【インタビュー】Sunny Girlの音がどこか懐かしく、同時にフレッシュな理由──ライブシーンで頭角を現す3人組と本音で語り合う

【インタビュー】Sunny Girlの音がどこか懐かしく、同時にフレッシュな理由──ライブシーンで頭角を現す3人組と本音で語り合う
「中途半端で負けず嫌い」。本インタビュー内で、フロントマンにして作詞作曲も担う橘高連太郎(G・Vo)は自らをそう評している。一見、相反する要素のようにも思えるが、Sunny Girlの奏でる音を聴き、本テキストを読み進めていけば、なんとなく腑に落ちてくるのではないだろうか。「中途半端」であることでひとつのジャンルやカルチャーに拘泥することを回避し、「負けず嫌い」であるため既に誰かが確立したスタイルやフィールドへ無闇に乗り込んでいくこともない。そのうえで、ルーツにある青春パンクやメロディックパンクへの憧憬に関しては衒いなく真っ向から歌い鳴らすことで、どこか懐かしくも特定の界隈に偏ることのないSunny Girlの音楽は誕生し、独自の道が切り拓かれているのだ。
初登場となる今回は、結成の経緯やそれぞれのルーツといった土台の部分を掘り下げながら、最新アルバム『いつか歌き終える日が来ても』の制作風景とそこで感じたあれこれを通して、3人の思考回路と胸中に迫っていく。

インタビュー=風間大洋 撮影=るなこさかい


自分の歌が好きじゃないので、バンドをやろうという感覚よりも裏方をやりたかった(橘高)

──まずは遡っての話になりますが、どういう始まり方をしたバンドなんですか。

橘高 僕とベースの小野が裏方の専門学校で一緒になって、ローディーをやってたんですよ。始めは趣味みたいな形でバンドをやろうと思って。僕はもともとボーカルじゃなかったですし、こいつ(小野)に関してはドラマーでした。で、今ホームにしてる高田馬場CLUB PHASEの店長さんに出会ったんですけど、ライブのあとに「まあ、また機会がありましたら」みたいに冷たくあしらわれて。それが悔しくて本気でバンドやろうと思ってからは僕がボーカルになって、ドラムがベースになって、ドラムを入れて。

──そもそもローディーをやろうと思ったのは音楽が好きだったからですよね?

橘高 好きだったんですけど、小学~中学くらいに「東北ライブハウス大作戦」のビデオを観た時、裏方の人が音を作ったりするのが、僕にはなんなら表方よりもかっこいいと思えたんですよ。今もなんですけど、僕は自分の歌が好きじゃないので、バンドをやろうという感覚よりも裏方をやりたかったんですよね。だからよく逆って言われます。バンドをやってから裏方に行く人はいるんですけど。裏方の夢破れてバンドやってて(笑)。

小野 僕は音楽関係のマネージャーとかをやりたいと思ってたんですけど、目指していくうちにバンドを知って、バンドの裏方の仕事にはローディーというものがあると。それがいちばん楽しそうで、いちばん支えてあげられる仕事なのかなと思って目指すようになりました。ただ、ローディーをしながらバンドを見ていく中で、僕はもしかしたら裏方よりバンドのほうが面白いのかなっていうふうになっちゃって。

──興味本位で訊くんですけど、ローディーの勉強ってどんなことするんですか?

橘高 最初の授業で「これがギターでこれがベースです」って言われたんですよ。「ミスった!」って思いましたね(笑)。

小野 ギターやベースの歴史から始まって、8の字巻きを延々とやらされたり。

橘高 音の良し悪しとかって好みなので、どちらかと言うと弦の巻き方とかそういうのばっかりで、めちゃくちゃつまんなかった(笑)。ただ、その時に現場にいっぱい連れて行ってもらったのはめちゃくちゃ活きてる気がするし、Sunny Girlの動かし方もそこから学んだことが多い気がします。「ROCK IN JAPAN」とかもローディーで行ったりしたんですけど、そこに出てるクラスの人たちは全バンドがちゃんとかっこよくて、それがキラキラして見えちゃったから今バンドをやってるのかなとも思います。羨ましくならざるを得ないというか。

──裏方気質が覆っちゃったと。で、バンドの歩みで言うと大森さんが2022年に加入して。

大森 はい。自分はバンドを観るのが好きでよくライブハウスに行ってたんですけど、そこのブッキングの方からSunny Girlにドラムがいないからやってみる?って言われて。サポートから始めた形です。

──元々バンドはやっていて?

