『スパイダーマン』が『アベンジャーズ/エンドゲーム』を超えた! 全米史上最高のオープニング興収を記録。『オデュッセイア』、20代新人監督のインディ・ホラー2作も大ヒット。Z世代が映画館を牽引する2026年

『スパイダーマン』が『アベンジャーズ/エンドゲーム』を超えた! 全米史上最高のオープニング興収を記録。『オデュッセイア』、20代新人監督のインディ・ホラー2作も大ヒット。Z世代が映画館を牽引する2026年

この週末に公開された『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』が、なんと、これまで『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)が保持していた記録を抜き、全米歴代最高のオープニング興収を記録した。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』のオープニング興収は3億5712万ドルで、これまで全米歴代1位だった。しかし今回、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』が3億6009万ドルを記録し、新たな歴代1位となった。当初は3億5500万ドルで、おそらく2位になるだろうと予想されていたのだが、日曜日の売り上げが予想を上回り、最終集計で見事に記録を塗り替えた。さらに、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の世界オープニング興収も驚異的な9億3209万ドルで、歴代2位。1位は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』の約12億ドルだ。現在の全米歴代オープニング興収トップ10は、以下の通り。1.『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(2026年)約3億6009万ドル2. 『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)約3億5712万ドル3. 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)約2億6014万ドル4. 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)約2億5770万ドル5. 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)約2億4797万ドル6. 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年)約2億2001万ドル7. 『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年)約2億1144万ドル8. 『ジュラシック・ワールド』(2015年)約2億881万ドル9. 『アベンジャーズ』(2012年)約2億744万ドル10. 『ブラックパンサー』(2018年)約2億200万ドルご覧のように、全米オープニング興収が3億ドルを超えた作品は、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』の2作しかない。それだけでも驚異的な記録だ。しかも今作は、トム・ホランド主演の『スパイダーマン』シリーズとしては4作目。通常ならシリーズを重ねるにつれて勢いが落ちても不思議ではないが、このシリーズは世界興収を伸ばし続けてきた。『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)の世界興収は約8億8000万ドル、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年)は約11億3000万ドル、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)は約19億1000万ドル。そして最新作は、公開初週末だけですでに約9億3200万ドルに達し、『ホームカミング』の最終興収を早くも上回っている。さらにホランドは、シリーズ5作目についても「候補には入っている」と語っている。これだけの記録を打ち立てた以上、シリーズがこのまま終わるとは考えにくい。『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』予告編


〈2026年は大作映画&超低予算ホラー映画の当たり年〉
――『スパイダーマン』とクリストファー・ノーラン監督『オデュッセイア』で記録達成
実はこの週末は、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』だけでなく、7月17日に公開されたクリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』も引き続き大ヒットを記録していた。
『スパイダーマン』が『アベンジャーズ/エンドゲーム』を超えた! 全米史上最高のオープニング興収を記録。『オデュッセイア』、20代新人監督のインディ・ホラー2作も大ヒット。Z世代が映画館を牽引する2026年

