「伝えたいことはたくさんあるんですけども……必ず戻ってくるっていうことは間違いなく言えます。それまで待っていてくれたら嬉しいです。待っていてくれますか?」と呼びかける木下に応えて、惜しみない歓声と拍手が一面に湧き起こっていたし、続けて語った戸高の「いろんな人に『やめないでください』って言われたんですけど……大丈夫です、僕ちゃんと戻ってきますんで」という言葉にも、ほっとしたような笑いと安堵がフロアに広がっていた。1stアルバム『REQUIEM FOR INNOCENCE』(2002年)の“アイリス”、オルタナ・ポップ的な躍動感と軋みに満ちた“BLACK SUNSHINE”の後、「いろんなスタッフや、いろんなことが助けてくれて、この場に立ってるわけで。で、一番はお客さんですよ、やっぱり」「もう残り少ないですけど、魂こめて演奏しますので。みなさん、ついてきてください」という木下の言葉を挟んで、霹靂の如き威力と目映さで高らかなクラップを巻き起こした“MISS WORLD”からライヴは一気にクライマックスへ。美しき孤独が強靭な剛性とともに轟く“車輪の下”。ひときわ凄絶に響いた“UNDER MY SKIN”……どこを切っても決定的瞬間のような、スリリングな悦楽の時間。“FADE TO BLACK”の熱唱と爆音が会場を真っ白に染めて、本編終了。
アンコールではアコギを構えた木下が再びUCARY & THE VALENTINEを呼び入れて“Hate Songs”“フローズン ガール”を披露。ここで戸高が再び語る。「ART-SCHOOLでライヴしてる時だけは、自分の魂を解放することができるというか。本当に、このバンドには感謝してるんで。恩返しをしたいなと思ってます。僕にできるのはギター弾くことぐらいなんで、気合い入れて弾きます」――そんな想いをそのまま結晶させたような“スカーレット”のアグレッシヴなコード・ストロークがフロアを震わせ、“あと10秒で”では圧巻のクラップと熱狂を生み出して終了……かと思いきや、さらなるアンコールを求めて鳴り止まない手拍子に応えて三たび4人がステージへ登場。「いったん活動休止をするっていう選択をしたのは自分なんですけど。それは……自分で自分の人生を選びたかったっていうのが強くて」と木下。「自分は今、失敗しても誰かの責任にはできないし、本当に今、自分の人生を生きているんだと実感しております。結成15年目に差し掛かるんですけども、支えてくれた人たちすべてに感謝します。これからも、見守っていてください。ありがとうございます」と決然と語る木下の言葉が、切実に胸に迫る。
この日のラスト・ナンバーは、2ndアルバム『LOVE/HATE』(2003年)からの“しとやかな獣”。《光は、光は此処には降らないさ/裸足で、裸足のままでいい/裸足で歩きたいさ》……心の奥底の退廃感をも照射するハード・バラードが、珠玉のアクトの終わりを鮮やかに彩っていた。「結構な期間、休むと思うんで……待っててね」と本編MCでも木下は言っていたが、すべての演奏を終え、手を取り合って一礼する4人に降り注いだ熱い拍手と歓声は、ART-SCHOOLの「これから」への期待感そのものだった。(高橋智樹)
■セットリスト
01.BABY ACID BABY
02.real love / slow dawn
03.Promised Land
04.夜の子供たち
05.BOY MEETS GIRL
06.サッドマシーン
07.YOU (w/ UCARY & THE VALENTINE)
08.Water (w/ UCARY & THE VALENTINE)
09.乾いた花
10.DIVA
11.ロリータ キルズ ミー
12.Chicago, Pills, Memories
13.Poolside
14.LOST IN THE AIR
15.革命家は夢を観る (w/環ROY)
16.その指で
17.アイリス
18.BLACK SUNSHINE
19.MISS WORLD
20.車輪の下
21.UNDER MY SKIN
22.FADE TO BLACK
(Encore 1)
23.Hate Songs (w/ UCARY & THE VALENTINE)
24.フローズン ガール (w/ UCARY & THE VALENTINE)
25.スカーレット
26.あと10秒で
(Encore 2)
27.しとやかな獣