ストレイテナー×smorgas @ Zepp Tokyo

1月12日に新曲1曲を含むセルフカバーアルバム『STOUT』をリリースしたストレイテナーが、smorgas、MO’SOME TONEBENDER、MONGOL800、white white sisters、COMEBACK MY DAUGHTERS、the HIATUS、THE BACK HORNらを公演ごとに招いて対バン形式で行う全国ツアー「tour STOUT」。初日のゲストはsmorgas。約2年半の活動休止期間を経て、昨秋オリジナルメンバーでの復活を果たした彼らとストレイテナーのガチンコ勝負への期待感で、開演前のフロアにはムンムンとした熱気が立ち込めている。
19:10、暗転。高らかに拳を突き上げたSENSHO1500(G)を先頭に、アイニ(MC)、来門(MC)、あらきゆうこ(Dr)、河辺真(B)がステージに現れると、どよめき交じりの歓声が沸き上がる。そして“ワイバーン”へ突入。アッパーで攻撃的なミクスチャー・サウンドが場内の熱をぐいぐいと上げていく。来門は観客を激しくアジテートしながら、アイニは観客一人一人の胸に問いかけるように、吸引力ある言葉を放っていく。それだけでフロアを掌握するには十分すぎるほどだけど、さらにぶっ飛ばされたのはハンパない音!SENSHO1500の獰猛なリフと河辺の分厚いビートが場内の空気をバリバリと切り裂いていく。あらきゆうこのドラムに至っては、破壊力がありすぎて隕石が落ちてくるみたいだった。その凄まじいエネルギーに引っ張られて、フロアでは早くもダイブが勃発。これぞ、約8年ぶりに集結したオリジナルメンバーの実力と言うべきか。「今やっている曲は12・13年前の曲なんだ。ハンパないでしょ?」と話すアイニも、なんだかとても誇らしげだった。

さらに圧巻だったのは、スローテンポな楽曲がプレイされた中盤のセクション。サウンドの攻撃性や性急さに頼らない楽曲であるからこそ、バンドそのものが持つへヴィさが剥き出しになっていた。どっしりとしたリズムの上で、切っ先鋭い言葉を投げかける来門とアイニ。その殺傷力たるや、アッパーな楽曲以上に聴く者の胸を抉るものがあった。もちろん、キラー・チューンを矢継ぎ早に叩きつけたクライマックスもハンパない。ヘヴィーな音と言葉が真正面からぶつかり合い、フロアをカオティックな熱狂空間に導いていくいくさまは、とにかくスリリングだった。最後のMCで「これからもぶっと飛ばしていくから。新曲もつくっていくから期待しててね」と言っていた来門。「この5人で作る新曲が早く聴きたい!」と、心から思った観客はきっと私だけではないはずだ。
そして20:21、いよいよストレイテナーが登場。ライブの幕開けを高らかに告げるステージ上の無数のストロボ・ライトが点滅し、鋭く研ぎ澄まされたサウンドの閃光が放たれる。ツアー初日のため全体のセットリストは明かせないが、しょっぱなからアッパー・チューンの乱れ打ち。曲のイントロが鳴らされるたびに、フロアは大きな歓声に包まれ、オイ・コールが沸き起こる。腰をくねらせながらグルーヴィーなベースを鳴らすひなっち、前傾姿勢で切迫したビートを刻むシンペイ、淡々とギターをかき鳴らす大山、ときにアグレッシヴにシャウトしながら情感豊かな歌声を届けるホリエ。そんな4人がガップリ四つに組み合って鳴らすアンサンブルは、アスリートの筋肉のように引き締まっていて、かたときも目を離せない緊張感がある。元々華のあるバンドではあるけれど、ここにきてグッと輝きを増している印象だ。

そして何より驚いたのは、すべての曲があらゆる意味で深化していたこと。“BERSERKER TUNE”のようなアグレッシヴな楽曲はとにかく熱く、“TODAY”のような柔らかな楽曲は深く大きく。つまり、楽曲ごとの熱さと厚さが格段に増して、これまで以上に奥行きのある世界観が描かれているように感じたのだ。緻密なアンサンブルでドラマティックな情景を浮かび上がらせるストレイテナーのロックは、その端正さゆえに、演奏力如何では逆に薄っぺらく思えたり、モロく思えたりする危険性を孕んでいる。現にホリエとシンペイの2人だけだった頃はそういう事実が否めなかったし、かつてのライブでは、その演奏が危なっかしく思えることも多々あった。しかし、今日のテナーは明らかに違う。

もちろんだいぶ前から風格すら感じさせるバンドに成長していたけれど、過去の曲が多数プレイされたことにより、バンドの確かな成長をより力強く突きつけるライブになっていたのだ。わかりやすいメロディやノリやすい展開に逃げるのではなく、自らの信じるロックを愚直に鍛え上げることで、デッカいバンドに成長してきたストレイテナー。そのタフでひたむきな精神が、天井を突き破らんばかりのダイナミズムが次々と訪れるフロアの上で高らかに鳴っていた。

ちなみに新曲も2曲披露された。一方は地を這うような疾走感が全開になった曲。もう一方は噴火寸前のマグマが沸々と煮えたぎるような曲。どちらもテナーらしい冷めた空気を纏いながら、リスナーの心にダイレクトに刺さってくる度合いが今までに比べて圧倒的に大きい。ここからまた、ストレイテナーの信じるロックは大きく大きく飛躍しそうだ。(齋藤美穂)