【特集】First Love is Never Returnedの放つ至福のグルーヴに世間が気づき始めた! ポップシーンを更新するラブネバのDIY精神、その歴史をひもとく

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First Love is Never Returnedは昨年5月、avexと新レーベル「HEiLO RECORDS」を立ち上げ、その第1弾作品となるミニアルバム『POP OUT! Ⅲ』をリリースした。以来、インディーズ時代からの自由な音楽性はそのままに、サウンドのポップネスと、フロントマンKazuki Ishida(Vo・G・Key)の豊かな歌声は広く世に知られることとなった。そのレーベル設立から1年。今改めて、First Love is Never Returnedというバンドの面白さ、その音楽の魅力についてひもといてみたいと思う。

札幌を拠点に活動を続けていたラブネバは、2018年に結成。それ以前に、Kazuki Ishidaはニューヨークに武者修行的なボーカル留学をし、そこでの経験が彼をさらにバンド活動へと駆り立てた。帰国後に札幌で出会ったYuji Sato(B)と前身バンドを結成、活動を始めた。「初恋のような、音楽に出会った初期衝動を忘れない」という思いを込め、バンド名をFirst Love is Never Returnedとしたのが2018年。その活動の中で、対バン相手として出会ったのが、Keita Kotakemori(G・Key・Cho)とMizuki Tsunemoto(Dr)だった。Kotakemoriはそのバンドでギター&ボーカルを務めるフロントマンだった。だが、バンド解散を機に、Kotakemoriは自身がボーカルをとる道ではなく、ギタリストとしてラブネバに加入する道を選ぶ(Mizukiの加入はもう少しあとになる)。このエピソードからも、KotakemoriがIshidaのボーカルに大きな可能性を感じていたことが窺える。R&Bやソウルのグルーヴを生み出すIshidaのボーカルに、Kotakemoriのオルタナティブなロックのアプローチが融合したラブネバは、ユニークな札幌の音楽シーンにおいても独特な存在感を放つバンドとなっていったのだ。

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その後、コロナ禍で実質的な活動休止期間もあったが、2022年には、Mizukiもラブネバに加入。ようやくバンドが本格的に動き出し、初のミニアルバム『POP OUT!』の制作に入った、まさにその年。Kotakemoriがジストニアと診断され、リードギターとしてピックを使用しての演奏が困難となってしまった。そこで、旧知の仲でもあったArata Yamamoto(G・Cho)が加入。Kotakemoriはキーボード&指弾きのアコギ担当へとコンバート。こうして5人編成の現体制ができあがった。Arataは、現在もArataというバンドのギター&ボーカルとして活動している。つまり、ラブネバは潜在的にフロントマン気質のメンバーが3人も在籍する稀有なバンドだと言える。そんな多様な個性に対応し、バンドサウンドの魅力をブーストさせるのがYujiとMizukiという鉄壁のリズム隊であることも、ラブネバを語るうえで重要なポイントである。

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こうしてざっと駆け足で説明するだけでも、このバンドが現在に至るまでにさまざまな困難を乗り越えてきたことが伝わるはずだ。そもそもIshidaとYujiのふたり体制の頃から、決して順風満帆とは言えず、ただただメンバー同士の信頼関係があればこそ続いてきた道のりであったし、Kotakemoriのジストニア発症は言わばバンド存続の危機でもあったはず。その悲劇を乗り越えたことを、彼ら自身が物語として情感たっぷりに語ることもできただろう。時にそうした物語はキャッチーで、人の目に留まりやすいものとなる。けれど、彼らが過去を語るとき、その口調に悲劇的な重苦しさはまるでない。

初めてインタビューをしたときも、こうして5人が集結することは必然だったかのような口ぶりで(特にKotakemoriのどこか超然とした佇まいに)内心かなり驚いたことを覚えている。でもその出来事の数々も、これが必然だったと思えるほどに、この5人体制でのFirst Love is Never Returnedは唯一無二のバンドとなっていく。IshidaとYujiで始まった、ソウルやゴスペル、R&Bのルーツを根底に感じさせるユニットが、Kotakemoriの加入によってソリッドでヘヴィなロックバンドのニュアンスも感じさせるバンドとなり、Mizukiのドラムがさらにしなやかかつ強靭なバンドサウンドに説得力を与える。そしてそのソウル、ポップ、ロックの隙間を有機的につなぐように、Arataのギタープレイがラブネバのグルーヴをまとめあげていく。これはまさにこの5人だからこその、必然のDIYサウンドなのだ。

