── “愛のプラネット”はdawgssをフィーチャリングしていますが、昨年はdawgssの“ランデヴー”にShotaさんがフィーチャリングで参加したという経緯がありましたね。「言ったほうがいいのに言いづらい」みたいな空気が日本には結構あるけど、「世界平和のことを歌いたい」って自然に言える空気感って尊いと思った
dawgss(森光奏太)は、ワンマンのバンドメンバーにベースで入ってもらったり、公私ともによく会っている仲間なんですよ。普段から友達と自然に音楽をやる感覚は大事にしている部分でもあって、今回もラフに「奏ちゃん家でセッションする?」って感じでした。で、僕はずっと、音楽をやる、影響力がある表現者だからこそ言わなくてはいけないことがあると考えていて、その中でやはり世界平和について、何かできることが絶対にあるはずだと思っていて。“愛のプラネット”はその一歩を踏み出せた曲だと思います。
──そのテーマに森光さんも共感して、フィーチャリングが実現したんですね。
めっちゃいいねって言ってくれました。友達との会話の中で気づきを得ることって、僕らに限らずリスナーのみなさんにもあることだと思うんです。友達と会話していて戦争の話題が出て、何かに気づかされたりとか。今回、鍵盤のHiromuも制作に入っている現場で「こういう歌が歌いたいんだよね」と言えた空気感がとてもよくて。「言ったほうがいいのに言いづらい」みたいな空気が日本には結構あるけど、「世界平和のことを歌いたい」って自然に言える空気感って尊いと思ったんです。それをただ漠然と歌うのではなく、世田谷の景色、日常の風景から始まってその思いに至るという、ごく普遍的な気づきを歌った曲になりました。普遍的だけどAile The Shotaとしてしか歌えない曲でもあるという、理想的なバランスで作れましたね。
──テーマとしてはすごく大きなものですが、世界平和を願うのはごく当たり前のことなんだということが、この曲のリリックから感じ取れます。
表現者であり代弁者でもあり影響力を持てる立場にある身としては、等身大で歌うからこそ、みんなにも等身大でちゃんと考えてほしいなって思いますよね。いい影響を世界にもたらしたい。ポップでありながらもそういう存在であるということは自覚していたいです。
──そして今作にはDREAMS COME TRUEの“空を読む”のカバーが収録されていますが、その選曲を含め、Shotaさんのドリカムへの愛とリスペクトを強く感じました。
大好きな曲です。自分のルーツだし、その音楽への感謝も含めて、カバーをするなら絶対にドリカムを一発目にやりたいって言っていたんです。“何度でも”には、まさに僕は何回も救われてきたけど、ドリカムを好きないちベイビーズ(ドリカムファンの呼称)として今何を歌いたいかを考えた時、この“空を読む”の歌詞が、Aile The Shotaがその言葉を借りて歌える曲としてすごくしっくりきて。でもいざレコーディングで歌うとめっちゃ緊張しました。公認いただいているということは、おふたりにも届くだろうし、ドリカムベイビーズのみなさんにももちろん届くだろうし。中村正人さんは「好きにアレンジしていいよ」って言ってくれたんですけど、このカバーではあえてコーラスを積まずに、自分のボーカル1本で歌うことにしました。
──それはなぜですか?
