宇宙まお/晴れたら空に豆まいて

宇宙まお/晴れたら空に豆まいて - All photo by 吉澤健太All photo by 吉澤健太

●セットリスト
1. 自転車
2. ヘアカラー
3. バイバイ
4. 雨の予感
5. 向こう岸
6. サボテン
7. ベッド・シッティング・ルーム
8. エイリアンズ (カバー曲(キリンジ))
9. 雪が降る街 (カバー曲(ユニコーン))
10. うつくしい夜 (新曲)
11. 愛だなんて呼ぶからだ (新曲)
12. 痴話喧嘩
13. あの子がすき
14. 君が死ぬまで終わらない物語
(アンコール)
EN1. 哀しみの帆


宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
代官山・晴れたら空に豆まいてにて、ソロの弾き語りワンマンを行うシリーズライブ「Wardrobe Songs」。vol.1となった10月13日のステージ(ライブレポートはこちら)を経て、今回は失恋の歌をテーマに据えた「vol.2 -片耳のピアス-」である。過剰な力みもなく、練り上げられたメロディを浮かび上がらせる“自転車”にハーモニカの音色が加わって始まったパフォーマンスは、ギターのミュートカッティングで早速オーディエンスの賑々しい手拍子を誘う“ヘアカラー”へと連なってゆく。新しい日々を手に入れようと願う、そんな女子の心情がポップな曲調に弾けていった。
宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
あらためて挨拶すると、学生時代の片思いを歌にしたためたという“バイバイ”を届け、或いはブルージーに歪ませたギターサウンドの“雨の予感”に情念を宿らせる。彼女のソングライティングはキャリアの初期から大人びた技術を感じさせるところがあったが、だからこそ、かつて生み出した楽曲が今に与えてくれる新しい意味も大きいのではないか。「Wardrobe Songs」という企画のタイトルについては、「いつも着ている服みたいに、宇宙まおの歌があったらいいなと思います」と説明する。
宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
最新アルバム『ベッド・シッティング・ルーム』から、失恋3部作と呼ばれる楽曲たちを物語の時系列に沿って披露する一幕へ。玄妙なギターフレーズが、別れの悲しい予感を連れてくるような“向こう岸”。別れを告げた直後の心情を描き、気丈で晴れやかなぶんだけ切なく響く“サボテン”。そして、一人きりの部屋で湧き上がる記憶から、逃れることもできずに向き合う“ベッド・シッティング・ルーム”。華々しくソリッドなバンドサウンドに弾けるポップソングも素晴らしいが、成長を宿した深い視線で、丹念に思いの揺らぎを歌に紡いでゆく彼女の弾き語りは、音圧やスピード感とはまったく異なるベクトルでリスナーの意識を引き込んでくれる。
宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
vol.1でも設けられたカバーコーナーでは、フルコーラスではないもののメトロノームが秒針の音のように静かにリズムを刻むキリンジの名曲“エイリアンズ”が、そして、年の瀬ということもあってかユニコーンの“雪が降る街”も披露される。“雪が降る街”はツイッターなどで募集したリクエストにも寄せられていたそうだけれど、深みのあるグッドメロディは宇宙まおによく似合う。さらに、つい前日に出来上がったという新曲“うつくしい夜”は、「ド正面から、恋が手に入らないもどかしさを歌った」と語られたとおり、いびつで悲しい関係を陶酔感の中に封じ込めた奥ゆかしい一曲であった。前回初披露された新曲“愛だなんて呼ぶからだ”も、愛を率直に求めるほどに狂おしさが立ち上るナンバーだ。
宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
「良いパートナーの関係として、語り合わなくても理解できる方がいいっていう風潮があるんですけど、私はよく分からないんですよね。口に出さないと、分からない」。そんなふうに語りながら、ギターワークで楽曲の表情をくるくると変えながら届けられるのは、歌謡テイストの“痴話喧嘩”だ。続けざまに、手拍子が自然発生する中で楽しそうに歌う“あの子がすき”へ。お馴染みの、オーディエンスとの掛け合いもバッチリ決まった。「私は、日常の中で生きててよかったって思うようなちょっとしたことが、たくさんあります。そうしたら、重圧や辛いことにも耐えられる。皆さんにも、それを持って帰って欲しいんです」。そうメッセージを残して、本編の最後に歌われたのは“君が死ぬまで終わらない物語”だ。悲しい記憶も背負って生きる覚悟の歌が、余韻を残してゆく。
宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
「口に出さないと、分からない」。それは、歌という形で言葉を発信する彼女にとって、アイデンティティを揺るがしかねない重大問題なのだろう。アンコールで再び姿を見せると、片耳だけの刺繍のピアスを製作してくれた美大時代の後輩や、イベントのビジュアルを手がけてくれた友人、ステージに掛けられた上着を製作してくれたデザイナーたちを紹介し、《哀しみのシーツ干して 待つ ベランダの下から/君を 呼ぶよ》と何度でも人々を連れて心の航海に乗り出す珠玉のバラード“哀しみの帆”だ。人生経験を重ねるほどに、宇宙まおの歌は触れる者の胸の深いところにまで辿り着く。成長という、他の何物にも代え難い財産を見せてくれた一夜であった。
宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
次回の「Wardrobe Songs vol.3 -休日と白いシャツ-」は、年明けの2月16日に開催が予定されている。なお、12月31日に出演するCOUNTDOWN JAPAN 17/18では、当初バンド編成で出演予定だったところを、この「Wardrobe Songs」の手応えもあってソロ弾き語り出演することに決めたそうだ。「今、やるべきだと感じました。頑張ってまいります!」という意気込みは並々ならぬものがあったので、こちらもぜひ楽しみにして欲しい。(小池宏和)
宇宙まお/晴れたら空に豆まいて

終演後ブログ
【速報】宇宙まお、弾き語りライブが凄いことになっている件について
10月、12月、年明け2月と、代官山・晴れたら空に豆まいてで開催される弾き語りワンマンのシリーズライブ「Wardrobe Songs」。そのvol.2にあたる今回は、失恋の歌をテーマにセットリストが構成されたステージだった。 そういうテーマなので、ただ明るく楽しいライブになるはずはないの…
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