MMORPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FFXIV)のオフィシャルバンドとして2014年に始動したTHE PRIMALS。同ゲームのサウンドディレクター・祖堅正慶（G・Vo）が中心となり、マイケル・クリストファー・コージ・フォックス（Vo）、GUNN（G）、イワイエイキチ（B）、たちばなテツヤ（Dr）と結成したこのバンドは、国内外で熱い人気を確立している。結成10周年を記念した最新作『THE PRIMALS - Riding Home』のリリースを経て、9月21日、22日に横浜アリーナで開催された「THE PRIMALS Live in Japan - Darkest Before Dawn」は、史上最大規模のライブ。光の戦士（FFXIVプレイヤーの呼称。通称ヒカセン）の胸を高鳴らせ、両日チケットが完売となった2DAYS公演の内、22日の模様をレポートする。

FFXIVに登場するNPC（Non Player Character）・アルバート（CV：諏訪部順一）の渋くて甘い声が鳴り響いた開演前。アルバートとしてのキャラクター像を保ちながら真面目なトーンで諸注意を読み上げる影ナレがシュールで面白い。そして、その直後に会場内が暗転。ステージを覆っているスクリーンにオープニング映像が流れ、仄かに透けて見えるその向こう側で“Open Sky - The Theme from Dawntrail”の演奏が始まった。スクリーンが落とされると、眩しいライトで照らされたステージから意思を持った巨大生物のように勢いよく迫ってきた“エスケープ 〜次元の狭間オメガ：アルファ編～”。轟く重低音、鋭く刻まれるエレキギター、天高く突き抜けるかのような歌声……広大なスケールで展開されるFFXIVの世界が現出された感覚となり、胸がいっぱいにならずにはいられない。ヒカセンが勇者の剣のように掲げたペンライトが一斉に揺れる様も神秘的なオープニングであった。

「ようこそ！ 今日は天気がちょっと下り坂だけど、雨雲を飛ばす勢いで盛り上がってくぞ！ 疲れたら遠慮なく座って、各々自由にやってください。とはいえ……火力は必要だから。横浜アリーナを出る頃にはボロボロになって帰ってください！」──集まったヒカセンたちに挨拶をしたあと、FFXIVとFenderが共同開発したエレキギター「FINAL FANTASY XIV Stratocaster」を手にした祖堅。そしてスタートした“此処に獅子あり ～万魔殿パンデモニウム：辺獄編～”は、大音量のサウンドに負けないくらいのヒカセンの掛け声が合流。続いて披露された“Scream ～万魔殿パンデモニウム：煉獄編～”は、厳かなムードを湛えた爆音の躍動が強烈だった。ゲームをしながら胸に刻んだ記憶を呼び起こす音楽であるのと同時に、ラウドロックの愛好家をときめかせずにはいられない極上サウンドを連発するTHE PRIMALS。圧倒的な魅力が序盤から煌めきまくっていた。

「昨日も来た人は知ってると思うけど、試しにおじさんたちでやった曲がありまして……」と祖堅が言いつつスタートした“Bee My Honey ～至天の座アルカディア：ライトヘビー級～”。ゲーム内では女性ボーカルで届けられるが、祖堅とGUNNの歌声もなかなか似合っている。背後のスクリーンでピンクのハートが舞い踊る中、歌と演奏をキュートに繰り広げるおじさんたちを、ヒカセンのペンライトが全力で応援していた。続いて“Give it All ～至天の座アルカディア：ライトヘビー級～”に突入すると、明るかった場内のムードは一転。真っ赤な火柱が何本も立ち上る不穏なステージで重低音が刻まれ、ゲストシンガーのアマンダ・アーヘンが登場した。高音ボイスがアグレッシブなサウンドと融け合う様が美しい。『THE PRIMALS - Riding Home』に収録された新曲だが、音源ではアメリカのロックバンドであるアゲインスト・ザ・カレントのクリッシー・コスタンザが歌っている。ワイルドなオルタナティブロックをアマンダの透明感のある歌声で体感できたのは、かなり貴重な体験だったのかもしれない。

