2014年3月からシリーズごとに繰り広げられて来た、忘れらんねえよの対バン企画「ツレ伝」。昨年10月からは「ツレ伝ツアーファイナル ~そして伝説へ~」が開催され、年明けに名古屋で大森靖子、大阪で神聖かまってちゃんを迎えると、辿り着いた東京でのファイナルは漫才コンビ・キングコングがツレ、というステージだ。これまでのツレ伝ツアーを振り返ってみても、音楽アーティスト/グループではなくお笑いグループがツレとして登場するのは初めてのこと。そこには数年越しの、赤坂ブリッツという会場も引っ括めた熱いドラマがあったわけだが、その辺りも含めてレポートしたい。
まず、オープニング・アクトとして元気よく飛び出して来たのは、なかもちさん(ギター)とマシモ(ドラム)、おさげ髪のキュートな2人による高円寺発のロック・デュオ=変人変態女子二人(略して「へんにょ」)である。「パン・ツー!」の掛け声でマシモがドッタンバッタンとビートを刻み、なかもちさんがパンキッシュなギターを搔き鳴らしながら、どこに行っても混雑する新宿の女子トイレの悲哀をメロディアスなハーモニーで歌ってゆく。“忘れらんねえよ”のサビメロを拝借しつつ、なかもちさんが初めて出来た彼氏と下校するときの心境を昂りながら「語る」ロック芸を経て、“ガムのうた”や“ハタチ”といった、動画が公開されているナンバーも楽しそうに披露してゆく。思い切りの良いコンビネーションに詩情を乗せて運ぶ、大観衆にも物怖じしない堂々のステージであった。
さて、これまでのツレたちによる名曲がSEとして流れていた場内が再び暗転すると、大歓声を巻き起こしてキングコングの2人が登場だ。「対バンやるんで漫才やってくれ、って言われましてね(西野亮廣)」「何の曲からやりましょうか?(梶原雄太)」という初っ端の掛け合い、そして数年前に忘れらんねえよ・柴田隆浩(Vo・G)と西野の自宅で飲んでいると、明け方、丁寧な置き手紙を残した柴田が二度寝していた、という話で完璧なツカミを見せてくれる。キンコンのハイスピード漫才はそれだけで強いテンポ感に満ちているのだけれど、梶原が「音楽のライヴだから」と意気込み、押韻にオチを含ませる2人の華麗なラップ自己紹介やら、“森のくまさん”の輪唱を難しい方に間違えまくるという音楽ネタも絡めて沸かせる。終盤には、『鶴の恩返し』の謎に切り込むネタに自虐と大きなアクションを散りばめ、嵐のように吹き荒れる笑いのステージを繰り広げてくれた。
転換後、スクリーンに浮かび上がっていた「ツレ伝ツアーファイナル ~そして伝説へ~」のタイトルが「ツレ伝 NO OWARI」(SEKAI NO OWARI『EARTH』のアートワーク・ロゴを模したデザイン)へと切り替わって笑いを巻き起こすと、“RPG”をSEにピエロ面+赤ヘアピースの柴田が「後ろから失礼しまーす!」とフロア後方から入場。ステージに到達すると、「セカオ輪のみんなに言わなければならないことがあります! 僕、DJ LOVEじゃありませーん!」とピエロ面を剥ぎ取る。そしてライヴに復帰した梅津拓也(B)を祝福するべく、「梅津くん!」「おかえり!!」のコール&レスポンスから“僕らチェンジザワールド”へと傾れ込むという、忘れらんねえよライヴの幕開けだ。音が鳴り出すと同時に全身の穴という穴から感情と体液が漏れ出してしまうような、この手応えは忘れらんねえよでしかあり得ない。
突き飛ばすような高速ビートを打ち鳴らす酒田耕慈(Dr)のプレイに焚き付けられ、“戦う時はひとりだ”に“CからはじまるABC”と前傾姿勢のままひた走る。「ハァ、ハァ、あらためましてこんばんは、でんぱ組.incです!」(この後、柴田はKis-My-Ft2やTOKIOも名乗っていた)とボケながらも、このガムシャラで前のめりな3ピースの音像が、演奏の正確さ云々を越えたレヴェルで忘れらんねえよの存在感を強くアピールしてしまう。久々だったという“ドストエフスキーを読んだと嘘をついた”に続く“中年かまってちゃん”の中で、柴田はわざわざ「下手だけど!」と前置きしてギター・ソロに持ち込んでいた。彼の歌のヴォルテージと、ただひたむきさを伝える3人の演奏が、昂ったまま突入するギター・ソロの熱量を更に増加させるという感じだ。音楽は、ロックンロールは奥が深い。
