凛として時雨@Zepp Tokyo

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凛として時雨@Zepp Tokyo - all pics by 河本悠貴 (Yuki Kawamoto)all pics by 河本悠貴 (Yuki Kawamoto)
9 月22日に出たニューアルバム『still a Sigure virgin?』のリリース・ツアー『TOUR 2010 “VIRGIN KILLER”』のセミファイナル。ファイナル(12月4日沖縄桜坂セントラル)が残っているので、セットリストはまだ書けないけど、とりあえず『still a Sigure virgin?』9曲のうち、やらなかったの“シャンディ”のみでした。ほかの8曲はやりました。当然、過去の代表曲たちもやりました。

で。すさまじかった。ライブを観るたびにいつもいつも「すさまじいなあ」と思うけど、さらに、過去にないくらいすさまじいことになっていた。すごい音圧。すごいグルーヴ。台風の時のニュース番組で、悪天候の港とかに記者が行って、暴風雨で吹き飛ばされそうになりながら「大変な雨風です」とかってレポートしている、音によってこっちがああいう状態になっている感じだった、頭から最後まで。
で。新しかった。ライブを観るたびに、あと新しい音源を聴くたびに、いつもいつも「新しいなあ、これ」と思うけど、やはり、過去にないくらい新しいことになっていた。
ロックって、もうこれだけ歴史を重ねてきた音楽スタイルなので、当然、伝統芸能的な部分もある。なので、優れたバンドというのはどれも、「ここ新しいなあ、オリジナルだよなあ」という要素と、「○○好きなんだろうなあ」とか「××がルーツなんだろうなあ」と思わせる要素の、両方を持っている。
でも、時雨の「優れ方」には、前者はあっても後者がないのだ。それまでのロックの歴史の文脈とは全然違うところから現れたような、急に振ってわいたような、宇宙から地球に落ちてきたような、そんな突然感。かといって、やはり歌とギターとベースとドラムで作られている音楽なわけであって、オルタナとかグランジとかパンクとか、UKとかUSとかハードコアとか、メタルとかスラッシュとかピエール中野のX JAPAN YOSHIKIとか、そういうような音楽たちを吸収してきたことは、聴いてとれるんだけど、それらの足し算や掛け算とは違うところにボカーンと生まれたような、「ああ、これとこれとこれを食ったからこうなったのか」ではない、「これとこれとこれを食って、で、なんでそうなるの?」みたいな、こっちの想像や予測を超えたものになっているのだ。
いったい何をどうしたら、こんな音が生まれるんだろう。こんな発想ができるんだろう。こんなこと思いつくんだろう。いつもそう思う。今日もそう思った。

ただし。だから共感できないかというと、まったく逆だ。すごく知っている。すごくわかる。「これ、俺じゃん」とすら思う。何を。この音が表している「頭の中の感じ」をだ。爆音だけど実はあんまり歪んでいないギター、片時も止まらずうねり続けるベース、止まらない土石流みたいなドラム、悲鳴のような、いや「ような」じゃないな、もう悲鳴そのものみたいなTKと345のボーカル、それらによって音楽という形になっているこれ、自分の頭の中に、確実にある。今よりも子どもの頃に、より強くあったようにも思えるけど、でも今でも確実にある。
突然ですが、僕は小さい頃、身体が弱くて、ほぼ毎日熱を出しているような子どもだったんだけど、具合が悪いと必ず見る夢があった。それが映像とかストーリーとかではなく、なんというか「イメージ」の夢だった。とてもか弱くて、はかなくて、華奢なものが、すんごいごつくて重たくて暴力的なものに、ぐっしゃあああってつぶされる、みたいなイメージです。これ、すんごいイヤな感じで、そのたびに汗びっしょりで目を覚ましていた。今でも体調を崩すと、この夢を見る。
その夢の感じに、なんかすごく似ている、時雨の音は。というか、音楽に限らず、その僕の中にある感じを表している表現に、はじめて出会った気がする。そろそろ「おまえの夢のことなんか知らないよ」と言われそうですが、えーと、つまり、時雨の音楽が表している感情や感覚のどこを、そんなに「これ知ってる、わかる」と思うのかを、Zepp Tokyoから帰ってくる電車の中で延々と考えたら、私の場合、そういう答えになりました。
これ、私だけだと思います。ただ、そんなふうに、聴く人によって、さまざまな「自分だけ」なひっかかりかたをする、しかもその人にとって「その感じを音楽で表してくれる人にはじめて会った」というのが、凛として時雨なんだ、と思います。
だから、あなたも、すごくわかると思う。ただ、そのわかりかた、あなただけだと思う。それが凛として時雨だ。という解釈はどうでしょうか。ちょっと無理やりな気もしないでもないですが、これぐらいしか言い表しようがない、この圧倒的な新しさは。

最後の方で1回だけ、TKがちょっとしゃべって、345がグッズの紹介をする。というのが、時雨のライブの定番ですが、そこでTK、春に時雨として初めてのホールツアーを行うことと、東京公演は国際フォーラムで行うことを発表しました。詳しくはこちら。→ http://ro69.jp/news/detail/43517
なお、「前半コール&レスポンス、後半ドラムソロ」の恒例ピエール中野コーナー、「ランランルー!」「ランランルー!」「セイ、バーイブス!」「バーイブス!」の、毎回おなじみのやつもありましたが、某アーティストのライブを観て取り入れたらしきものとか、ちょっと前にあった某テレビ番組を観て思い出したらしきものとか、今回ならではの新ネタもいくつかありました。いずれも、大笑いしました。沖縄でもやるかもしれないので、書かないでおきますが。沖縄のみなさん、お楽しみに。って、やんないかもしれませんが。(兵庫慎司)
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