FFXIVの様々な曲に参加している伊藤友馬が登場して、バイオリンを奏でた“月満ちる夜 ～喜びの神域 エウプロシュネ～”は、瑞々しい贅沢な音色で彩られていた。演奏後に「上手いですね、バイオリン」と絶賛した祖堅。難易度が高いフレーズに生命を吹き込む伊藤に対する深い信頼が伝わってきた。たくさんの人々の情熱によってFFXIVが作り上げられているのを度々実感できるのも、THE PRIMALSのライブの魅力のひとつかもしれない。GUNNがメインボーカルとして歌った“忘却の彼方 ～蛮神シヴァ討滅戦～”の直後、スポットライトを突然浴びたのは、FFXIVのプロデューサー兼ディレクター、株式会社スクウェア・エニックス 取締役兼執行役員の吉田直樹氏。「お越しくださってありがとうございます！ お前らもっといけるだろ！」──マイクを通さない生声に応えた大歓声は、このゲームに対する長年に亘る彼の尽力を温かく讃えていた。

ステージ後方の大型スクリーンの真下から現われて、凛々しいシルエットを輝かせた朱雀(CV：南條愛乃)。彼女の登場によって、客席エリア全体は真っ赤なペンライトで染め上げられた。和的な情緒を感じさせる“千年の暁 〜朱雀征魂戦〜”の旋律を歌う声が優美極まりない。「こんにちは。テンゼンたち。正気でいますか？ いいんですよ。正気に戻らないでください」と、歌い終えた直後も朱雀として言葉を発してヒカセンを沸かせた南條。そして届けられたもう1曲は、“月下彼岸花 〜蛮神ツクヨミ討滅戦〜”だった。客席の上手側半分は白、下手側半分は青──2色のペンライトで作り上げられた風景がとてもきれい。客席を眺めながら歌い、演奏していた朱雀とTHE PRIMALSが心底嬉しそうだった。

そして、ゲストボーカルの登場がさらに続いた。“Shadowbringers”がスタートすると、ステージに現れたジェイソン・チャールズ・ミラー。力強い歌声が重厚なバンド演奏と火花を散らす様にワクワクさせられる。続いて、同じくジェイソンが歌ったのは“To the Edge”。前日の公演で彼が歌ったもう1曲は“Close in the Distance”だったが、日替わりで用意されていた予想外の曲が飛び出してヒカセンは大喜び。哀愁に満ちたメロディを歌いつつも、雄々しさを放ち続ける声がかっこいい。そしてアマンダによる“Flow Together”も素敵だった。澄み渡った彼女のソプラノを聴いて涙腺を緩ませたヒカセンも少なからずいたようだ。祖堅が「泣いている人がいたけど、ゲームを真剣に遊んでいたからこそ。ありがとね！」と言っていた。本当にその通りだと思う。夢中になって向き合うエンターテインメントは、もうひとつの大切な人生と化すと言っても過言ではない。FFXIVは、ヒカセンにとってそういう存在となっているのだ。

「準備はいいですか？ ぶっ飛ばしてくぞ！ いけんのか？」という煽りの言葉と共に雪崩れ込んだ“メタル 〜機工城アレキサンダー：起動編〜”。この曲を皮切りに、熱いナンバーが連発された。メンバー各々のソロプレイが飛び出した“魔神 ～魔神セフィロト討滅戦～”では、GUNNによる恒例のコール＆レスポンスも炸裂。「どこから来たの？」「家！」「どこに帰るの？」「家！」……「家」と「Yeah」を掛けた駄洒落コミュニケーションにほのぼのとさせられた。火柱で彩られたステージ上から、「そんな火力じゃ、俺たちのこと倒せねえぞ！ もっと来いよ！」と祖堅が煽りまくった“過重圧殺！ ～蛮神タイタン討滅戦～”。

