あいみょんが森山直太朗・秋山璃月・レキシと繰り広げたサプライズづくしの2デイズ! 対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part3・大阪編〜

あいみょんが森山直太朗・秋山璃月・レキシと繰り広げたサプライズづくしの2デイズ! 対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part3・大阪編〜 - photo by 永峰拓也(exc. 秋山璃月)photo by 永峰拓也(exc. 秋山璃月)
絶賛開催中の「AIMYON vs TOUR 2024 “ラブ・コール2”」。名古屋公演ではHY大塚 愛。福岡公演ではドミコyonigeと、それぞれに音楽性も関係性も多様なアーティストたちを迎え、素晴らしい対バンライブを繰り広げている。あいみょんの青春ともいえるアーティストと共鳴し合った名古屋公演、思い切りロックの衝動が発露した福岡公演に続く大阪ラウンド、フェスティバルホールでの2日間は、音楽が世代を超えて引き継がれていくものであること、そしてライブが素晴らしいエンターテインメントであることを強く実感させられるものとなった。期待以上のことが次々に起こり、そのサプライズに大いに心躍らされた大阪公演2デイズ。今回はその模様をレポートする。


●7.9 vs. 森山直太朗・秋山璃月

あいみょんが森山直太朗・秋山璃月・レキシと繰り広げたサプライズづくしの2デイズ! 対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part3・大阪編〜
今回の「ラブ・コール」ツアーの中で、唯一の弾き語り対バンライブが、この大阪公演初日。フェスティバルホールといえばクラシックのコンサートにも適する、音の良さに優れたホールである。この会場で弾き語りを堪能できるというのはなんとも贅沢。まずアコギのハードケースを自ら携えた森山直太朗が現れると大きな拍手が出迎えた。無言で客席の様子を眺め、そのままアカペラで歌い始めたのは“しまった生まれてきちまった”だ。指を鳴らし、足を踏み鳴らしながら、あたたかな抜けのよい歌声を響かせていく。口笛の音、鳥の囀りも交え、森山の歌世界が形成されていく。2曲目はギターを爪弾きながら歌い始める“レスター”。まだ明るかった客席が、まるで黄昏時から夜へと移行するようにごく自然に暮れていく照明演出も、シンプルながらとても美しかった。

あいみょんが森山直太朗・秋山璃月・レキシと繰り広げたサプライズづくしの2デイズ! 対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part3・大阪編〜
森山直太朗は、どんなシンガーソングライターよりもリアリスティックに「生」を歌う。この日歌った“ラクダのラッパ”では《生きているってハンパじゃねぇや》と厭世感一歩手前のやるせなさを響かせ、《戦争なんか止めさしゃいいのに》とため息のように口ずさむ。もう14年も前にリリースされた楽曲だが、色褪せるどころか、今この歌のテーマの普遍性は、より色濃く胸に沁みる。観客は物音ひとつ立てず、ギターの1音1音、歌声の微かな震えも逃さぬように、森山の演奏に聴き入る。そんな心地よい緊張感と対照的に、MCでは軽妙なトークで、あいみょんとの出会いから現在に至るまでの貴重な話もたっぷり聞かせてくれた。双方のファンにとって、この日の話はとても貴重だったのでは。出会いは6〜7年前の「TOKYO GUITAR JAMBOREE」。奇しくも弾き語りイベントで邂逅を果たしたという。その後も付かず離れずの関係だったというが、対バンするにあたり、「まずは飲もうぜ」と、共通の知人である朝倉真司(あいみょんのバンドのパーカッション、森山のバンドのドラム)と3人で、「都内某所で作戦会議」を開いたのだとか。話はおのずとふたりの音楽ルーツの話になり、そこであいみょんのルーツは父親の影響が色濃いことを森山は知ることとなる。「なるほど。あいみょんは食べ物(取り込んできた音楽)がいい」のだと感じたそう。だから「あいみょんが作るものは世代、時代を超えて、どこか土着的で、懐かしい感じがして、僕が聴いても引き込まれていく」のだと。そんな話の流れから、その日たまたま東京に出張に来ていたというあいみょんのお父さんも飲みの席に合流することになり、そこでの父娘の様子を「遠い親戚の叔父さんのような眼差し」で眺めていたという森山。その光景を思い浮かべるようにギターを弾き始めると、“papa”を歌い始め、あたたかな空気で会場を満たしていった。