『オデュッセイア』は公開3週目の週末にも約5100万ドルを稼ぎ、8月3日時点の北米累計興収は約3億9557万ドル。この2作に牽引され、この週末の北米全体の劇場興収は約4億3000万ドルに達し、史上最高を記録した。つまり、「もう劇場に人は戻ってこないのではないか」という映画業界の悲観論を、この夏のヒット作が大きく揺さぶったことになる。もちろん、2026年の北米興収全体は、依然としてコロナ禍前の2019年を下回っている。そのため、映画館が完全復活したとまではまだ言えない。しかし、観客が観たいと思う作品と、劇場でなければ味わえない体験があれば、これほど多くの人が一斉に映画館へ向かうことは、はっきり証明されたと思う。――『オデュッセイア』をIMAX 70mmで観るという体験
『オデュッセイア』の大ヒットにはいくつもの理由があるが、なかでも大きかったのが、IMAX 70mmをはじめとするプレミアム上映だ。すでにご存じの方も多いと思うが、『オデュッセイア』は、長編劇場映画として史上初めて全編がIMAXフィルムカメラで撮影された作品だ。公式サイトでも、「すべてのフレームをIMAXフィルムカメラで撮影した」と紹介されている。ノーランは、とにかくIMAX上映と、映画館で作品を体験することにこだわり続けてきた監督だ。今でも忘れられないのは、『ダークナイト』(2008年)の公開時、ノーラン自身が、ニューヨーク最大級のIMAXスクリーンがあるAMCリンカーン・スクエアにやって来て、IMAXカメラで撮影した冒頭部分を誇らしげに紹介したことだ。その時、なぜそれほどIMAXにこだわるのかについて、彼は、子供の頃に自然史博物館の巨大スクリーンで観た映像の衝撃が忘れられないからだ、と説明していた。それから18年。ついに作品の全編をIMAXフィルムカメラで撮影したのだ。ノーランの前作『オッペンハイマー』もIMAX上映のチケットが争奪戦となった。そのため今回は、公開の約1年前にIMAX上映のチケットが一部発売されたのだが、それも即完売。公開が近づき、全米で再び前売りが始まった際も、人気の回はたちまち売り切れた。私もその時点でチケットを取ろうとしたのだが、購入できたのは公開から約1カ月後の回だった。もちろん、IMAX 70mmで上映される劇場の、個人的に最も観やすいと思う席を予約した。『オデュッセイア』の公開初週末には、北米興収の約24%をIMAX上映が占めた。IMAX以外も含むプレミアム上映全体では、実に53%に達している。チケット単価の高いプレミアム上映が、興収を押し上げた面も大きい。ちなみに、これから日本でチケットを買う皆さんが気をつけた方がいいのは、ひと口に「IMAX」と言っても、上映方式やスクリーンの規格には違いがあることだ。今回の映像を1.43対1の拡張画角で最大限に体験するには、IMAX 70mmに対応する劇場で観る必要がある。『オデュッセイア』の公式サイトでは、上映形式による画面の違いを分かりやすく比較しているので、チケットを購入する前に確認することをお薦めしたい。https://www.odysseymovie.com/explore-formatsまた、『オデュッセイア』にはトラヴィス・スコットが出演しており、オリジナルソングは、トラヴィス・スコット、ジェームス・ブレイク、ルドウィグ・ゴランソンがコラボで発表している。

――大作、続編が次々とヒット
今年は、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』をはじめ、大作や人気シリーズの続編が次々とヒットしている。ご存じのように、マイケル・ジャクソンの伝記映画『Michael/マイケル』も、『オッペンハイマー』を抜き、世界興収で伝記映画史上最高の記録を樹立した。8月3日時点の北米年間興収トップ10は、以下の通り。『トイ・ストーリー5』
『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』
『オデュッセイア』
『Michael/マイケル』
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
『Obsession』
『プラダを着た悪魔2』
『Backrooms』
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』さらに年末にかけて、『デューン 砂の惑星 PART3』、『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』、『ハンガー・ゲーム』シリーズの新作『Sunrise on the Reaping』といった大作も控えている。昨年は、『ワン・バトル・アフター・アナザー』や『罪人たち』など、作品として高く評価された大作が興行的にも成功した。作品性と、映画館で観る価値のあるスケールを両立すれば、大作でも観客を呼べる。その流れが、今年にも引き継がれているように思う。――20代監督による低予算ホラーが、今年を代表する現象に
上のランキングでもうひとつ注目してほしいのが、『Obsession』と『Backrooms』だ。いずれも20代のYouTuber出身監督によるホラー映画で、今年を代表する記録的ヒットとなった。『Obsession』は、26歳のカリー・バーカー監督作。製作費はわずか75万ドルと報じられているが、8月3日時点の世界興収は約4億7490万ドルに達している。単純に製作費と興収を比較すれば、実に約633倍という驚異的な数字だ。なお、興行データサイトのThe Numbersでは、製作費は100万ドルと記載されている。
『スパイダーマン』が『アベンジャーズ/エンドゲーム』を超えた! 全米史上最高のオープニング興収を記録。『オデュッセイア』、20代新人監督のインディ・ホラー2作も大ヒット。Z世代が映画館を牽引する2026年 - Manny Liotta (C) 2025 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHT RESERVEDManny Liotta (C) 2025 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHT RESERVED
『スパイダーマン』が『アベンジャーズ/エンドゲーム』を超えた! 全米史上最高のオープニング興収を記録。『オデュッセイア』、20代新人監督のインディ・ホラー2作も大ヒット。Z世代が映画館を牽引する2026年 - Courtesy of Focus Features (C) 2026 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHT RESERVED Courtesy of Focus Features (C) 2026 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHT RESERVED

