蓮沼2010@日比谷野外大音楽堂

蓮沼2010@日比谷野外大音楽堂
蓮沼2010@日比谷野外大音楽堂
蓮沼2010@日比谷野外大音楽堂
蓮沼2010@日比谷野外大音楽堂
都内最大級の無料の野外フェスとして、場所を変えながら毎年行われてきたイベント『蓮沼』が今年で10周年を迎えた。『蓮沼』の聖地である代々木公園野外ステージから今年は4年ぶりに日比谷野外大音楽堂へ戻り、ニューカマーからベテランまでジャンルも問わない全12組(シークレットゲストとして出演したNorthern19も含めて)が大集結した。

トップバッターで登場したのは3ピース・メロディック・パンクバンド、SECRET 7 LINE。超快晴の青空にどこまでも突き抜けていくような、エモーショナルなサウンドを開放していき、イベントの幕開けに相応しい爽快感を生み出していた。「バンドをやっている者としては夢のステージですよ!」と『蓮沼』初出演を喜びつつ、ライブ会場限定シングルから“Come back to you”を披露。あっという間に駆け抜けていった15分間だった。そんなスピード感から一転、「今ここにいるあなたに、今ここにいる僕の歌を。群馬からきました。秀吉です」という自己紹介からスタートした秀吉は、センチメンタルなメロディで野音を七色の虹のように鮮やかに染め上げていく。「大切な曲を1曲」と言って演奏した“ピノキオ”では《何度だって歌うから》と切実な想いが柿澤(Vo/G)の芯のある歌声に乗ってリスナーの心を確実に揺さぶっていった。そして、初々しいストレートな歌ものロックを届けてくれたOverTheDogs。ギター、ベース、ドラムという基本のバンド構成にピアノを加えた5人編成。ボーカルの恒吉の声は透明感がありながら、心をチクッと刺すような鋭さがあって、情感も豊かだ。ハンドマイクでステージを行き来しながら、「僕はずっと歌を歌うんです。これはもう決まったことなんです。僕は一生歌い続けるんです」といきなりの大宣言。最後にプレイされた“本当の未来は”は本当にスケールの大きい美しいナンバーで聴く者の琴線を揺さぶった。

It's a musicalの“the music makes me sick”をSEに始まったyour gold, my pinkのステージ。垣守(B)と北野(Dr)によるパーカッション&ドラムのリズムセッションに小塚(G/Vo)、板持(G/Vo)が打楽器を手にしてビートを刻みながらセッションに合流。そのまま“jelly beans are dancing, we are starting over”になだれ込んでいく。小塚と板持のハイトーンなツインボーカルが生み出す少年性とノイジーなギターサウンド、女性ドラマーだけど何気に筋肉質な4つ打ちビートが生み出すバンドのグルーヴは中毒性に溢れていた。いよいよ雲行きがあやしくなり、快晴の空は完全に雲で覆われてしまった。そんな曇り空を土臭いガレージロックで吹き飛ばし、野音の熱をぐいぐい上昇させたのはQUATTROだ。“Magic J”でいきなりフロアを踊らせ、“Stone”ではリズムに合わせてオーディエンスが飛び上がる。バンジョーの音色がアメリカの田舎の農道を思い起こさせるようなカントリーナンバー“Question #7”ですっかり陽気なモードに。ラストは岩本がタンバリン片手にハンドマイクで突っ走る“Hey”でステージも観客も渾然一体となって大団円を迎えた。続いて、4つ打ちのSEに乗って勢い登場したstack44。スリリングに疾走していく“U F O”“life is a circuit”の連発で、fin(Vo)の高音ボーカルが空を漂う雲を突き刺していくようだ。ステージの端から端まで縦横無尽に駆け寄り、エモーショナルに燃えあがっていく。「今年の夏の最後の最後の締めくくりのつもりで最高の思い出を作って帰れたらいいと思います!まだまだ行ける?一緒に踊りませんか?」という合図で“Dance Dance”“bless you”のダンス・チューンを投下。4つ打ちのビートに乗ってダンサブルに踊り狂う会場を見て「たまんないな、この一体感。みんなのやりたいように自由に楽しんでくれ!」と満足気の笑みを見せ、ラストは直球ストレートなメロディック・パンクナンバー“wake up! wake up!”でフィニッシュ。客席は左右に波打った拳の嵐で埋め尽くされていた。

