Ishidaの声は空気を多く含んだ透明感のある歌声で、放たれるたびに夜の月が浮かぶ澄みきった水面が会場全体に広がっているような、幻想的で不思議な感覚を覚えた。演奏は圧倒的なスキルに支えられており、「夜」をテーマにしたコンセプチュアルなセットリストは、1曲目の最初の音が鳴った瞬間から観客をラブネバの世界へと引き込んでいった。
そして、この日彼らが繰り返し伝えていたのは「僕たちFirst Love is Never Returnedと観客は同じ存在である」ということ。メンバーは昼は社会人として働き、夜に予定を合わせて楽曲制作やリハーサルを行っている。だからこそ、働く人々の大変さも、週末がどれほど特別でワクワクするものであるかも知っているのだ。実際、最後のMCでIshidaは「会社の携帯にメールが来ていたけれど、同僚が対応してくれて助かった」と笑い交じりに語り、会場を和ませていた。
ラブネバは派手な非日常を演出するバンドではない。むしろ、日常の延長線上にある小さな光や喜びを歌い続けてくれる存在だ。ライブでも「今やりたいこと」「今届けたい歌」を、等身大で自然体のまま響かせてくれる。その姿に自然と心を奪われる最高のFRIDAY NIGHTだった。(伊五澤紗花)