夜の本気ダンス/LINE CUBE SHIBUYA

夜の本気ダンス/LINE CUBE SHIBUYA - All Photo by 石崎祥子All Photo by 石崎祥子
夜の本気ダンス/LINE CUBE SHIBUYA

※以下のテキストでは、演奏曲のタイトルを表記しています。ご了承の上、お読みください。

昨年6月にアルバム『Fetish』をリリースした夜の本気ダンス。リリースに伴う全国ツアーを終えたばかりの彼らは、現在同作を携えて、東京・LINE CUBE SHIBUYA、そして大阪・メルパルクホールでの初のホールワンマンに臨んでいるところだ。以下のテキストでは、東京公演の模様をレポート。

夜の本気ダンス/LINE CUBE SHIBUYA

これまで全国各地のライブハウスやフェス会場に集うオーディエンスを踊らせてきた彼らだが、いったいホールではどのようなライブをするのだろうか。結論から言うと、彼ら自身はホールだからといっていつもと違った演奏をしていたわけではない。しかしホールという環境が、バンドの地力を自然と浮き彫りにさせていた。西田一紀(G)によるギターのキレ、マイケル(B・Cho)のベースラインが時に見せる獰猛さ、鈴鹿秋斗(Dr・Cho)の繰り出すビートのタイトさ。それらはこの広い会場でも損なわれておらず、音の輪郭が全くぼやけていない。その上でバンドサウンドには奥行きがあり、ハコ全体をしっかり鳴らすことができている。しなやかに進化する人力のダンスロックは、一過性のブームに流されるほどやわじゃない。結成10周年を越えた先の夜ダンは、こんなにも頼もしいのだ。

夜の本気ダンス/LINE CUBE SHIBUYA
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指定席ということで、自分のスペースを使って周りの目を気にせずに踊ってほしいと観客に伝えたのは鈴鹿。オーディエンスにとってもホールでの夜ダンはこの日が初めて。緊張していた人もいたかもしれないが、曲によってはギターを持たない米田貴紀(Vo・G)が誰よりも自由に身体を動かしていたため、早い段階から観客もリラックスしてノれている感じがあった。各曲を象徴するリフによるトランス感や波打つグルーヴに身を委ね、センス冴えわたる曲間のアレンジに驚いたり昂ったりしているうちに、セットリストは進んでいく。イントロのキメに合わせて米田がネクタイを外す“fuckin' so tired”のような鉄板曲もやはり欠かせないが、『Fetish』収録曲はとりわけ新鮮な存在感を放っていた。特に“Eternal Sunshine”は、この曲が出来たからこそホール公演に踏み切れたのでは?(多分そうではないが)と考えてしまうほどに抜群で、新たなライブアンセムが生まれた手応えさえあった。なお、音源ではCreepy Nutsが参加している“Movin'”のラップパートはライブだと鈴鹿の担当だ。

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MCではまず鈴鹿が、「ホール公演となると景色がちゃいますね。すごいね! すごいね! すごいよ!」と感動をそのまま言い表す。バンドの演奏は地に足のついたもので、4人の佇まいも非常に堂々としたものだったため、ここで初めて、メンバーのリアルな興奮が伝わってきた。その後は、鈴鹿が、ツアー中インフルエンザにかかってしまったことに引っ掛け、「ロックの予防接種、打たれる準備できてますか!?」という謎の煽り(本人が気に入ったのか予防接種のくだりはこの後再登場する)をしたり、フェスではなかなかMCをやらない西田が、ゆったりとしたテンポの喋りで会場を独自の世界観に引き込んだりしていた。

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終盤には、米田の「いやあ、やってよかったですね。すごいわ、拍手の響き方がまず違う」という言葉に対して、オーディエンスがさらに拍手をする場面も。この日演奏された“Japanese Style”はアマチュア時代に大会に出場した時、SHIBUYA-AX(2014年5月に閉館したライブハウス。この日の会場の近くにあった)で演奏した曲とのこと。曲が終わり、「ありがとう東京!」と叫んでもフロアは静かなままだったあの頃と違い、今はこれだけのファンが客席を満たし、彼らの音楽に熱狂している。「もう全然違うよね。続けてきてよかったなと思います」と米田が嚙み締める。

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殊更に感動を煽ることのないこのバンドにしては珍しい、想いが滲み出てしまったみたいなシーンも挟みつつ、ライブは終了。初のホール公演、盛りだくさんのライブだったにもかかわらず、4人とも息切れしている様子は一切なし。この底知れなさこそがこのバンドの面白さであり、可能性なのだろう。2月15日(土)の大阪公演、そして「初のホール公演」という一つの挑戦を終えたあとに待つ3月29日(日)京都・KBSホールでの追加公演も、特別な夜になりそうな予感。(蜂須賀ちなみ)

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