンディングテーマとして“snowspring”を書き下ろしました。可愛らしさに振り切ったラブソングですね。
麗「私は『ちゃお』とか少女マンガを読んで育ってきたので、少女マンガのタイアップのお話をいただけたことが、まずすごく嬉しくて。『ゆびさきと恋々』はX(旧Twitter)をきっかけに知って読んでいた作品でもあったので、縁があるなと感動したんです。でもこの可愛い曲にたどり着くまでは結構茨の道でしたね。最初に自分がイメージした楽曲の雰囲気と監督さんがイメージしていたものとちょっと違ったようで、そこのすり合わせに少し時間がかかりました。何曲か今とは違う感じの曲を作って、そのあともう1回作品を読んで『やっぱり、可愛いしか勝たんくない?』となって。あと、私が初めてDTMを触った曲なんですよ」
――これまで、デモは弾き語りで作られてましたよね。
麗「そうです。この曲は『優しい』っていうのが大きなテーマだったので、そういう感じでバンドで作ってたんですけど、この世界観を表現するのに、バンドサウンドだけではしっくりこないなと思って。やる気スイッチが入って急に(DAWソフトを)ポチッて、頑張って1コーラスまで打ち込んでみんなに聴かせたら、『最高にフェアリーで可愛い』って言ってもらえたんです」
れんぴ「バッチリだったね」
――新たなバランス感覚で生まれた曲ということで、この次にどんな曲がくるのかまったく予想がつかないです。
麗「予想されたくない自分もいて。常に変化を楽しんでいきたいと思ってますね」
――2024年2月からは「銀河、離れ離れにならないで」ツアーも始まりますね。
麗「ライブをするのはもちろん楽しいし、各地でお客さんが増えてきてるのもモチベーションに繋がるし。何より、移動してる時間が好きなので。私、結構おしゃべりなんですけど、みんな寝てるとき以外は付き合ってくれるし、6時間の車移動とかも余裕です」
空閑「何回か言ってるけど、ボーカリストって普通は喉のために喋んないんだけどね(笑)」
一同「(笑)」
――でも、麗さんらしいと思います(笑)。
麗「演奏するとき以外にもバンドのグルーヴが大事だと思ってて。無理に喋んなくてもいいけど、一緒にいればだんだんと感覚も合ってくると信じてるので。2023年は各地を回ったりとか、いろんなライブを経て、よりグルーヴ感が出てきたし、チームワークがよくなったなと思ってます」
“promise you”MV
“PRIDE”MV
“貴方の恋人になりたい”MV
●リリース情報
New Single『promise you』
【CD】 発売中 (神宮前レコード)
初回限定盤(CD+DVD) POCE-92157 / ¥4,400(税込)
通常盤(CD) POCE-12201 / ¥1,100 (税込)
【配信】配信中
TVアニメ『ゆびさきと恋々』のエンディング・テーマに書き下ろしの新曲“snowspring”が決定!
(RELEASEについては、近日発表予定)
●公演情報
【ワンマンライブ】
「超新星は教えてくれる」
(SOLD OUT)日程 2023年12月24日(日)
開場 16:30 / 開演 17:00
会場 東京・渋谷WWW
問い合わせ HOT STUFF PROMOTION
Tel:050-5211-6077(平日12:00〜18:00)
●ツアー情報
「超新星は教えてくれる」追加公演
「銀河、離れ離れにならないで」ツアー
2024年2月3日(土)OPEN 17:30 / START 18:00【愛知】 名古屋ell.SIZE(ワンマン)
問)サンデーフォークプロモーション TEL:052-320-9100(毎日12:00〜16:00)
2024年2月4日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
【大阪】 心斎橋Live House Pangea(ワンマン)
問)GREENS TEL:06-6882-1224(平日12:00〜18:00)
2024年2月17日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
【宮城】 仙台MACANA(※ゲストバンド:神聖かまってちゃん)
問)GIP (平日10:00〜18:30)
2024年3月1日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
【東京】 渋谷Spotify O-crest(ワンマン)
問)HOT STUFF PROMOTION TEL:050-5211-6077(平日12:00〜18:00)
▶TICKET:
料金/席種 前売り:4,000円(当日券:4,500円)<税込・D代別途必要> / スタンディング【整理番号付】*3歳以上チケット必要
提供:ユニバーサル ミュージック アーティスツ
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部