LOVE LOVE LOVE @ 新代田FEVER

LOVE LOVE LOVE @ 新代田FEVER
2003年に滋賀県立大学で結成された3ピース・バンド:LOVE LOVE LOVEが、5月27日に発表したメジャー・デビュー作『ソライロノオト』の東名阪リリース・ツアーをスタートさせた。東名阪をサーキットする、『ソライロアワー』と題されたショート・ツアー。初日の新代田FEVERには乍東十四雄にtobaccojuiceと、なかなかキャラの濃い2組を招聘。面白い夜になりそうだ。

トップを担ったのは乍東十四雄。「サトウトシオ」と言ってもソロ・アーティストじゃないですよ? 個人名みたいなグループ名の、れっきとした5人組バンドなのだ(最近メンバーが増えて5人になったそう)。林家三平みたいな風貌で時に脱力的に、時にバタバタ暴れながら歌うボーカル・たかなしを筆頭に、何故か一人スーツ姿のオカッパ・ドラマー、そして紙袋(のようなもの)を被って黙々とグロッケンを奏でる女の子と、要はどこまでも飄々としてるんだけど、髭(HiGE)やSPARTA LOCALSに通ずるネジれたポップ性がかなり痛快。ポスト・パンク的にスパークする瞬間もあって、気をつけないとクセになっちゃいそうなバンドだ。こりゃなかなかの知能犯と見た!

続いては4月にコンセプト・カバー・アルバム『ゆめのうた』をリリースし、主催ライブ『バーチャル犬だよワンワンワン』を成功させたばかりのtobaccojuice。ゆったりとレイド・バックしたダビィなビートがフロアを心地よく揺らしていく。陽の降り注ぐ平原が目の前にぶわ〜っと広がっていくような感覚。とても開放的なムードだ。だが、2曲目以降は徐々にサウンドの刺激性を高めていって、トランシーにトリップしてしまうような場面も。ときおりブルース・ハープを吹き鳴らして、オーディエンス一人ひとりを見すえて歌う松本のボーカルがとても説得的。温かな高揚感に踊りださずにはいられない、身体中に滋養豊かなエネルギーを充填するような力強いステージだった。

時計の針が21時を指そうという頃、いよいよメイン・アクトがオン・ステージ。向かって左から寺井孝太(B/Vo)、澤本康平(Dr/Cho)浦山恭介(G/Cho)とトライアングル状に配置する。「どうもこんばんわ! LOVE LOVE LOVEです!」と寺井の第一声からライブはスタート。まだ6月30日の大阪と7月1日の名古屋公演を残しているのでセットリストは明かさないでおきますが、恰幅のいいドラムス・澤本の切れのいいビートを推進力としてテンポよくライブを転がしていくメンバー。ライブを観させてもらうのはこれが2回目で、その時の印象からもうちょっと脱力的なステージを予想していたのだけれど、いい意味で裏切られました。めちゃめちゃアグレッシブ! ブルーのベース弾きながら汗を飛び散らして歌う寺井の、懸命なボーカルにぐいぐい耳を奪われる。三声のコーラスも美しく、お客さんも一緒にシンガロングしたり、ダンサブルなビートにあわせて身体を揺らしたりして、思い思いにこの瞬間を楽しんでいる様子。とてもいいムードが生まれている。

ひと息ついて寺井、「今日はホントに来てくれてありがとうございます! 今日まで生きてて良かったなって思いました……」と何故かいきなり臨終モードでMC(「めっちゃしんみりしてしまってるやん」というギター・浦山のクールな突っ込みがナイスでした・笑)。MCに顕著だったけれど、メジャー・デビュー後初のツアーの初日というプレッシャーからか序盤は正直固さも目立ったが、中盤以降はしっかりアドバンテージを取ってライブを牽引。寺井も徐々に饒舌になっていくのだった――「最近思うんですけど、毎日何げなく生きてたなあって。もしかしたら明日は来ないかもしれないって思ったら、1分1秒を大切にしていかなあかんなって。今日のライブも、ステージ上がる前に1分1秒を大切にしていこうって思ったんですね。だから、今日は、スゴい楽しいです! そうやってひとつひとつ大切にしていったら楽しくなるんですよ、人生なんて」。アッパーな楽曲で畳み掛けた後半の勢いはバンドのさらなる躍進を予感させるパワーに溢れていたし、寺井の目には確かに以前にはなかった強い光が宿っていたように思う。

アンコールでは「普段はあまりしないんですけど」と、生涯3度目となるメンバー紹介から最後に「上京する頃に作った」という一曲を披露。個人的な上京当時がリアルに思い出されて、グッときたなあ。切なくもじんわりと幸せな感情に満たされるような、気持ちのいいフィナーレだった。大阪と名古屋公演に行かれる方、念のためハンカチーフのご用意を!(奥村明裕)
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