ゆず/日本武道館

ゆず/日本武道館 - All photo by 中島たくみ、石井健All photo by 中島たくみ、石井健

●セットリスト
01. わだち
02. 少年
03. 旅立ちのナンバー
04. シャララン
05. ウソっぱち
06. くず星
07. 翔
08. 朝もやけ
09. 友達の唄
10. 虹
11. 始発列車
12. サヨナラバス
13. 地下街
14. 贈る詩
15. ワンダフルワールド
16. タッタ
17. イマサラ
18. 夏色
19. 栄光の架橋


ゆず/日本武道館
1997年10月25日に『ゆずの素』でインディーズデビューを果たしたゆずによる、「ゆず デビュー25周年突入記念ライブ YUZU TOUR 2021 謳おう×FUTARI in 日本武道館」。有観客ライブとRakuten TVによるオンライン生配信によって多くのファンと共にアニバーサリーの季節へと飛び込む機会となった今回のステージは、今夏繰り広げられたホールツアーと地続きの公演タイトルにはなっているものの、北川悠仁と岩沢厚治がふたりきりのパフォーマンスで武道館とオーディエンスの心を満たす、一夜限りのライブだ。その模様をレポートしたい。

ゆず/日本武道館
ゆず/日本武道館
感染症対策の徹底された会場で、オーディエンスは着席のまま恒例の「ラジオ体操第一」を行い、北側のスタンド席に姿を見せた北川と岩沢が拍手に包まれながら笑顔で降りてくる。両サイドに縦長のLEDスクリーンを配しただけのステージで、客電を煌々と灯したまま、それぞれにアコースティックギターを携えたふたりは、“わだち”で開けっ広げな歌心を解き放っていった。約11年半ぶりの武道館ワンマンとはいえ、オーディエンスとの距離を一気に詰めるような、ゆずを近くに感じるパフォーマンスがさすがである。

ゆず/日本武道館
オーディエンスが歓声や歌の自粛を求められる環境で、ライブグッズ「Boo Boo ゆず太郎」「Boo Boo UTAO ゆず太郎」(マスコットキャラクターを模したボール状の楽器)の楽しい音色がライブに彩りをもたらす。北川は、まだまだ油断大敵のコロナ禍を逆手に最高のエンターテインメントを繰り広げることを宣言し、ポップな包容力を発揮する“シャララン”や、岩沢によるカントリー風の流麗なアルペジオに導かれた“ウソっぱち”、そしてディープな心象を描き出すメロディの“くず星”と、キャリアを広く見渡した選曲で緩急自在のパフォーマンスを繰り広げていった。

「じゃあ、みんなを元気づける歌を歌います」と披露されたシングル曲“翔”では、北川が足元でバスドラムを打ち鳴らし、岩沢のハーモニカ間奏も触れる者を熱く鼓舞する。“朝もやけ”から“友達の唄”にかけては、タンバリンを打ち鳴らすロボット「タンバゆず太郎」(「みんな、ありがとう!」やら「クソッタレ!」といった音声もプリセットされている)も登場。宣言どおり、あの手この手のアイデアでエンターテインしてみせる。

ゆず/日本武道館
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場内の換気タイムを挟んで始まった後半は、ふたりがそれぞれにスタンド席に近い立ち位置で“始発列車”を歌い出すのだが、イヤーモニターをつけているとはいえ離れた距離で阿吽の呼吸のハーモニーを披露。“サヨナラバス”では、オーディエンスがサビ前のブレイク部でバッチリの手拍子を決め、ハンドウェーブを巻き起こす。「歌うなよー」と告げながらも、後半ではあえてサウンドをミュートさせてオーディエンスの心の歌声を誘うなど、制限されたライブ空間でも不思議と親密なムードを作り上げていった。

ゆず/日本武道館
ゆず/日本武道館
『ゆずの素』収録の“地下街”では、同郷のあべこうじ(吉本興業所属)が当時手掛けたレアなミュージックビデオを特別に借りることができたということで、年代物でありながらも力の入ったその映像を背景にプレイする。続いての“贈る詩”も、ふたりが揃った歴代の写真がずらりと並ぶ映像と共に披露され、25周年突入のタイミングに感慨深い花を添えた。「40代になった俺たちが歌う、この曲を聴いてください」と届けられたのは、世界が未曾有の困難に見舞われたあとに新たな意味をもたらすような、渾身の“ワンダフルワールド”だ。胸をヒリヒリとさせるような切迫感に満ちた名演である。

ゆず/日本武道館
ゆず/日本武道館
そして“タッタ”から『YUZUTOWN』収録の“イマサラ”にかけては、混沌としたパーティ性を発揮するゆずの時間である。特に「2021年、弾き語りの限界に挑戦」と言葉を添えた“イマサラ”は、たくさんのファンによって制作されたムービーにも彩られ、ゆず流の熱狂的なラーガロックと化す。ライブ終盤は、「祝・25周年突入」のくす玉が割れる“夏色”を経て、苦難の日々を潜り抜ける“栄光の架橋”ではふたりがオフマイクのコーラスを熱唱し、全19曲のフィナーレを迎えるのだった。最後にはほんの一瞬だけ、新曲の断片も公開。今回のステージの模様は、10月30日(土)にRakuten TVでリピート配信される。

ただCDデビュー時を振り返りアニバーサリーを祝うだけではない、ゆずが生み出してきた歌の数々と共に「これから」を切り拓くライブであった。そして既にニュースでも報じられているとおり、2022年春にはニューアルバムをリリースすることと、全国10ヶ所24公演のアリーナツアー開催も発表。アニバーサリー含め、自らの手で新たなシーズンを掴みにゆくゆずの姿が、そこには確かにあった。(小池宏和)

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