ストレイテナー/幕張イベントホール

All photo by Viola Kam (V'z Twinkle)

●セットリスト
1.BERSERKER TUNE
2.The World Record
3.Alternative Dancer
4.DAY TO DAY
5.タイムリープ
6.Man-like Creatures
7.Lightning
8.Braver
9.SAD AND BEAUTIFUL WORLD
10.冬の太陽
11.TRAIN
12.VANISH
13.瞬きをしない猫
14.KILLER TUNE
15.DISCOGRAPHY
16.灯り
17.鱗(うろこ)
18.Boy Friend
19.彩雲
20.REMINDER
21.The Future Is Now
22.原色
23.Melodic Storm
24.シーグラス
(アンコール)
EN1.From Noon Till Dawn
EN2.羊の群れは丘を登る
(ダブルアンコール)
WEN1.スパイラル
WEN2.ROCKSTEADY


「もうずっと前から、今日のことを考えて準備してきたんで。今日で今日が終わるっていうのが信じられません……まだ全然終わってないけど(笑)」。冒頭から祝祭感に沸き返るホールを見回して、ホリエアツシ(Vo・G・Piano)が晴れやかな表情で語りかける。
「今日、本当に全部出し切って、今日が最後でもいいっていうぐらいの気持ちでやりたいと思います。でも――明日になったら、『またすぐやりてえ!』って思うぐらい、楽しいライブにしましょう。俺たちストレイテナーっていいます。よろしくお願いします!」。そんな宣誓とともに、ライブは刻一刻と歓喜と熱を帯びていく――。

最新アルバム『Future Soundtrack』やベストアルバム『BEST of U -side DAY-』、『BEST of U -side NIGHT-』のリリース、ライブハウスツアー「My Name is Straightener TOUR」など、ストレイテナーにとって結成20周年アニバーサリーイヤーとなった2018年を経て、ここ幕張イベントホールにて開催されたワンマンライブ「21st ANNIVERSARY ROCK BAND」。
スタンディングアリーナ&スタンド席を埋め尽くしたオーディエンスの情熱と、高純度に磨き抜かれたロックとメロディが真っ向から共鳴し合ったこの日のアクトはそのまま、ストレイテナーというバンドの揺るぎない核心を何より鮮やかに象徴するものだった。

ホリエアツシ、ナカヤマシンペイ(Dr)、日向秀和(B)、大山純(G)の紹介映像がスクリーンに映し出され、意気揚々とオンステージした4人。「幕張の、バーサーカーに捧ぐ!」というナカヤマの絶叫とともに流れ込んだ“BERSERKER TUNE”、さらに雄叫びの如きシンガロングを呼び起こした“The World Record”の時点で、若い観客の姿も多く見られた会場はすでにクライマックス級の熱気に包まれている。

澄んだ少年性と不屈の魂が共存するホリエのボーカル。空気丸ごと震わせるようなナカヤマ渾身のドラミング。ファンキーなラインでアンサンブルをドライブさせる日向のベース。鋭利かつ鮮烈にバンドの音像を彩る大山のギターワーク――。
大山が加入して4人編成になってからすでに10年。あたかもひとつの生命体の如く躍動するそのサウンドスケープが、“DAY TO DAY”、“タイムリープ”といった近年の楽曲はもちろんのこと、“Man-like Creatures”、“TRAIN”といった歴代の代表曲にも、ホリエがエレピやピアノの音色を奏でる“Lightning”、“Braver”の風景にも、格段に伸びやかなスケール感を与えている。

ライブ中盤にはアリーナ中央のセンターステージへと移動、“VANISH”をはじめワイルドなダンスビートの楽曲を中心に披露していく4人。
「ずっとここにこれ(センターステージ)があって、邪魔だと思ってたでしょ?」とホリエが観客に語りかければ、「手品で言えば『あの帽子から鳩を出すんだろうな』ぐらいバレバレだったね(笑)」とナカヤマが続ける。正方形のステージを土俵に見立てて「せっかくだから、相撲取る?」と言うのは日向。「四方に人がいると……くだけづらいね(笑)」とホリエはやや照れつつも、MCになるとここ最近のライブではお馴染みのリラックスしたトークを繰り広げ、ホールを沸かせていく。
その一方で、「20周年も終わって、21年目に入りました。ツアーにも足を運んでくれた人も多いと思います。今日は、もう次に行きたいなと思って。今までのストレイテナーじゃないぜっていうところもね、見せたいわけですよ!」というホリエの勇壮な言葉に、一面の拍手喝采が広がる。