大森 やってなかったです。好きで聴いていて、いつかやれたらいいなとはずっと思ってたけど、ひたすらドラム練習してただけで(笑)。コロナ禍とかもあって自分でいろいろと動き出してみようかなというタイミングでSunny Girlと出会ったので、本当に助かりました。

橘高 バンドをやったことなかったので、まず「こういうものだよ」って洗脳してました(笑)。1発目か2回目くらいから遠征に連れて行って。

大森 大阪、高知とかかな。

橘高 多分、世間一般のバンドと比べてもライブがめちゃくちゃ多いほうだと思うんですけど、「全バンドこうだから」「打ち上げ4時までやるから」みたいな。

大森 はははは!

──最近は少数派になりつつあるスタイルなのに(笑)。

橘高 そうですよね(笑)。やったことがないゆえのスポンジみたいなのが、楽しかったです。

大森 僕もそれで全然楽しかったですね。初めての打ち上げは驚愕しましたけど(笑)。

──ちなみにそれぞれの音楽的な好みみたいなところで言うと?

橘高 僕は最初がTHE BLUE HEARTSで、そこから銀杏BOYZだったり、中学生の頃はKen Yokoyamaとかそっちにいきましたね。メロコアとか青春パンクと呼ばれるものを一番聴いていたから、そこがSunny Girlの楽曲の芯になっている部分だと思います。

小野 僕は親の影響で最初は嵐でしたね。で、中学3年生の時にたまたま友達がカラオケでONE OK ROCKを歌っていて、めちゃくちゃカッコいい!ってなって。色々教えてもらって聴いていく中で、僕も銀杏BOYZとかそっちの方に傾倒していったので連太郎と話が合ったという。

大森 僕はWANIMACrossfaithをずっと聴いていて、形態は違うんですけど、自分に合うバンドのカッコよさはその2バンドに詰まっている気がずっとしていて。そこからHIP HOPとかにも色々と広がっていったので、自分の原点という感じですね。

橘高 最初の最初は、Hi-STANDARDのコピバンみたいな感じから始まったんですけど、そこから青春パンク……かな、あれは?

小野 うーん。難しいけど、まあそうかな。青々しい感じというか。

橘高 痛々しい、かもしれないけど(笑)。

【インタビュー】Sunny Girlの音がどこか懐かしく、同時にフレッシュな理由──ライブシーンで頭角を現す3人組と本音で語り合う

聴く人が自分を投影して感情移入しやすいから、ライブで泣いてくれるお客さんがいたりするんだろうな(小野)

──最初にメロコアから入った場合、音楽的に広範囲を攻めるよりもひとつのことを突き詰めていくパターンも有り得たはずで、実際そういうバンドも多いジャンルじゃないですか。でもそっちのルートには行かなかったわけですよね。

橘高 全部そうなんですけど……僕、その一本でやっている人には勝てないと思っちゃうんで。僕は中途半端なんで、いろんなことをやりたくなっちゃうんですよ。僕の同世代にも日本語メロコアをずっとやっている奴もいれば、ずっとバラードをやってる奴、ずっと韻を踏んでる奴もいるけど、そこには勝てないし、一緒のことをやっても面白くないから避けてる感じはあります。人がやってないことをやりたいわけでもなくて、やってるからいいやというか、それぐらいの。たまたま勝てないからこうなったような感覚ですかね。

──新しい何かを見つけてやるというモチベーションでもない?

