──『But wait. Cats?』は新しくこの4人でスタートした[Alexandros]が、この4人でしか鳴らせないものをちゃんと鳴らせたアルバムでしたけど、そのうえで、ある種無邪気に、それまでの歴史も背負い込んでぶっ放したというのが今回のシングルのかっこいいところだと思うんです。明らかに次のステップに行った感じがある。何言ってもいいよねっていうのがファーストアルバム。でももう9枚目ってときに、嘘はついちゃいけないし、隠してもいけないってところも必ず出てくるから、そういったところも落とし込みたかった(川上)
川上 まあ、ずっと思っていることではあるんで。たまたま今回うまくいったというのはありますけどね。だからいい曲できたなとは思います。
──4人で鳴らすメカニズムや曲作りのプロセスでの変化は感じます?
川上 変わったというよりは、『But wait. Cats?』のときはなかった「引っ張り出す感」があったかもしれない。『But wait. Cats?』は本当に出たときに「いいじゃん、OK、曲にしよう」って感じだったんですけど、今回は「もっとあるんじゃない?」っていうのをどんどんやっていった気がする。一発で出ても次の日に聴いたらあんまりよくないなっていうことがあったりするし、何回か寝かせて確かめることを怠らなかった。ワンナイトラブじゃ──。
──ま、その良さもあるけど(笑)。
川上 その良さもあるけど、やっぱり次の日「おはよう」って言える女の子かどうかって大事じゃないですか(笑)。
リアド ははははは!
──それが最初に言っていた「丁寧」ってことだと思うんですけど、そうあるべきじゃないですか。
川上 そうあるべきだと思います。ちゃんとお付き合いするべき。
──そういう状況を意識的に作っていったということですよね。
川上 そう。だから、アルバムから次に行くまでに結構時間があったので。それまでの良さも残しつつ、ここが足りないなとか、ここに何か欲しいなとか、そういうことを考えられたんです。時間をかける大事さというか。なんでファーストアルバムがみんないいかっていうと──。
──それまでの人生の集大成ですからね。
川上 そうなんですよ。そこからセカンドアルバムって1年とか2年しかないから、それはやっぱりちょっとパワー落ちるよねっていう。何言ってもいいよねっていうところがファーストアルバムだから。そこはそれでしかない。でももう9枚目ってときに、嘘はついちゃいけないし、隠してもいけないなってところも必ず出てくるから、そういったところも落とし込みたかった。これ、意味通ってます?
リアド 通ってる、通ってる。
──わかります。実際、このシングル3部作の曲たちも閉じているわけじゃなくて、ちゃんとタイアップをしているわけじゃないですか。今回の“金字塔”も『プライベートバンカー』というドラマに寄り添って書かれたものではあるわけで、そこのいいバランスを見つけられてるんじゃないですか?
川上 そのバランスはうまくなったと思います。「うまくなった」って言い方がもうすでにうまくないのかもしれないけど(笑)。昔から僕はタイアップをめっちゃ意識するほうではないから。やっぱり意識しすぎると単純によくないから、そうではなく、吸収したうえで自分なりの解釈で出していくのが僕は正解だと思っていて。だからオーダーに沿ってやるのも素敵なんですけど、超えるほうがむしろ誠実だと思ってるんです。そこは「いったん僕のやり方でやらせてください」って毎回言わせてもらってるんです。だからみなさんあんまりオーダーしてこないし、ありがたいことに今回の“金字塔”も好きに作れました。台本を読んだりはしましたけど、そのときに自分が書きたかったことの引き出しの中からこのドラマと合うものを引っ張り出してくる感じでしたね。
『3』でやっと掴んだ感じがする。3部作にして3作目がいい映画なんてあんまりないけど(笑)、これは自信を持って世に出せます(川上)
──“金字塔”の歌詞に《淡々単調な音を外れて/計算尽くのダンスを捨て》っていうフレーズがありますよね。
川上 ははは、皮肉ってます。
──このフレーズはすごくいいですよね。リズムを強調した曲とも合ってるし、今の[Alexandros]が立っている場所ともすごくフィットする言葉を見つけたなって感じがしたんですけど。
川上 《ダンス》と《単調》って頭韻を踏んでるんですけど、僕の中でダンスっていうのはひとつ間違えるとつまらないものになってしまうっていうところがあって。今の「踊れればいいよね」みたいなのがあるじゃないですか。踊りというかノリかな。サビになるとみんな賢い子のように手を挙げて振るっていう雰囲気にちょっと苦言を呈しているような歌詞でもあります。裏切ってナンボっていうところが踊りのテーマなんじゃないかなと僕は思っているんです。僕はダンスはできないんですけど、一切ものを使ってないじゃないですか。肉体だけで感じたものをやってるというか、本当に自分から出てくるものでしかないから。だから何が正解とかもないと思うんです。
リアド 菅原小春さんが言ってた。小さい子の踊りを見ると涙が出るって。正解がない中で自分の思うままに身体を動かしている姿を見ると涙が出るって話をしてた。
川上 ああ。だからそこをちょっと皮肉っている感じは出てきちゃいましたね。意識して書いたわけじゃないけど。
──この2行って、究極的に言うと「ロックとは何か」っていうことだと思うんですよね。ロックって、みんなで同じノリで手を振ることじゃないよねっていう。
川上 そうなんですよ。だからうちらってクリックがすごく嫌いなバンドで。
──だからよく「自由に踊れ」って言うんだけど、それを教えるのがロックバンドの役割だと思うんですよ。リズムが走ったりヨタったりしながら、それに昂って身体が動く踊るっていうのがロックの楽しさだと思うし、[Alexandros]はこのご時世で珍しくそれを体現しているわけですよ。
川上 それをよしとしているっていう。
──で、それをやるには、やっぱりバンドとしての肉体がちゃんと鍛え上げられてないといけない。それはうまいとかじゃなくて、バンドとして一個の生命体になってないといけないし、お互いの信頼関係とか阿吽の呼吸がちゃんとないといけない。[Alexandros]にとってリアドさんが入ってからの4年というのはまさにそれを作り上げるための期間だったんだなと思うんです。
川上 そうだと思います。ま、そうなるだろうなと思ってた。『But wait. Cats?』はそこに向かうためのゼロベースのアルバムになると思っていたから、次のアルバムはじっくり作りたいと思ってました。それを『3』でやっと掴んだ感じがする。「これでいいな」って思います。やっと答えが出た。3部作にして3作目がいい映画なんてあんまりないけど(笑)、これは自信を持って世に出せます。
[Alexandros]のインタビュー全文は現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』4月号に掲載!
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