『Backrooms』は、21歳のケイン・パーソンズ監督(写真下右)作。製作費1000万ドルに対し、8月3日時点の世界興収は約3億9030万ドル。こちらも、単純比較で製作費の約39倍を稼ぎ出したことになる。
『スパイダーマン』が『アベンジャーズ/エンドゲーム』を超えた! 全米史上最高のオープニング興収を記録。『オデュッセイア』、20代新人監督のインディ・ホラー2作も大ヒット。Z世代が映画館を牽引する2026年 - Backrooms Courtesy of A24 Backrooms Courtesy of A24
『スパイダーマン』が『アベンジャーズ/エンドゲーム』を超えた! 全米史上最高のオープニング興収を記録。『オデュッセイア』、20代新人監督のインディ・ホラー2作も大ヒット。Z世代が映画館を牽引する2026年 - Backrooms Courtesy of A24 Backrooms Courtesy of A24
『スパイダーマン』が『アベンジャーズ/エンドゲーム』を超えた! 全米史上最高のオープニング興収を記録。『オデュッセイア』、20代新人監督のインディ・ホラー2作も大ヒット。Z世代が映画館を牽引する2026年 - Backrooms Courtesy of A24 Backrooms Courtesy of A24

もちろん、興収がそのまま利益になるわけではなく、宣伝費や配給費なども別にかかる。それでも、これほど低い製作費の作品が、数億ドル規模の世界興収を記録したこと自体が異例だ。2人とも、YouTubeを活動の基盤としてきたクリエイターでもある。とりわけ『Backrooms』は、パーソンズが「Kane Pixels」名義で展開してきた同名のYouTubeシリーズを長編映画化した作品で、映画公開前からすでに多くのファンを獲得していた。

一方、『Obsession』は、まず映画そのものがとにかく面白いという口コミによって広がった。私が観に行ったのは公開から1カ月ほど経った後だったが、平日にもかかわらず、どの回も売り切れていた。それほど長期間にわたって劇場が埋まり続けていたことに驚いた。――Z世代が映画館を牽引
『Obsession』と『Backrooms』のヒットを大きく支えたのは、若い観客、とりわけZ世代だった。しかも、ひとりで静かに観るというより、友人同士のグループで映画館にやって来る人が多い。学校や友人グループの中で、「観ておくべき作品」になっているのではないかと感じるほどだった。『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は幅広い世代に受ける作品だが、記録を塗り替えるほどの数字を生んだ大きな原動力も、若い世代の熱狂的な支持だった。公開初週末の観客のうち、18歳から34歳までが63%を占め、25歳未満だけでも半数を超えていた。今作では、トム・ホランドが4度目に演じるピーター・パーカーが、かつて自分という人間を形作っていた大切な人々とのつながりを失い、孤独を抱えながら、新たな脅威に立ち向かい、人生を立て直そうと苦闘する。https://www.nytimes.com/2026/08/03/movies/zendaya-tom-holland-spiderman.htmlメンタルヘルスの問題や孤独、そして愛する人たちに自分の存在を気づいてもらえないという感覚。そうしたテーマが、Z世代の心を強く揺さぶっていると分析されている。さらに、映画チケット販売サイトのFandangoが、米国の成人7000人以上を対象に行った調査でも、Z世代が最も積極的に映画館へ足を運ぶ世代であることが示されている。https://variety.com/2026/film/box-office/gen-z-driving-box-office-1236703551/過去12カ月に、映画館で少なくとも1本の映画を観た人の割合は、Z世代(13歳〜29歳):87%
ミレニアル世代(29歳〜45歳):82%
X世代(45歳〜61歳):70%
ベビーブーマー世代(61歳〜80歳):58%
だった。年間の平均鑑賞本数も、Z世代が7.0本、ミレニアル世代が7.2本で、ほかの世代を上回っている。さらに、若い世代は、IMAXや3Dなど、家庭のテレビや配信では再現できないプレミアムな上映体験を好む傾向にある。米国の映画館利用者のうち、過去1年間にプレミアム形式で映画を観た人の割合は、2023年の71%から、2025年には84%へと増加した。なかでもZ世代は、ほかの世代と比べて3D上映を選ぶ割合が高い。また、回答者の92%が、映画館には誰かと一緒に行くことを好むと答えており、特にZ世代は、家族よりも友人と映画を観に行く傾向が強かった。コロナ禍で学校に行けなかったこととも関係しているかもしれない。つまりZ世代にとって映画館は、単に映画を鑑賞する場所ではない。家庭では味わえない映像と音の中に没入し、その体験を友人たちと共有する、ひとつのイベントなのだ。音楽シーンに置き換えれば、配信が主流になった一方で、ライブの動員やアナログ盤の売り上げが伸びている現象と似ているように思う。映画館に足を運ぶことは、Z世代によって新しい文化として再発見されているのかもしれない。
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