【インタビュー】1stアルバム『charme』は、liaが10代最後に刻んだ鮮やかな「暴動」──shallmが多彩なバンドサウンドで描き出すポジティブな未来図に迫る

【インタビュー】1stアルバム『charme』は、liaが10代最後に刻んだ鮮やかな「暴動」──shallmが多彩なバンドサウンドで描き出すポジティブな未来図に迫る

自分の性格から言えば暗いというか捻くれてる曲が好きで。最近出している曲もどこか少し男らしいというか。“暴動”も、かっこいい曲を作りたいと思って書いた曲でした

──私の中ではたとえば“センチメンタル☆ラッキーガール”のイメージやアーティスト写真のニュアンスから、liaさんにはキュートでファンタジックな雰囲気を感じ取っていたんですが、そのイメージのままこのアルバムを聴き臨むと、結構痛い目に合うぞと思いました。

え、嬉しいです。裏切りですね(笑)。

──そうそう、甘く見てるといい意味で裏切られる(笑)。

たとえばタイアップ作品は、自分としてもすごく作品に寄り添って作るし。私はヒャダインさんの曲がすごく好きで、めちゃくちゃ楽しくなる楽曲も好きなんですけど、自分の性格から言えば暗いというか捻くれてる曲が好きで。最近出している曲もどこか少し男らしいというか、どちらの自分もいるんですよね。“暴動”も、かっこいい曲を作りたいと思って書いた曲でした。

──“閃光バード”も少しダークな世界観で。美しいサウンドでボーカルにも透明感があって耳心地は抜群なんだけど、そこで描かれてることはかなり内省的。自分自身のダークな部分も隠さず表現していくのがshallmで、ラブソングを書くにしてもどこかちょっと毒がありますよね。

私自身があまりラブソングを聴かないんですけど、でもラブソングを作りたいと思うときがあって(笑)。そしたら捻くれたラブソングになっちゃったという。

──“ハイドレンジアブルー”だったり“ヘミニス”もそうですよね。ストレートに「好き」とか「寂しい」とかの感情が表れているような楽曲にはあまり食指が動かないっていうことですか?

はい。どっちかと言うと強気なほうが好きだし、かっこいいなって思っちゃう。でもストレートなラブソングがかっこよくないって思ってるわけじゃなくて、今はそっちのほうが好きっていうだけですけどね。


──2024年は6ヶ月連続でどんどん楽曲をリリースしていったわけですが、そこで多彩な音楽性を見せてくれました。“花便り”などはまさに新機軸でしたよね。大きな愛を歌ったバラード曲で。

珍しいですよね。3月のライブのときに新曲を作ろうと思って、何か背中を押せるような曲にしたいなと思ったんです。親の愛って海よりも深く山よりも高いって言うけれど、そういう愛を描きたいなと思いました。親に限らず、誰にもそういう拠り所があるんだよっていうような歌にしたいと思って作った曲です。

──この曲自体が聴く人の心の拠り所になるようなイメージもあります。

まず背中を押せる曲を作ろうというのがあって。それで、背中を押される瞬間ってどういうときなんだろうって考えたら、愛を感じる瞬間というか、誰かのために頑張ろうと思える瞬間だなって思って。なので、これを聴いた人が「あの人のために頑張ろう」と思えたらいいなと思いながら作りました。


──そして“if 1/2”は、これもまた珍しくliaさん自身の気持ちがかなり素直に表れてる楽曲でしたよね。

これは「選ばなかったほうの未来」を想像して作った曲でした。自分は「あんなこと言わなきゃよかったな」とか、「あのときああしていたらよかったかな」みたいなことをよく考えてしまうタイプなんですけど、そういう後悔があるから今の自分があると割り切るために作りましたね。今でもたまに後ろを向きたくなるときもあるので、この曲を歌っていると結構感情移入しやすくて。


──それにしても、liaさんの歌はメロディにのったときの言葉が気持ちいいんですよね。ボカロルーツだけあって、メロディアスでアップダウンの激しい曲が多いのもshallmの魅力のひとつで。その起伏に富んだメロに言葉をあてて紡いでいくのはなかなか大変だろうなと思いつつ、liaさんはそれを楽しんでいる感じがします。