いよいよイベントも中盤戦へ突入。後半戦のトップに現れたのは、なんとシークレット・ゲストとして登場したNorthern19の3人だ。突然の登場にオーディエンスもテンションが一気に上昇! “NEVER ENDING STORY”で勢いを加速させ、そのままの“CRAVE YOU”へとなだれ込む。一切減速することのないスピード感に客席もたまらず腕を力いっぱいに振りかざして応戦する。“BELIEVE SONG”ではストレートなメロディーを投げかけ、キラーチューン“MORATORIUM”では大合唱がこだまし、会場はこれ以上ないくらいの熱気に包まれた。続いては、リハでなぜかスキャットマン・ジョン“SCATMAN”のカバーを華麗に披露して、お客さんを踊らせていた[Champagne]。本番になってなんと海パン一丁でステージに現れたドラマー庄村が注目の的に。リズミカルなビートで先導する“Yeah Yeah Yeah”、シリアスモードで激しく攻めていく“For Freedom”で会場は一気に加熱していく。川上(Vo/G)が最初こそ「おかしいでしょ」と非難していた庄村の海パンを最後には「こいつの海パン正解だったかもしれない」と認めるくらいの熱いステージを展開。ラストの“city”で純粋無垢なファルセットと焦燥感を煽るようなひりひりとしたバンドサウンドをかき鳴らした。さらに分厚くなる曇天の下、リハ終わりのまま、SEもなしにライブを始めたのはplenty。これまで散々熱く盛り上がっていた会場をすっかり聴き入らせる空気に変えていき、plentyの音楽とオーディエンス一人ひとりという一対一の関係をすぐさま構築していく。ほとんどMCもなしに“拝啓。皆さま”“少年”“ボクのために歌う吟”と立て続けにプレイしていった。鋭い刃物のようにずぶずぶと深部まで刺さっていくような強靱なバンド・アンサンブルはますます説得力を増している。ラストは“枠”。焦燥感を煽るようなリズムと、目の前にある真実をまざまざと見せつけていくような鋭利、かつ無防備な言葉たちがオーディエンスの耳を射抜いていった。

plentyが終わった頃からいよいよ本格的に雨が降り出した。お客さんは頭にタオルを巻いたり、合羽を着たり、それぞれの雨対策をする中、B-DASHが登場! 3人の掛け合いと高速ビートで攻めていく“KIDS”“ホホイ”と畳みかけ、雨も風も軽く吹き飛ばしていく。「だんだん秋になって、涼しくなって、雨も降ってきたけど……新曲をやってみたいと思います」とまだタイトルも決まっていないという新曲を披露。初めて聴く人が多いはずなのに、イントロからいきなりハンドクラップに包まれる。しかも、途中“第九”をミックスするなどかなり挑戦的だ。雨と風にさらされるオーディエンスを労うようにラストはキラー・チューン“ちょ”をドロップ! 客席は雨なんか関係ない勢いで腕を突き上げ盛大に盛り上がった。メンバーがステージに姿を現す前から「シャカーラビッツ!パパンパパンパン(手拍子)!」というおなじみのコールが会場から沸き起こる中、“ROLLER COASTER -CubismoGraficoMix-”をSEに登場したSHAKALABBITS。UKIがサビを一人で歌いあげてから堰を切るように突入した“head-scissors”で会場のボルテージは一気に上昇。なんとSHAKALABBITSは8年ぶりの『蓮沼』出演だという。しかも、この日偶然にもベースのKINGが誕生日ということもあって、会場全員で“Happy Birthday”を歌うというサプライズもあった。「1日1日を、瞬間をどれだけ弾け飛び出すことができるか。今日ここにいるみんななら、じいちゃん、ばあちゃんになっても弾け飛びだせるんじゃないか」と“Soda”へと突入。今日のこの日、この瞬間をかみしめるように、雨が降りしきる中でもお構いなしに、ジャンプして弾け飛ぶオーディエンスは本当にキラキラしていた。

そして、いよいよ本日のトリ、TRICERATOPSの登場だ。肩慣らし的に3人それぞれが自由に音を鳴らしながら、ブルージーなセッションへと突入していく。「雨の中、最後まで残ってくれてありがとう!」という和田の挨拶ともにかき鳴らされたのは“GOING TO THE MOON”のギターイントロ。シンプルな3ピース編成ながらも圧倒のグルーヴを生み出し、オーディエンスの心を鷲掴みにしていく。リリースしたばかりのアルバム『WE ARE ONE』から“あのねBaby”“Happy Saddy Mountain”と立て続けに新曲もプレイ。ゆったりとした曲に入る前には即興のギターアドリブを挟んでみるなど、肩の力を抜いたリラックスムードが観る者を安心感で包み込む。クライマックスはありったけのエネルギーを注いでフロアを踊らせた“FUTURE FOLDER”、何度聞いても新鮮に響いて心も躍る“Raspberry”で締めくくり。デビューから十数年経ってもライブで欠かさずにプレイし、フロアのすべての人たちをこれだけ熱狂させる曲ってそうそうない。本当にすごいことだと思う。そして、鳴りやまないアンコールの拍手に「たくさんのバンドを代表してアンコールをやります!」と言って再びステージに現れてくれたTRICERATOPSのメンバー。「今日きてくれた全員にこの曲を捧げます」と言って最後は“僕らの一歩”で、来年の『蓮沼』へと繋いでいった。

最後にディスクガレージの主催者、河津氏が挨拶。「来年も無料でやります!」とのことなので、来年の開催も楽しみに待っていよう。(阿部英理子)
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