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この必然にして奇跡的な5人の音楽を誰にも邪魔されたくない、ピュアに自分たちがやりたい音楽を追求していきたいと彼ら自身が思うのは、これまた当然のことだろう。そんな中、 “バックミラー”という曲を耳にしたのをきっかけに、ラブネバの音楽性と可能性とに惚れ込んだのがavexのA&Rディレクター氏だ。幾度も彼らのライブに足を運び、その本気をメンバーに伝えた。しかしもともとDIY精神にあふれたバンドのこと。メジャーレーベルとタッグを組むことには当初かなり懐疑的だったという。

それでも折れないディレクター氏と何度もの話し合いを経て、avexと共に「HEiLO RECORDS」設立へと、彼らの歴史は動いていく。そして冒頭でも触れた、昨年のミニアルバム『POP OUT! Ⅲ』の完成。このミニアルバムは、ラブネバの豊かな音楽性とIshidaの中毒性の高い歌声に、広く世間が出会うきっかけとなった。特にアルバムラストに収録された“挿入歌”などはIshidaの綴る歌詞、そしてグッドメロディがJ-POPシーンにまで浸透していくきっかけとなった。彼ら独自の音楽が、多くの人の人生の「挿入歌」になり得ることを証明した一曲だったと思う。


その後、昨年8月にリリースした“微炭酸”のスマッシュヒットも記憶に新しい。ホーンサウンドをフィーチャーした爽やかなバンドサウンドは、ラブネバの新機軸にして、サマーソングの新定番とも言うべき普遍性を宿した。今年の夏も再ヒットの予感すらある。その爽やかなポップさの裏には緻密に編まれたアンサンブルやさりげない転調が入っていて、ラブネバらしいこだわりも楽しい。この曲はライブでも期待以上のアッパーなグルーヴを感じさせてくれた。


リリースするごとに違った音楽性で楽しませてくれるラブネバだが、今年2月の配信シングル“最近変わりない?”はArataが作詞・作曲を担当した楽曲だった。ループミュージックを基盤にしたダンスチューンに思わず体が揺れる。ラブネバのメインソングライターはIshidaだが、KotakemoriとArataのソングライティングもそれぞれ違ったアプローチでラブネバの楽曲に多様性をもたらす。三者三様のソングライターを擁するのも、ラブネバの強みだろう。

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そして最新曲はテレビ朝日の朝の情報番組『グッド!モーニング』のテーマソングとして書き下ろされた“Good Morning”。同番組のテーマ曲は歴代ビッグネームのアーティストが担当してきたことでも知られるが、ここにラブネバが抜擢されたことも、今彼らの音楽に大きな期待が寄せられ、注目されていることの証左だ。この“Good Morning”はIshidaの作詞・作曲。ラブネバらしい柔らかなR&Bサウンドが日本語のポップソングとしてあたたかく、そして深く響いてくる曲である。そしてこの楽曲には、ラブネバのバンドとしての強みやその歴史までもが随所に感じられるような気がする。


Ishidaのボーカルは朝の日差しのような穏やかさを感じさせつつも、日常の憂いや後悔も隠さず表現する。人生にはさまざまなことが起こる。でも必ず次の朝が訪れて、傷や痛みを抱えながらも何もなかったように「おはよう」と言う。決して絶望だけではない。そして希望だけでもないこの日常感。等しく朝を迎える人々に向けての、これもまた「人生の挿入歌」であり、ラブネバが歩んできた(歩んでいく)歴史とも重なるような気がしてしまう。そう思うと、まずイントロで鳴り響くKotakemoriのピアノにも、痛みの先の希望のような、リアルな「光」を感じるのだ。

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Ishidaの歌声に重なるArataのコーラスもラブネバの魅力のひとつだ。Arataもまた、自身が率いるバンドのリードボーカリスト。その確かな歌唱力がIshidaの歌声に寄り添うとき、ラブネバならではのハーモニーが生まれる。これは強い。そして決して多くない手数で楽曲をベストな重力感で支えるYujiとMizukiのリズムはまさに最適解。バンドの信頼関係の揺るぎなさのようなものさえ感じられるアンサンブルがここにある。番組テーマ曲としての“Good Morning”のオンエアは、彼らの揺るぎないDIY精神がオーバーグラウンドのど真ん中で高らかに表現された瞬間でもあった。

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First Love is Never Returnedはこの4月から5月にかけて、対バン形式のツーマンツアーを終えたばかり。そして次は7月24日、いよいよワンマンでのSHIBUYA CLUB QUATTRO公演が控えている。新たな作品のリリースも含め、この先のラブネバのさらなる進撃に期待が高まる。(杉浦美恵)

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