ゆずが「ふたり呑み」で明かした知られざるメカニズムと21年目の本音、『SONGS』で語る

ゆずが「ふたり呑み」で明かした知られざるメカニズムと21年目の本音、『SONGS』で語る
「20周年の活動をしていたときに、まあ、文句なしにしあわせを感じたんですよ。いろんな場所で歌わせてもらったり、そこに応援してくれるファンのみんながいて、これってしあわせ以外の何だよというふうに思えたし。コンビでステージから降りることなく、現役で居続けることができた。そんなしあわせなことないじゃん、というふうに思えて。そのしあわせに思えたことを、聴いている方に伝えたいなっていう」(北川悠仁)

土曜午後11時〜の放送枠に移ったNHK『SONGS』。4月7日は、ゆずの回だった。『SONGS』演奏シーン収録後の打ち上げという体で、長州地どりの水炊きに舌鼓を打ちながら呑むゆずのふたり。そこに番組スタッフが質問を投げかけるという内容だったのだけれど、トークの最後に、ニューアルバム『BIG YELL』収録曲“イコール”の歌詞の意図に回答した北川は、前述の言葉を語っていた。


「ふたり呑み」という企画なのに、うっかり車で来てしまった岩沢厚治が「すみません、ノンアルコールビールください」というオーダーでいきなり笑わせてくれる。演奏曲は“虹”、“春風”、“イコール”の3曲で、“夏色”でも“栄光の架橋”でもない、どちらかといえばしっとり目でありながらパンチを残す味わい深い選曲。“イコール”は北川とGReeeeNによる共作曲であり、柔らかく弾むリズムや歌メロに、なるほど共作だ、というテイストを感じさせるところが面白い。

猛烈な勢いで駆け抜けた「攻めのアニバーサリー」の2017年を締め括る、『第68回NHK紅白歌合戦』大トリ出演。声をかけてくれた五木ひろしのモノマネを披露しながら、北川はひしひしと感じていた重圧を語る。また、21年目を迎えることができた活動の秘訣は「ふたりが違うこと」であるという話から、岩沢の社交性について「俺が会ったときの岩沢くんが、荒んでただけだよ」と告げると、当の岩沢は「もっと言葉選べよ(笑)。荒んでたっていうか、なんでしょうね。道端で歌うことにしか、楽しみを見つけられないような。当時はね、それしか趣味がなかったんで」と話していた。

興味深かったのは、やはりゆずの楽曲制作のルールについてだ。岩沢が、お互いの作った作品に一切口出ししないという鉄壁の信頼について語っていたが、やはり音楽ユニットやバンドの在り方としては稀な関係だろう。甘いわけでも緩いわけでもない。お互いにソングライターとしてライバルだからという、高度な緊張感を伴う「信頼」が、ゆずのふたりの関係には介在している。

岩沢作の“春風”で北川がメインボーカルを担当しているのは「これは上で僕がハモってたらいいかもみたいな、ただそれだけの閃きなんで(岩沢)」だし、北川作の“夏色”は、若かりし岩沢がサビを歌いたい、と主張したという。「ゆずとしての声というか、ふたりだからこそできる、そういう歌い分けの面白さみたいなものは、ゆずの良さだし(北川)」。20年のキャリアを重ねたゆずのメカニズムは、奥深い。放送の終盤にゆずとしての野望を尋ねられると、ふたりとも継続という意味の野望を掲げていたことは感慨深かった。

どれもこれも興味深い話題ではあったけれど、今回の放送で僕が最も驚かされたことは、以上のどれでもない。一方が語っているときに、ここぞとばかりにもう一方が飲み物や食事に夢中になる、その絶妙にして華麗なコンビネーションである。岩沢のノンアルコールビールはさっさと飲み干されていたし、山口県産ゆずサワーに、水炊きの出汁にと口をつける北川は、いつしかいい感じに表情も緩んできている。飲食しながらのインタビューというのも経験はあるが、これはテレビ番組の収録である。清々しいくらいに飲み食いして、きっちり語る、ほとんど音楽的と言ってもいいような姿だった。21年目のゆず、恐るべしである。(小池宏和)

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