橘高 そうですね。新しいことをやりたいとか言ってる人って、そんなに新しくないことをやっているイメージもあって。だから新しいことをやりたいわけではなくて、勝てないことはやりたくないという感覚がいちばん近いかもしれない。すごく負けず嫌いなので、勝つための結果として他がやってないことに辿り着くことはあるかもしれないですけど。周りから「Sunny Girlってこうだよね」って言われることでやっと、そうやって見られてるんだって思えたりもして。

──「Sunny Girlってこうだよね」っていう周りからの評価はたとえばどんなものがありますか。

橘高 「どこが良かったと言われたらわからない。でも今日かっこよかった」とか言われることが多くて。その日しかできないことをやりたいと僕は思っているので、それはすごく嬉しいです。「◯◯に似てる」とか言われなくなったことも良いなと思いますね。

──そういう橘高さんの意識から生まれてくる楽曲を、ふたりはどう感じてます?

小野 聴く人が自分を投影して感情移入しやすいから、ライブで泣いてくれるお客さんがいたりするんだろうなって。バックグラウンドがわかりやすいというか、持ってきてくれた歌詞を見ても「こういう背景なんだろうな」って感じ取れるところが僕は好きですね。

大森 サポートしてた頃から思うんですけど、ライブとかをやっていても「ついて行こう」という気持ちになれるんですよ。そこの良さ、強みはすごく感じます。

──歌詞の舞台になるのは恋愛模様が多いじゃないですか。それは自然とそうなっていくんですか。

橘高 自然とそうなるものが多いです。恋愛の曲以外はほとんど100%自分の感覚で、目の前のことを書いてるものが多いんですけど、恋愛の曲に関しては100%過去の経験から書けるほどドラマティックな恋愛をしてきたわけでもないので(笑)、フィクションとノンフィクションが半々になっているものが多くて。物語みたいな感覚でも書けるし、自分の過去の出来事からも書けるから書いていて楽しいんですよ。今「Sunny Girlは恋愛の曲がいい」って言われてるのも、やっぱり中途半端だからかなって思っていて。ライブで歌う時も読み手になる場合もあれば当事者になる場合もあって、やってみないとどっちの感覚になるかがわからない。それもまた面白いというか、やっぱり半々くらいがいいバランスなんじゃないかなという気がしてます。

──なるほど。サウンド面についてはどういう意識で書くことが多いですか。

橘高 メロディとかは歌謡曲をルーツにしている場合がとても多いです。キャッチーですごくわかりやすくて、一回で覚えられるものが素敵だと思っているので、難しいものやテクニカルなものが好まれる今の時代に合っていないのは重々承知なんですけど、そんなに難しいものは覚えられないし弾けないので(笑)。わかりやすいメロディで、でもどこか儚くて疾走感があって、みたいな感覚ですかね。韻をばーっと踏んだり転調を何回もしたりとか、そういうのもやってみたことはあるんですけどできない。合ってなかったですね。

──入りがメロディックパンクだったことが薫る曲もいまだにありますよね。

橘高 そうですね。2ビートの曲も今回のアルバムでは何曲かありますし、そこのルーツはなくしきらないようにはしてます。

──アレンジを固めていくうえで、どのくらいの割合でメンバーに委ねているんですか?

橘高 メロディと大体の歌詞を弾き語ったものをスタジオに持って行って、ふたりにああだこうだ言ってもらいながら骨組みを作って。それを家に持って帰って各々が作っていく形が多いです、最近は。

──わりと昔ながらの。最近は作り込んだデモを各自が再現するやり方も多い中で。

橘高 それ、周りでもめっちゃ多いですけど、すごいなと思うんですよね。ドラムとか僕がやるとマジで全部同じになるんで(笑)。打ち込みのデモも作りますけど、ドラムに関してはできないんですよね。

大森 だからニュアンスを伝えてもらって、それに対して「これはどう?」って何回もやりとりしながら打ち込んでます。僕はもともと打ち込みとかDTMが好きだったので、ちょうどコロナ禍の時期くらいに勉強もしてました。

小野 ベースも、弾き語りの音源に一旦自分のベースラインをつけてから、連太郎と擦り合わせて作ることが多いですね。

橘高 僕がイメージを伝えるのが下手すぎて、ふたりとも「違う」っていうことはわかるけど正解はわからない、みたいなことがめちゃくちゃあるんですよ。

小野 あるね(笑)。最近は琉彦と俺で一旦擦り合わせるようにしていて。

大森 それを最終的に連太郎に持って行って、「違う」ってなったらじゃあもう一回やろう、っていう。

橘高 赤ペン先生みたいな(笑)。

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