この後には出演ステージに一部変更があり、circuit GROUNDSにラインナップされていた中国出身のChaceが急遽kinetic FIELDに登場。ディスコ成分高めのバウンシーなサウンドが、所属レーベルのボス=イエロー・クロウ登場前のスタジアムを熱くさせていた。
スタジアム外のneon GARDENでは、Sekitovaが生音のループを織り交ぜながらグルーヴを構築する。独自の美意識に貫かれていて素晴らしい。
ビーチエリアのcircuit GROUNDSでは、LA出身のジョイライドが、鋭利かつ硬質な響きのベース/トラップでこちらもオリジナリティを打ち出していた。ダンスミュージックにはもちろん流行のスタイルがあるけれども、DJがどのように記名性を込めて抜きん出てみせるのかも腕の見せ所だろう。
アフロジャックは、まさに雑食性の権化のような高速ミックスでまんまと満杯のフィールドを波打たせる。ポップソングのプロデューサーとしてもバリバリ活躍しているし、ビデオゲームにも楽曲が使用されるといったふうにカルチャー全域に浸透するアフロジャックの音楽だが、ダンスDJというエンターテイナーの役割が極まったかのような、ここぞという現場感を見せつけていて圧巻である。
今年リリースされた“I Need You”のロマンチックで麗しい響きや、無数のオーディエンスを導くように上昇線を描く“Heading Up High”。後半のハードな追い込みがまたとんでもなくて、ずいぶんエモいなと思っていたら、最後にはオーディエンスにピースサインを掲げさせてジョン・レノン“Imagine”のリミックスを投下する。もちろん、EDCでは「PLUR」(Peace, Love, Unity & Respect)の精神が推奨されているのだけれど、これは本当に感動的な光景であった。
さて、circuit GROUNDSでは、マイク握りっぱなしの巨漢DJ=カーネイジが「みんな下がれ! でかいサークルを作れ!」と仕切りまくる。ハウスにダブステップにヒップホップにロックにと、あらゆるトラックをズタズタに切り裂きながらダンスの熱狂を生み出す彼のプレイはやはりインパクト絶大だ。破壊者であり、同時に創造者なのである。
そして、ロック・フレンドリーなプレイが楽しいオーストラリアのデュオ=ナイフ・パーティへとバトンを繋いでいった。
アクスウェルとイングロッソ、かなり良かったので後ろ髪引かれる思いだったが、最後はcircuit GROUNDSのゼッドに委ねる。恐らく、ビーチエリアには2日間で最も多くのオーディエンスが集まっていただろう。
ダフト・パンク“Da Funk”とアリアナ・グランデ“Break Free”のマッシュアップもサーヴィス精神旺盛だ。ラストはクイーン“Don’t Stop Me Now”からの“Alive”で、打ち上げられる花火との祝祭感のシンクロが素晴らしかった。
これまで、EDMは必ずしも音楽だけが重要なのではなく、多様な楽しみ方や欲望を許容する場なのだと僕は考えていた。しかしEDC Japanでは、豪華絢爛なステージセットや演出やパフォーマンスが、知らず知らずのうちにオーディエンスをダンスのピュアな陶酔感の中へと誘ってくれる。
EDC Las Vegasの公式インスタグラムより。