ダンサーチームのパフォーマンスが加わり、怒涛の勢いでダンスビートが駆け抜けた“ロングフォール ～異界遺構 シルクス・ツイニング～”。そして“Endwalker – Footfalls”で本編は締め括られた。ジェイソンとアマンダが歌い、伊藤のバイオリンも奏でられる中、スクリーンに映し出されたFFXIVの場面の数々。たくさんのエネルギーがステージ上で寄り添いながらひとつになるのが、とても感動的だった。

ステージに戻ってきたTHE PRIMALSは、アンコールの3曲でも大いに楽しませてくれた。祖堅がトランペットを吹き鳴らし、金銀テープの発射や特効火薬でも盛り上げた“メタル：ブルートジャスティスモード ～機工城アレキサンダー：律動編～”。時間停止を表現する演奏ストップに合わせてヒカセンも一斉に動きを止める恒例行事が、横浜アリーナの規模になると超常現象のようだった“ライズ 〜機工城アレキサンダー：天動編〜”。朱雀（南條）、ジェイソン、アマンダ、ダンサーチームがステージに集合。ヒカセンが掛け声を上げながら興奮を露わにしていた“ローカス 〜機工城アレキサンダー：起動編〜”……完全燃焼という表現がふさわしいピュアな興奮が会場を震わせていた。「今日、ライブをやって楽しかったり、嬉しかったり、泣いたり、笑ったり、全部ゲームがそうしてきたんだ！ これからもゲームを遊んでね！ よろしくお願いします！」と、ヒカセンに呼び掛けてステージをあとにした祖堅。終演を迎えた直後、「みんなどこに帰るの？」「家！」「気をつけて帰ってね！」「家！」と、コール＆レスポンスを生声で交わし、ヒカセンを見送った吉田直樹氏。THE PRIMALSとゲスト陣による至福のサウンド、進化を続けるFFXIVの奥深さに痺れまくった直後に、和やかな余韻も噛み締めることができたライブだった。（田中大）

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●セットリスト
「THE PRIMALS Live in Japan - Darkest Before Dawn」
2024.9.22 神奈川・横浜アリーナ

01. Open Sky - The Theme from Dawntrail
02. エスケープ 〜次元の狭間オメガ：アルファ編～
03. 此処に獅子あり ～万魔殿パンデモニウム：辺獄編～
04. Scream ～万魔殿パンデモニウム：煉獄編～
05. Bee My Honey ～至天の座アルカディア：ライトヘビー級～
06. Give it All ～至天の座アルカディア：ライトヘビー級～
07. 月満ちる夜 ～喜びの神域 エウプロシュネ～
08. 忘却の彼方 ～蛮神シヴァ討滅戦～
09. 千年の暁 〜朱雀征魂戦〜
10. 月下彼岸花 〜蛮神ツクヨミ討滅戦〜
11. Shadowbringers
12. To the Edge
13. Flow Together
14. メタル 〜機工城アレキサンダー：起動編〜
15. 魔神 ～魔神セフィロト討滅戦～
16. 過重圧殺！ ～蛮神タイタン討滅戦～
17. ロングフォール ～異界遺構 シルクス・ツイニング～
18. Endwalker – Footfalls

Encore
19. メタル：ブルートジャスティスモード ～機工城アレキサンダー：律動編～
20. ライズ 〜機工城アレキサンダー：天動編〜
21. ローカス 〜機工城アレキサンダー：起動編〜

●アーカイブ配信情報
「THE PRIMALS Live in Japan - Darkest Before Dawn」
配信日時：2024年9月21日（土）
料金：4,400円（税込）
チケット販売期間：2024年9月9日（月）18:00～10月7日（月）20:00
アーカイブ視聴可能期限：2024年9月22日（日・祝）18:00～10月7日（月）23:59
販売元：（チケット詳細はこちら）

THE PRIMALS　オフィシャルサイト
提供：SQUARE ENIX
企画・制作：ROCKIN'ON JAPAN編集部