そこがいちばん楽しいですね(笑)。もし(作曲過程を)隣人に聞かれてたとしたら、変人が住んでるんじゃないかって思われるぐらい、ひとりで「ちがーう!」とか言いながら変な日本語で歌っては「この響きいいな」って。それを歌詞にしていく作業がすごく楽しくて、大好きです。

──“G2G”もまさにそんな曲ですよね。さりげなく韻を踏んで、メロディにのる言葉の情報量も多くて、ボカロの歌唱の面白さとバンドサウンドのドライブ感を併せ持つ楽曲だなと。

ありがとうございます。まさにあの曲も、最初は何を言ってるかわからない感じで歌いながら言葉を探していきました。


生の音ってその人の魂を感じるような気がするんです。パワーをもらえる音だと思っていて。自分がバンドの音が好きなのは、そこが理由かなって思います

──そして“脳内ディストーション”がアルバムの1曲目。これを1曲目にしたのはどんな理由からですか?

私としては予想外だったんですけど、ライブで演ったときにめちゃくちゃみんな反応してくれて。この曲は怒ったときに作った曲だからエネルギーがあるんだなあと。なので火付け役として、1曲目にいてもらおうと。

──苛立ちとか怒りのエモーションをパワーに変えていきながら、liaさんの作詞はただ怒りをぶつけるだけでなく、ちゃんと俯瞰してその先を考えて書かれている歌が多い気がするんですよね。

たとえば理不尽なことがあって、それを曲にしたいと思って書いている間に冷めちゃうこともあるんです。一旦冷静に考えるとなんか馬鹿馬鹿しいよねって思ってしまって。ほんとに衝動で書くとすごいことになっちゃうと思うんですけど(笑)。


──言葉選びが鋭いんですよね。先行リリースの“stardust”でもそれは具現化されてると思います。作詞の言葉選びが冴えていて、《工作の笑顔で唄うエクスタシー》ってところなんか、なかなかすごいラインだなと思って。

これもライブでいつもセットリストに入れてる曲で、歌っていて楽しい曲なんですけど、ライブに来てくれてる皆さんの中には「この曲、毎回やってるのに配信されてないな」と思っていた人もいたみたいで、「配信する」って言ったらすごく喜んでくれて。嬉しかったです。


──バンドサウンドが軸になるshallmだから、ライブ活動はとても重要なものだと思うんですが、今後どんな活動を展開していきたいですか?

音源では伝わりきらない細かい瞬間や感動があるから、私はライブが好きだなあっていつも思っています。変な言い方ですけど、もっと男臭いバンドになりたいんですよね。ライブでもっとお客さんを煽ってみたい(笑)。でも気が弱いので……頑張っていきたいです。こんな私でもお客さんを煽れるのかなあ(笑)。

──JAPAN JAMなど、大きいステージに立ったときはどうでしたか?

私、友達と初めて行ったフェスがJAPAN JAMだったんですよ。だからあのステージに立ったときはほんとに楽しかったです。マジでまた出たい。出られるように頑張ります(笑)。

【インタビュー】1stアルバム『charme』は、liaが10代最後に刻んだ鮮やかな「暴動」──shallmが多彩なバンドサウンドで描き出すポジティブな未来図に迫る

──大きいステージが似合いそうな曲がこのアルバムにも何曲かありますしね。『charme』には、shallmがバンドサウンドで表現したいことが詰め込まれています。最後にあらためて、liaさんが今なぜバンドサウンドを求めているのか、その理由を自身で分析してもらってもいいですか?

なんだろう。生の音って原点というか、その人の魂を感じるような気がするんです。パワーをもらえる音だと思っていて。自分がバンドの音が好きなのは、そこが理由かなって思います。

──では今後、shallmをどんなプロジェクトにしていきたいですか?

えっと……やっぱり海賊王になりたいです(笑)。

──やっぱり最終的にはそこなんですね(笑)。海賊王になって成し遂げたいことは?

天下を取る。あはは、やば(笑)。

──いいですね! 仲間を集めて。

はい。ひとつずつステージに立って、クリアしていきたいです。

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