“どこもかしこも駐車場”のあとのMCでは、この日の対バンの裏テーマを表すような内容が語られる。あいみょんが森山に「ラブ・コール」を送るだけでなく、秋山璃月も迎えての3マンにしたということの意味が浮き彫りになった。のちにあいみょんも語ったように、森山の曲を父親の影響で聴き始めたあいみょんは、そのシンガーソングライターの系譜を継ぐ者という自負をもって森山との対バンを決めただろう。そして秋山は、あいみょんからすれば、さらに次の世代ということになる。この世代を超えた共鳴を、多くの音楽ファンに見てほしいという思いが、この日の対バンには滲む。森山は今の秋山の姿に若かりし頃の自分の姿を重ねた。

あいみょんが森山直太朗・秋山璃月・レキシと繰り広げたサプライズづくしの2デイズ! 対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part3・大阪編〜
「自分が璃月くんと同じくらいの年齢の頃は、苦い思い出もあったりするのですが、辞めたいなと思ったことは一度もありませんでした」「でも苦悩みたいなものはいっちょまえにありまして。ただ不思議なもので、悩めば悩むほど曲ができるんです。悩んで悩んで、めんどくせえ、ああちくしょうという、その思いの向こうに、ずっとそこにあったんだよというような顔をして曲がある。いつだってその道標が自分を突き動かし、僕は歩み歩んで、今日ここにいます」と語ったあとの“金色の空”は格別だった。 そして「生で歌うこと以上のコミュニケーションはないと思っています」と言った森山の思いは、あいみょんのライブへの向き合い方にも重なる。ラストの“生きてることが辛いなら”はまさに、森山ならではの「生きる」ための歌だ。優しい歌声に癒しとも救いとも違う、不思議な力強さを感じさせて、風のようにステージを去っていった。


あいみょんが森山直太朗・秋山璃月・レキシと繰り広げたサプライズづくしの2デイズ! 対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part3・大阪編〜 - photo by 赤木雄一photo by 赤木雄一
続いて現れたのが秋山璃月。自分の奏でる音を確かめるようにギターを弾き、歌い出したのは“偏見”という曲。歌への衝動がそのまま表現されたような、力強い弾き語りだ。秋山は「まず、あいみょんさんが僕の曲をラジオでかけてくれて、それだけでも嬉しいのに、まさかこうしてライブに誘ってもらえるなんて」と、このステージに立てた喜びを素直に口にした。「しかも森山直太朗さんとあいみょんさんとの間に歌うなんて」と緊張した面持ち。しかしその歌と演奏は荒削りながらダイナミックさと繊細さを併せ持ち、初めて聴く人たちの耳もぐいぐい惹きつけていった。

あいみょんが森山直太朗・秋山璃月・レキシと繰り広げたサプライズづくしの2デイズ! 対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part3・大阪編〜 - photo by 赤木雄一photo by 赤木雄一
《美しく生きるには》と自らに問い続けるような“trueman”には、その歌世界にグッと心を掴まれた。森山直太朗の歌がそうであるように、秋山もまた「生」と「死」を見つめ、歌を綴るシンガーソングライターだと感じる。あいみょんの歌にも時折、深い死生観が宿るが、秋山の歌を聴くうちに、今日の3人のシンガーソングライターのシンパシー、その理由が理解できたような気がした。3人には、そこに描くもの、人間を見る眼差しに共通するものがある。

あいみょんが森山直太朗・秋山璃月・レキシと繰り広げたサプライズづくしの2デイズ! 対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part3・大阪編〜 - photo by 赤木雄一photo by 赤木雄一
躍動するロックンロールのリズムに観客の体が揺れる“勝手な彼女”、ギターがリズム楽器のように弾む“まわる”と、ライブが進むにつれオーディエンスは確実に秋山の演奏に魅了されていく。「物販で、今日演奏したすべての曲が弾き語りで入っているデモCDを持ってきているので、もしよかったら」という告知から、「200枚くらいしか持ってきてないんですけど、今買ったら、将来的にその……メルカリとかで(高値で売れるかも)」と笑いを誘うと、会場からは大阪らしく「買うでー!」の声がかかる。終演後、筆者もこのデモCDを買いに走ったが、すでに長蛇の列で焦った。おそらくこの日用意した200枚は完売したのではないだろうか。ラストに放った“原始時代”は、ギターの力強いストロークとエモーショナルな歌声に客席のハンドクラップもどんどん大きくなり、曲終わりには惜しみない賞賛の拍手が響き渡った。