コーラスワークは僕の音楽の武器でもあるんです。フィーチャリングで入るときも必ず積んでいるので。なので、コーラスを積まずに完成させたのはこれが初めての曲だったんですけど、歌の原点ってやっぱりそこだと思ったんですよね。僕の音楽活動にしても、「歌というものにちゃんと向き合いたい」と思ったのが夢の始まりだったりするので、(吉田)美和さんの言葉とマサさん(中村)の音楽を借りて歌うのならばストイックでありたかったんです。純粋に「Aile The Shotaが歌う」ということが「アレンジ」になるように。
──素晴らしいカバーだと思います。あと、“Foolish”についてもお聞きしたいです。この曲で吐露されるShotaさんの思いが、とてもストレートで赤裸々だと感じました。
これはもうめちゃくちゃリアルな僕の感情です。僕個人は考えすぎ、気にしすぎな性格なんですけど、高校の時にめっちゃ楽天的でアホな友達がいて「あいつみたいになれたらめっちゃラクだな」って思った記憶があって。本人にもそう言ってたんですけど(笑)。自分とは違うキャラクターへの憧れ、太陽みたいな存在への憧れを歌った曲です。これを作った前日に大学時代の友達と飲んでいたのもあって、すごく自然体で書けた歌詞でしたね。これはリアルだけど、ポップソングとして共感性の高いものにしようとか狙って書いたものではなく、僕の中にある大衆的な部分を美しく書けた曲だと思うので、めっちゃ気に入ってます。ある意味『REAL POP』を象徴している曲です。
──《全てさらけ出して愛されたらマジでありがたい》とか、すごく本質的ですよね。
日本人独特のネガティブな感性が、この曲の中には結構込められていると思っていて。「恥じらい」の感覚とか──「踊る」っていうことに関してもそうですけど。そういう感覚は俺もわかるから、「でも、こうやって克服しているよ」っていうのを伝えたら、みんなもそうなれるんじゃないかなあって考えたりもして。だからもう、めちゃめちゃ「まんま」なんですよ(笑)。特に冒頭2行なんか恥ずかしいくらいに。本当にこういう人間なんで。
──そして、このアルバムのラストに前作EP『omen』に収録した“NEBULA”をあらためて置くということは、やはりこの曲に込められている決意はShotaさんの中で非常に大きいんだろうなと感じました。BE:FIRSTの“Grow Up”という曲の「変わらないために変わっていく」というテーマに触れて、僕は心がラクになった
『omen』を作っていたのが、自分の中でポップの矢印があるべき方向に向き始めたタイミングで、その矢印が向いた曲が“NEBULA”だったんですよね。SKY-HIが書いたBE:FIRSTの“Grow Up”という曲の「変わらないために変わっていく」というテーマに触れて、僕は心がラクになった部分があって。僕もそれを言いたかったんですよ。この3年半、ものすごいスピードの中で自分を証明し続けてきた──その総集編というか、序章をまとめたものとして。「どこまでも表現者で、どこまでも人間である」ということを歌う、自分の核となるこの曲をアルバムに残しておきたいと思いました。“Grow Up”はすごく救われた曲だし、今胸を張ってBE:FIRSTへのサンプリングもできるタイミングだと、この前の自分のワンマンライブの映像を観て確信しました。 “NEBULA”は今の自分にとって欠かせない曲です。
──VLOTさんのトラックは本質的で先鋭的で、それをAile The Shotaの歌としてポップシーンに突き刺すという、これは確信的な曲ですよね。
それこそ“J-POPSTAR”とかもアルバムに入れたかったんですけどね。でも、“J-POPSTAR”はもう盤になって形あるものとして残っているけど、“NEBULA”は盤になっていなかったから。ゆくゆくはベストアルバムを作る予定ではいるので、どちらもそこに欠かせない曲ではあります。
──ベスト盤がイメージできるぐらいのストーリーがすでにShotaさんの中でできつつあるということですね。
そうですね。いろいろなことを考えながら動いています。アルバムとは別軸で、ダンスシーンへのアプローチもクルーを抱えてやっているところだし、さらに別軸としてヒップホップやR&Bのアンダーグラウンドシーンへのアプローチも今考えているところです。それらを来年以降、どうやって動かしていこうかなと考えています。
──ポップシーンにアプローチするのとは違った切り口で、ヒップホップシーン、R&Bシーンにも切り込んでいきたいということですね。
絶賛画策中です。Aile The Shotaはポップに突き進んでいくんですけど、リアルも忘れたくないので。あと、ダンスクルーのオーガナイズとは別軸で、さらに僕が作ったボーイズグループとかも面白そうだなとか思い始めてしまったり(笑)。今、プロデューサーとしての勉強をしている途中でもあります。
──それに加えてBMSG POSSEの活動もありますし。
あ、そうだ。忘れてた(笑)。でもPOSSEはそれぞれに第一線で活躍するメンバーがたまに集まって、そこまで頑張ればいいだけなので。会って一緒にやると楽しいな、くらいの感覚です。それぞれが好き勝手やって、でもシーンへのリスペクトを持っているクルーでいるならば何も不安はないです。BMSG POSSEってあの5人のことではなく、BMSG全体のことだと僕は思っているので。
──来年3月には東京ガーデンシアターでのワンマンも決まっていますが、ダンスクルーも含めて、どんなライブになるのか楽しみです。
腹を括って、やれることは全部やろうと思っています。音楽性には自信があるので音楽ファーストの軸を大切にしつつ、その中でやれることを全部やりたいです。エモーショナルな部分はあとからついてくると思うので。
──もちろん「踊る」「踊らせる」ということは強く意識したものになるとして。
いちばんのテーマはそこにあります。まずいい音楽があって、引き寄せ的に生まれてくるエモーションがあって、そこで自由に踊ってもらえたら嬉しいです。一発目のアリーナなので、Aile The Shotaここにありというのを見せられるよう、頑張りたいです。