GRAPEVINE×ハルカトミユキ@LIQUIDROOM ebisu

恵比寿移転オープン10周年を記念して、「ONE OK ROCK / Crossfaith」「KEMURI / 9mm Parabellum Bullet」「在日ファンク / 田我流」「The Birthday / LAUGHIN' NOSE」といった錚々たる対バン企画が行われているライヴハウス・LIQUIDROOMで、この日はGRAPEVINEとハルカトミユキの対バンが実現(双方のMCによれば、GRAPEVINEからハルカトミユキにオファーしたらしい)。まるでカラーの異なる音の中毒性が絶妙に相俟って、陶酔と戦慄と歓喜と覚醒が次々に押し寄せるような一夜となった。

<ハルカトミユキ>
GRAPEVINE×ハルカトミユキ@LIQUIDROOM ebisu
まずは先攻のオルタナ・フォーク・デュオ=ハルカトミユキ。ハルカ(Vo・G)&ミユキ(Key・Cho)に中畑大樹(Dr/syrup16g, VOLA & THE ORIENTAL MACHINE etc.)らサポート3名を加えた5人編成でオン・ステージすると、ハルカのヴォーカル+ミユキのピアノの麗しの響きにバンド・サウンドが加わって清冽なスロウ・ナンバー“middle”、さらにアグレッシヴなビート感とともに“バッドエンドの続きを”へ……と未発表曲を立て続けに披露。「ROCK IN JAPAN FES. 2014」出演時にも披露していた、より切実な訴求力に満ちた2人の「これから」を物語る楽曲が、LIQUIDROOMの空気を張りつめた緊迫感で埋め尽くしていく。アコギをかき鳴らすハルカの、ファルセットで歌い上げるメロディラインが、聴く者の琴線とをまさぐる“未成年”。ハルカとミユキの2人だけで歌い上げたインディ時代の楽曲“アパート”&未発表曲“ひとりごと”の静謐で真摯な響き。苦悩も葛藤もヴィヴィッドに焼き込んだ歌詞と、冷徹な美しさに満ちたメロディワークが、フロアの熱気と混ざり合って、静かなる高揚感を生み出していく。

GRAPEVINE×ハルカトミユキ@LIQUIDROOM ebisu
「GRAPEVINEさん、今日はお呼びいただいて本当に光栄です。ありがとうございます」と感謝を伝えるハルカに続けて、「最近行った『毒毒毒毒毒毒毒毒毒展(もうどく展)』という展示会で、どんな生き物が最強の毒を?と思ったら、地味な貝が1位で、しかも1時間くらいかけてじっくり呑み込む殺し方だった」とふわふわと語って場内を煙に巻くミユキ。だが、さらに「それを観てたら、気持ちよさそうだなと思って。気づかないうちに殺されるのって、すごくよくないですか? だから、このライヴは、私たちは、じわじわと攻めていこうと思っているので。よろしくお願いします!」と話をつなげて拍手喝采を呼び起こしてみせる。定番曲“ニュートンの林檎”に加え、最新ミニアルバム『そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。』から“その日がきたら”“青い夜更け”を盛り込みつつ、昨年のフルアルバム『シアノタイプ』収録曲が1曲もセットリストに入っていないのも、彼女たちの今のモードの表れなのかもしれない。「じわじわ感をもっと味わいたい人は、ぜひ秋のワンマンライヴに遊びに来てください」(ミユキ)と、9月20日の初アコースティックワンマン開催をバインのファンにもしっかりアピールしていた。


<GRAPEVINE>
GRAPEVINE×ハルカトミユキ@LIQUIDROOM ebisu
田中和将(Vo・G)/西川弘剛(G)/亀井亨(Dr)の3人に金戸覚(B)&高野勲(Key)という鉄壁のサポート・メンバーを加えたラインナップで、後攻のステージに臨んだGRAPEVINE。「今年、ビクターに移籍しまして。目下、新しいものを一生懸命、作ろうとしておる途中でございます。でも、今日は新曲はやりません! 『小出しスタート』ももうちょっと後でございます。ので、今日は既存の曲で……まあ『既存』ゆうても、君らそんな知らんやろうけど!(笑)」と名調子でフロアをどっと沸かせていた田中。“1977”“なしくずしの愛”といった最新アルバム『愚かな者の語ること』(2013年)の楽曲、“FLY”“光について”“風待ち”といったシングル曲群はもちろん、『イデアの水槽』(2003年)から“豚の皿”“ミスフライハイ”“アンチ・ハレルヤ”を盛り込んでみせるなど、一筋縄ではいかないセットリストでこの日のアクトに臨んでいた彼ら。“FLY”の爽快なスケール感も、“lamb”のミステリアスなリフも、ポップ感とメランコリアがきらめく“光について”のアンサンブルも、「円熟」の域に収まらないほどに練り上げられた包容力と力強さに満ちているし、ブルースもセンチメントもロックンロールも鮮烈に体現していく田中の歌声も、ますますその純度と強度を増していることがわかる。

GRAPEVINE×ハルカトミユキ@LIQUIDROOM ebisu
「ハルカトミユキ、よかったですね。あー、困りました……どうやって潰そうか(笑)」とブラックジョークを飛ばしたり、「初めて聴いた時は『ハルカ トミユキ』かと思ったんですけど。スガ シカオみたいな」「『タナカトミユキ』の写真を撮っといたんで、後でUPするんでチェックしといてください」と次々と笑いを取りつつ、サポートの金戸覚&高野勲を「サトルトイサオ」と紹介してみせるなど絶好調のMCと、“豚の皿”でレディオヘッドばりに繰り広げてみせた音の精緻さ&ダイナミズムとのコントラストも心地好い。後半は“リトル・ガール・トリートメント”“(All the young)Yellow”“ミスフライハイ”と00年代前半曲を畳み掛けながら、力任せの音圧や爆走BPMではなく歌とメロディとアンサンブルの織り成す恍惚感でもってオーディエンスを多幸感の彼方へと導くGRAPEVINEの真髄を色鮮やかに展開してみせる5人。“超える”の雄大なサウンドスケープを生み出して本編終了、アンコールでは亀井のドラム・ソロから“羽根”“アンチ・ハレルヤ”を経て名曲“スロウ”で大団円! 片やデビュー17年目の雄、片やデビュー2年目の新鋭――世代を越えて2つの才気が目映い輝きを放った、珠玉の一夜だった。(高橋智樹)


■セットリスト

<ハルカトミユキ>
01.middle(未発表曲)
02.バッドエンドの続きを(未発表曲)
03.未成年
04.アパート
05.ひとりごと(未発表曲)
06.その日がきたら
07.ニュートンの林檎
08.青い夜更け

<GRAPEVINE>
01.FLY
02.lamb
03.光について
04.1977
05.風待ち
06.豚の皿
07.なしくずしの愛
08.リトル・ガール・トリートメント
09.(All the young)Yellow
10.ミスフライハイ
11.超える

(encore)
12.羽根
13.アンチ・ハレルヤ
14.スロウ
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