「やっと復帰できましたよ! 立って演奏するのが、3人で演奏するのがこんなに楽しいなんて思いませんでした!」と上気し、喜びを露にするのは梅津である。フラワーカンパニーズ“真冬の盆踊り”のコールから“この高鳴りをなんと呼ぶ”へと繋ぎ、またもや曲また曲、とステージを続けてゆくのだけれども、一曲一曲に込められたエモーションの大きさと濃さは揺らぐことがない。“体内ラブ~大腸と小腸の恋~”のディスコ・グルーヴに踊っていると、この曲の終盤にスペシャル・ゲストとして招かれるのは、2/4リリースの最新シングル『ばかもののすべて』で共同プロデューサーを務めたおとぎ話・有馬和樹。4人でその“ばかもののすべて”や、焦燥感に塗りつぶされる“今夜いますぐに”といった新作曲群を届けてくる。ヴォルテージ最優先で、テンポも緩急してしまう忘れらんねえよの厄介なコンビネーションにしっかりと食らいつき、深いギター音響やハーモニー・ヴォーカルを添えてゆく有馬がまた凄い。
“そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか”の詩情が駆け抜けると、柴田はかつて、キングコングによる赤坂ブリッツの(当時はツアー形式で行っていた)ライヴでデビュー前の忘れらんねえよの楽曲が使用され、自宅録りの“僕らチェンジザワールド”デモがずっと爆音でプレイされていたこと、電話で西野から感謝の言葉を受け取ったことなどを語りつつ、「(忘れらんねえよが)いつか赤坂ブリッツでライブできるようになったら、出てくれますかって言って。それが今日ですよ! そこにいるのが皆さんっていうのが、いいじゃないですか!」と告げていた。“この街には君がいない”、“僕らパンクロックで生きていくんだ”といったナンバーで爆走を再開し、“バンドワゴン”で歌われる《高速道路のその先に/でかいステージがある》というフレーズは、ツアー・ファイナルという意味以上に、大きな達成感を赤坂ブリッツに刻み付けるようだった。
「ツレ伝、友達できましたよ。でも一組だけ、やりたくても出来なかったアーティストがいたんです〜! チャットモンチー〜〜!!」と嘆き、同日出演だったCOUNTDOWN JAPAN 14/15では、好きすぎて挨拶するタイミングを見失った(関係者と談笑する橋本絵莉子を見かけて楽屋に引き返してしまったらしい)ことも語りながら、激情まみれの“シャングリラ”を1コーラスだけカヴァー。“北極星”では場内を暗転させてから最終コーラスの沸騰を誘い、“ばかばっか”ではキンコン・西野も招いてフロアに降り立ち、左右に別れたオーディエンスの先頭に立って“Choo Choo TRAIN”のダンスを踊ったりと、あの手この手で狂騒に加熱してくれる。「ツレ伝が終わるねえ。俺の人生の大部分をねえ、ツレ伝の対バンが決まらないっていう悩みが支配して(笑)」「もっともっと面白いこと、していきたいと思います!」と宣言し、“バンドやろうぜ”で本編を締め括るのだった。
アンコールでは、再び有馬を加えた編成で、ニュー・シングルの「1曲多い通常盤」に収録される“ここじゃないけどいまなんだ”が披露される。柴田は「暗い曲」と言っていたが、まるでヴェルヴェット・アンダーグラウンドの“Sunday Morning”と“I’m Waiting for the Man”と“Sister Ray”が一緒くたに襲いくるような、オルタナティヴな騒音美を描き出すカッコいいナンバーだった。そこに西野も招かれ、彼が好きだという“僕らチェンジザワールド”が5ピース/西野のリード・ヴォーカルでプレイされるというスペシャルな一幕へ。最初は声を張り上げて歌っていた西野だったけれど、マイクをフロアに向けたり、遂にはユーモラスなダンスを踊り出したりしてしまう。そして3人で“夜間飛行”も届けると、西野、有馬、変人変態女子二人と共に、多くのツレのサインが入ったバックドロップも広げて大団円の記念撮影だ。スクリーンに“ばかもののすべて”のMVが映し出され、3時間を越える大ヴォリュームのステージは幕を閉じた。(小池宏和)
■セットリスト
01.僕らチェンジザワールド
02.戦う時はひとりだ
03.CからはじまるABC
04.ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
05.中年かまってちゃん
06.この高鳴りをなんと呼ぶ
07.体内ラブ~大腸と小腸の恋~
08.ばかもののすべて
09.今夜いますぐに
10.タイトルコールを見ていた
11.そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
12.この街には君がいない
13.僕らパンクロックで生きていくんだ
14.バンドワゴン
15.シャングリラ
16.忘れらんねえよ
17.北極星
18.ばかばっか
19.バンドやろうぜ
(encore)
20.ここじゃないけどいまなんだ
21.僕らチェンジザワールド
22.夜間飛行