4月に年内での解散が発表されてから半年。その間には初にして最後のワンマンツアーも行われた。対バンやイヴェント企画にこだわってアーティスト同士の横の繋がりを大切にしてきたFACTらしく、フェアウェルライヴの舞台として用意されたのは、2014年に結成15周年企画として開催した自主イベントの続編と呼ぶべき「ROCK-O-RAMA 2015」だ。UNITY STAGE (TSUTAYA- O-EAST)、ANARCHY STAGE(duo music EXCHANGE)、LIBERTY STAGE (clubasia・1F)、PEACE STAGE(clubasia・2F)、そして物販エリア(VUENOS)という、渋谷の隣接した会場を同時稼働させるサーキットイベントである。このテキストでは、UNITY STAGEとANARCHY STAGEを中心にレポートしたい。
The BONEZ/pic by Shingo Tamai STORM OF VOID/pic by 鈴木公平 UNITY STAGEのトップはThe BONEZ。獰猛な爆音を乗りこなしてクリスピーな歌を放つJESSE(Vo・G)は、FACTと対バンして駆り立てられるように強い刺激を受けたことを告げ、トップバッターの責任感を胸に秘めた熱いアクトを展開する。一方、階下のANARCHY STAGEでは、SNORTのハードコアサウンドと伸びやかなメロディが渾然一体となって疾走を始めていた。LITEは、さらりとした挨拶とは裏腹に狂気に溢れんばかりの激情渦巻くポストロックを叩きつける。また、恐ろしくヘヴィな3ピースのインストルメンタルロックで肌を震わせるSTORM OF VOIDは、史上初めてゲストヴォーカリストを招き入れるパフォーマンスとして、FACTのAdam(G)とセッションを繰り広げた。
Crossfaith/pic by Shingo Tamai HER NAME IS BLOOD/pic by 鈴木公平 スキンドレッドのUKツアーに帯同して帰国したばかりのCrossfaithは、エレクトロ混じりのえげつないメタルコアサウンドでフロアをばんばかとバウンスさせる。目下全国ツアー中のHER NAME IN BLOODは、Ikepy(Vo)が「いつも以上に騒いで、FACTに解散を後悔させてやろうぜ!」と呼びかけウォールオブデスを巻き起こし、その直後にはFACTの“start from here”を見事な爆走でカヴァー。直後のCRYSTAL LAKEのステージではIkepyを呼び込みコラボ曲“Matrix”を再現し、Ryo(Vo)は「始まりがあれば終わりもある。でも、終わりがあれば新しい物語の始まりがあんだよ!」と声を上げていた。
POP DISASTER/pic by タカハシアキラ Nothing To Declare/pic by タカハシアキラ SWANKY DANK/pic by タカハシアキラ SIDE IMPACT/pic by タカハシアキラ LOYAL TO THE GRAVE/pic by タカハシアキラ COUNTRY YARD/pic by タカハシアキラ アコースティックのステージとなったPEACE STAGEでは、POP DISASTERとNothing To Declareが出演した後、SWANKY DANKが狂おしい美メロでオーディエンスの歌声を誘う。また、LIBERTY STAGEにはSIDE IMPACT、LOYAL TO THE GRAVE、waterweed、COUNTRY YARDらが出演し、アンカーを担うのはHEY-SMITHだ。“Download Me If You Can”を叩きつけたあと、猪狩秀平(G・Vo)は、前日にFACTのメンバーに「考え直してくれ」と電話をしたことを告げながらも、このステージのトリとして気合いを入れてきたと語っていた。
