ザ・ストライプス @ 新木場スタジオコースト

All pics by MITCH IKEDA
7月のクアトロ公演は見ていない。去年のフジロックも見逃したのでストライプスのライヴを見たのは一昨年の10月のリキッドルーム以来。2年ぶりということになる。ほかのバンドならなんということのないブランクだが、彼らはまだ10代なのだ。10代の2年は実に長い。2年前は平均年齢16歳だったのが18歳。他の10代がハイスクールで楽しくやっている間に、彼らはツアーに次ぐツアーを重ね、音楽業界の荒波に揉まれ、恐ろしく濃密でヘヴィな経験を積み重ねてきたのである。そして彼らは、見事に成長した姿を見せつけたのだった。

大音量で鳴らされていたザ・フーの“Baba O'Riley”が終わると同時に客電が落とされ、4人のメンバーが無造作に登場してきた瞬間からして、2年前とはまったく違う。少年の彼らはもういない。ほっそりした体躯は一回り大きくなり、骨格が逞しくなった。寡黙な演奏ぶりからは一切の幼さが消え、ある種の風格さえ漂う。ステージの動きに無駄がなくなり、歌も演奏も一切緩むところがない。ステージの構成、メニューの流れ、曲と曲の繋ぎ、客との対峙の姿勢、すべてによどみなくソツがない。若さをことさらに売り物にすることも、言い訳にすることもない。少年はオトナになったのだと痛感する。縁もゆかりもない、アイルランドの少年たちの成長過程を音楽を通じて見守っている。もうほとんど父親の心境だ(苦笑)。ジョー・ジャクソンの“I'm the Man”の荒々しく熱いカヴァーを披露するなどオヤジ殺しな選曲は相変わらずだが、演奏は若さに任せただけのものではなくなっていた。だから楽曲の良さも際立つ。

2年前の彼らの背骨を貫いていたのはR&Bと60年代ブリティッシュ・ビートだったが、今の彼らはそんな枠にとらわれない、もっと骨太でスケールの大きな王道ロックに変貌を遂げている。それはセカンド・アルバム『リトル・ヴィクトリーズ』からも十分にうかがえたが、ただ鋭利に尖っているだけではない、包容力のようなものさえ感じさせたこの日のライヴは、彼らの成長を端的に物語っていた。

アンコール1曲目はMC5 “Kick Out The Jams”のカヴァー。私はオリジナルよりもむしろギターウルフの定番メニューとして何十回となく聞いているが、ギターウルフと比べると性急でつんのめるような演奏が、この時ばかりは若さ剥き出しの熱っぽさで迫る。これはかなりぐっときた。

そしてアンコール2曲目はおなじみ“You Can't Judge A Book By The Cover”。ボ・ディドリーが歌い、エリック・クラプトン時代のヤードバーズやカクタスがカヴァーしたR&B/ロックンロールの古典。だがいまやストライプスのオリジナルと言っていいほどストライプスの定番曲として定着している。それを裏付けるように、サビの部分は大合唱になる。まさか遠い極東の島国の少年少女たちにこんなに愛され親しまれるようになるとは、天国のボ・ディドリーやウィリー・ディクソン(作曲者)は随喜の涙を流しているに違いない……と独りごちて、会場をあとにしたのだった。1時間半に満たないロックンロールの理想郷。誰にも邪魔されないビートの王国で、また遊びたいものだ。(小野島大)