ミラーボールと紙吹雪が目映く大空間を彩った“DISCOGRAPHY”で観客一面のジャンプを巻き起こした後、再びメインステージに戻ったメンバーをよく見ると、そこには5つの人影が。「裏まで伝わってきてました。楽しそうだなあって」と語るもうひとりの人物は、“灯り”を共作した秦基博! 彼を迎えて演奏するのはもちろん、今回がこの5人でのライブ初披露となる“灯り”。珠玉のメロディを歌い上げるふたりの声が重なり合い、どこまでも豊潤な多幸感を編み上げていく。さらに、「それだけじゃもったいないでしょ!」というホリエのコールとともに、ホリエいわく「疾走“鱗(うろこ)”」こと“鱗(うろこ)”のアグレッシブなロックバージョンを轟かせ、会場を熱く激しく揺さぶっていった。

「秦くんが『この曲が好きだ』と……」というホリエの紹介から『Future Soundtrack』のセンチメンタルなナンバー“Boy Friend”を経て、“彩雲”、“REMINDER”とベストアルバムのファン投票でも人気の高かった楽曲を立て続けに響かせていく。中でも、テナーのロックのロマンの結晶の如き“REMINDER”では、舞台に向け高く腕を掲げるオーディエンスの熱量もよりいっそう高まっていたのが印象的だった。

「20周年で散々過去の話を振り返ってきたんで、今日は未来の話をしようかなと思ったんですけど……未来のことは全然わかんない(笑)」とホリエ。「俺たちは、自分たちを裏切らないカッコいい音楽を作って、みんなと一緒に楽しいライブをやるだけです。これから先、何が未来にあるかわかりません。でも一個だけ確実なこと――こうやってこの4人が出会ったからには、ストレイテナーは今までも、これから先もずっと、この4人でやりたいと思います!」。そんな言葉に続けて鳴り渡った“The Future Is Now”が、ひときわポジティブな生命力とともにホールの空間を満たしていった。

「みんなの声を聴かしてください!」のコールに応えて“Melodic Storm”では満場のシンガロングを呼び起こし、“シーグラス”の清冽なロックの加速感で本編を締め括った4人。アンコールでは「俺たちもね、泣きそうなのをグッとこらえて演奏してますけど」というホリエの言葉から、「俺たちのライブの感想でよく言われる1位がさ、『泣きそうでしたよ!』」(ナカヤマ)、「泣かなかったんかい!って(笑)」(日向)と話が転がり、「まず自分たちが『泣きそう』を乗り越えていこうかなと思って」というナカヤマの提案から、なぜか「泣ける映画」を4人が挙げ、さらに「泣けるジブリ映画」のトークに大山が参戦する一幕も。MCの長さにたまりかねて「もうやろうよ!」と大山。場内に笑いが広がる。

“From Noon Till Dawn”の《今だったら言える この世は素晴らしい》のラインで《〜言える みんな愛してるぞ!》と叫ぶホリエに、会場の温度はなおも天井知らずに高まり、“羊の群れは丘を登る”でフィナーレ――と思いきや、三たび舞台に4人が登場。
「みんなそれぞれの人生だから、いつかストレイテナーの音楽が必要なくなる時が来るかもしれないじゃない? でも、あなたのこの先の人生のどこかでまた、俺たちの音楽が鳴り響くような時が来たらいいなと思って、俺たちはずっと鳴らし続けるんで」……そんな言葉とともに演奏されたのは、この日のために作ってきたという新曲“スパイラル”。ツアーのドキュメンタリー映像が映し出される中、アコギをフィーチャーした凛とした楽曲越しに「今」の感慨を歌い上げるこの曲が、観客の想いをさらに高ぶらせていく。この日のラストナンバーは、バンドのキャリアとともに在り続けたロックアンセム“ROCKSTEADY”。彼らの21年史を未来へとつなぐ、金字塔的な名演だった。(高橋智樹)