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そしてトリのあいみょん。曲間のMCでは「直太朗さんと璃月くんの、めちゃくちゃかっこいいステージを観たあとやから普通に緊張してる。やばすぎる」と語っていたが、この日のあいみょんはいつにも増して客席とのコミュニケーションが親密な楽しいライブを繰り広げた。あいみょんの弾き語りでのライブは、2022年11月の阪神甲子園球場以来。今回の「ラブ・コール」では唯一の弾き語りライブということもあり、かなりレアなセットリストだったことも嬉しい驚きだった。まずイントロのギターアルペジオから、“ポプリの葉”が始まると、その歌声に瞬時に会場中が引き込まれる。続く“桜が降る夜は”では、淡いピンクのライトがあいみょんを照らして、ファルセットの歌声も強く伸びやかに響く。

「普段、あまりやらない」ものの、「弾き語りのときにはみなさんにやってもらう」という「一定のリズムでの手拍子」をお客さんにオーダーし、そのビートを味方につけての“満月の夜なら”はアカペラの歌い出しも見事。続いての “die die die”は、これまたレアな選曲。さらに、“ねむい”も初披露だったのだが、緊張したあいみょんが思わず「助けて、朝ちゃん……」と、ライブを観に来ている朝倉真司に向けてつぶやく一幕も(朝倉は“ねむい”のレコーディングにドラムとパーカッションで参加している)。この曲ではあいみょんはカズーを吹きながら、軽快な歌とアコギの音色で楽しませてくれた(途中、歌詞を飛ばして入り直すのもご愛嬌)。

あいみょんが森山直太朗・秋山璃月・レキシと繰り広げたサプライズづくしの2デイズ! 対バンツアー「ラブ・コール2」全公演レポート〜Part3・大阪編〜
この日はあいみょんの両親もライブを観に来ていたこともあってか、あいみょんは終始、この弾き語りの対バンが実現したことを誇らしげに語っていた。「直太朗さんに、あんなに話してもらえて父ちゃんも嬉しかったと思う。璃月くんは完全に私がファンやから。璃月くんも今日の対バンに出ることで、『親孝行できる』って言ってくれて、もうキュン、みたいな(笑)。璃月くんはうちの弟と同い年やねん」と、世代の違う3人による対バンが実現したことが心底嬉しそうだった。曲の合間に客席から届けられる「あいみょん、かわいい!」の声にも、「かわいい? 今、母ちゃんがニタニタしてると思います。ありがとう」と返したり、とてもアットホームな空気だった。

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そして、「弾き語りでこの曲をやるのも甲子園ぶり。でもあのときは(コロナ禍で)みんな声出せへんかったやろ? だから今日、弾き語りのライブで、みんなの日頃の鬱憤を晴らす歌声を聴きたい。叫ぶ準備できてる?」と言って始まったのはもちろん“貴方解剖純愛歌 〜死ね〜”。「弾き語りでこの声をもらうのは初めてかも」と、これまた貴重な瞬間だ。バンドサウンドにかき消されない分、シンガロングの声も強く会場に響いて、あいみょんも「いい《死ね。》が聴けたよね。ありがとう」と笑顔を見せる。そして「何度も話してるけど、私は路上ライブ出身なので、梅田の駅前で、この曲も何回も弾き語りで歌ってた。なんで誰も私を見てくれへんの? どうやったら私を見てくれるの? どうやったらCD出せるの?って思いながら、ほんと《死ね。》って思って(笑)。弾き語りのライブをすると当時のこととか思い出すし、やっぱりこれが私の原点だと思う。私にとっての原点である弾き語りのライブを、直太朗さんと璃月くんと一緒にやれて、ほんとに嬉しかった。ありがとうございました」と言って歌った“マリーゴールド”は純粋に胸に沁みた。

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これで終わりという雰囲気が漂う中、あいみょんは「私、普段アンコールやらへんでしょ?」と意味深な語りかけ。このフリに会場は大歓声。「直太朗さんから電話がかかってきたんですよ。何か一緒にやる?って」。そして呼び込まれた森山直太朗。ふたりが歌声を重ねたのは森山の楽曲“生きとし生ける物へ”。この曲こそ、あいみょんが小学生の頃に、お父さんにもらったCDに入っていた曲だという。いろいろなアーティストの曲を選んであいみょんに聴かせてくれたこと、そこに森山の楽曲があったことが、この日の共演につながったのだ。ふたりの素敵なハーモニーがこの日のライブを締め括った。大喝采の中、森山は「俺たちふたり、営業でやっていけるよ。イオンモールとかで」と笑顔を見せる。ラストは再び秋山も舞台に顔を出し3人で終演のご挨拶。気づけば3時間半にもわたる長丁場で、大充実の初日となった。

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