Ken Yokoyama/pic by Shingo Tamai MAN WITH A MISSION/pic by Daisuke Sakai(FYD) そしてKen Yokoyama。“Running On The Winding Road”に始まり“Let The Beat Carry On”に終わるというセットリストもさることながら、「祝福」と記されたTシャツでFACTメンバーの前途を祝い、「どっかのバンドみたいに、Hi-STANDARDみたいに復活するかもしれないじゃん。だから、それぞれをサポートしてやってくれよ」と優しく経験値豊かな言葉を届けていた。ANARCHY STAGEのアンカーを担うのはMAN WITH A MISSIONだ。オープニングから“database”に“Take What U Want”と思い切りカチ上げ、ジャン・ケン・ジョニー(G・Vo・Raps)は「会場ガ違ウカラッテ遠慮シテンジャネエゾ。俺ラノ声、全部FACTニ届ケルゾ! ソノ調子ダ人間ノ野郎ドモ!」と、いつもよりも随分熱っぽい調子でオーディエンスを煽り立てていた。
そしていよいよこの時を迎える。FACTの6人が、UNITY STAGEに姿を見せた。Hiro(Vo)は「ROCK-O-RAMA 2015」のバックドロップを見上げ、というよりも何かを噛み締めるように宙を仰ぐ仕草を見せていた。しかし次の瞬間には「思い切り、楽しんでいきましょう!」と声が上がり、ファンキーなイントロセッションから飛び込む“slip of the lip”が早くもシンガロングを巻き起こした。歌声は“the shadows of envy”で更に熱を帯び、Adam(G)が煽りまくる5曲目“FOSS”に至るまでずっと声が途切れることがない。
「今日が来ることは分かってたんだけど、ここにいるバンドの仲間とやれることが最高に嬉しいです。もうね、健さんの曲聴いたら泣くし……今はまだ、泣かないで行きましょうか。ちょっとしかできなかったけど、新曲やらせてください」。表情はニコニコとしながらもHiroはそう告げて、『best+ 2009-2015』に収録された“look away”をアップリフティングに繰り出す。一方Eiji(Dr)は、「みんな十分に楽しんでるの? なんか大人しくない? 人多すぎて暴れられないの? 俺、最初ウルっと来てたんだけど、普通になってきた。調子出てきた」と笑いを誘う。
ここまでも十分に歌は分かち合われていたのだが、「歌っちゃおうのコーナー」として配置された“the way down”や“wait”、そして“disclosure”は、まさに叫ぶような歌声の応酬だ。MCを促されたTomohiro(B)は「フラットで来ようと思って、何も考えてなかった。いつもどおりなんだ。でも健さんのステージを観たりして、いつもと違う感じはある。最後だからこうっていうよりも、俺、こういうイベントがやりたかったんだ」と語る。そしてHiroはあらためて感謝の思いを伝え、「この6人が、バンドじゃなくてもまた出会える日がくるようにっていう歌詞です」と、しなやかな意志を豪快なリフに乗せて、もうひとつの新曲“choices”を披露した。
“miles away”では、Kazuki(G)とTakahiro(G)のブライトな音の交錯が美しい。「来年もこのイベントやりたくて……FACTじゃないよ? でもROCK-O-RAMAやりたいと思ってるんで、良かったら遊びに来てください」。そう告げるHiroは、いよいよ感極まって涙をボロボロと零している。「…だってさあ! すっげえ辛いこといっぱいあったけど、すっげえ楽しかったんだ!!」。そして、メンバー同士で労うように、称え合うようにハグを交わす。「明日から、FACTのHiroじゃなくて、なんちゃらのHiroで、21日からやっていきたいと思います。みんなにも(メンバーを指す)新しい明日が来るんで、応援してください。じゃあ、次が最後の曲です。アンコールとかナシで! 泣いても笑っても、後悔すんなよ!!」
最後の“a fact of life”は、他の出演者も飛び入りする最高潮の1シーンであり、また意志と決断によってもたらされたピリオドであった。もうずっと前から覚悟していたつもりなのに、ライヴ中はやはり、もったいない、もったいないと繰り返し思っていた。喪失感はこれから更に募るだろう。しかし同時に、一曲一曲がプレイされるたび、FACTだけがFACTの幕を引けるのだということも、その音からは痛いほど伝わってくる。オーディエンスは全力で声を上げ続け、その時間を共有していた。6人が並んで手を繋ぎ、挨拶し、花束を受け取る。最後にはEijiがフロアにダイヴして、忘れられないステージは幕を閉じるのだった。(小池宏和)