グループ魂 @ 日本武道館

pics by 緒車寿一
ニュー・アルバム『1!2!3!4!』のリリース・ツアー『客VS俺! どっちがスケベか競争しようか15番勝負』全15本のファイナル。「15番勝負」のファイナルなので、「決勝戦」という位置付け。で、昨年5月17日の渋谷C.C.Lemonホールからスタートした(その時のライブレポはこちら → http://ro69.jp/live/detail/34903 )、バンド結成15周年のいろんな活動の集大成、というかしめくくり。以上のような意味合いであるところの、グループ魂初めての日本武道館でした。

先に書いてしまいますが、という趣旨のライブだったので、2回目のアンコールの頭に、港カヲル仕切りで、「メンバーひとりずつ笑いなしでまじめにあいさつ」がありました。カヲルさんと、1回目のアンコールの“大江戸コールアンドレスポンス”で中村屋華左衛門に扮して歌舞伎のフルメイクをしたので、バックステージでそれを落としていた破壊を除く5人が、順番にお客さんに感謝の意をのべつつMC。「みなさんが職場や学校で、胸を張って『グループ魂のファンです』って言えるようなバンドには、これからも、なりません」というセリフを吐きつつも感動と感慨が露骨に顔に出ていた暴動。グループ魂のおかげで、『笑点』にも『紅白』にも出られて、今、ここ武道館のステージに立っている。僕は、28歳でこの世界に入った、それまでは普通に働いていた。これ、すごくないですか? という話をしたあと、「ほんと、ありがとうございます」と暴動にお礼を言ったバイト君(ちなみに大人計画に入る前は写植屋さん)。おもしろいフロントの人たちの後ろから、ほんとにキラキラした目でそれを観ているお客さんを見るのが本当にうれしい、みたいなグッとくるMCを決めた小園。で、前半、「始まる前にソデから満員の客席を見て緊張で吐きそうになっていた」と暴動にばらされた石鹸。もう号泣、しゃべりながら。石鹸のあと、つまりシメになった遅刻のMCは、妙に真面目で淡々としたものでしたが、その流れで次にやったのが、グループ魂のすべての曲の中で、最も、というか唯一の「シリアスにも聴ける曲」、“べろべろ”。超満員の武道館、ステージの上も下も、感動に包まれた瞬間でした。僕はグループ魂のすべてを知ってるわけじゃないが、おそらく、バンド史上初めての光景だったんじゃないかと思います。

それ以外はもうとにかく、頭から最後まで爆笑。というのはグループ魂のライブはいつもだけど、片時もダレることなく、ひたすらスピーディーに、濃密に、もう次から次へとネタや企画や段取りが出てきて、ほんとに3時間半があっという間だった。というのが、ほんとにすばらしかった。というか、おもしろかった、とにかく。
過去、もっとネタがてんこもりなライブも、もっと豪華なライブも、もっとトゥーマッチなライブもグループ魂はやってきたが、今回のこれが、最も、観る人にとってうれしいライブだったと思う。

セットリストは以下。基本的に、『客VS俺! どっちがスケベか競争しようか15番勝負』というタイトルに沿った選曲で、下ネタ方面の曲多め、というか全体に下ネタだらけでした。

オープニング:港カヲル登場~都会の山賊
1.ずるむケーションブレイクダウン
2.アイサツはハイセツよりタイセツ
3.くるま売りたいな~男、腐りかけ1
4.High School
5.だだだ~男、腐りかけ2
6.職務質問
7.オクサーヌ
8.沖縄行きたい
9.押忍! 手まん部
10.くん兄さんVSアン姉さん
11.君にジュースを買ってあげる❤
~男、腐りかけ作詞コンテスト その1 ゲスト:増子直純(怒髪天)~
12. IN
13.SEARCH&片思い
~男、腐りかけ作詞コンテスト その2 ゲスト:ピエール瀧~
14.ともかず(バイト君40歳記念ソング)
15.パンク仲間はずれ
16.アイブラユー
~男、腐りかけ作詞コンテスト その3&4 ゲスト:夏木マリ・荒川良々~
17.メドレー:本田博太郎~欧陽菲菲~竹内力~チャーのフェンダー~中村梅雀
18.ペニスJAPAN
19.Over 30 Do the 魂
20.俺たちに品はない
アンコール1
21.ライムサワー:ライムサワーのテーマ
22.しにものぐるい
23.アンモナイト音頭
24.大江戸コールアンドレスポンス
25.就職しやがれ
アンコール2
26.べろべろ
27.TMC
28.グループ魂のテーマ
エンディング:港カヲルの“君が代”など


あと、トピックいくつか箇条書きにします。

・客電が落ちたあと、最初に、1995年・浅草の路上での初ライブの映像がスタート。そこから現在まで、グループ魂の歴史を振り返る過去の映像が流れる。

・続いてオープニングは、おなじみ港カヲルのひとりしゃべり。カヲルさん、頭モヒカン&ソデなし鋲打ちライダーズ革ジャンの己のいでたちを、パンクなつもりなんだけどスタイリストががんばればがんばるほどプロレスラーに近づいていく、と愚痴りながら、頭上のステージの照明が女性器シンボルマークの形になっていることなどを説明。恒例の「おっぱい元気? 元気があればなんでもできる」コールアンドレスポンス、今回の下の句は、「元気があれば乳首で書類に判が押せる、結婚、離婚、結婚、離婚、連帯保証人、自己破産、殺してー!」でした。で、“都会の山賊”をカラオケで熱唱、「ファッションヘルス武道館は今日もどスケベなヘルス嬢でいっぱいだー!」と叫び、氷室京介のポーズでシメる。
なお、モヒカンになったのは、このツアーからではなく、11月・12月にやっていた大人計画の本公演『母を逃がす』でのカヲルさんの役が、「刑務所から帰ってきたらモヒカンの神父になっていた兄」だったからです。

・2曲目が終わったあと、観にきていた三宅肇=石鹸こと三宅弘城の父、MCでいじられ、1階席の正面に夫婦で座っているところをカメラでぬかれる。その後も、ことあるごとにいじられていました。

・5曲目が終わったあと、暴動が報告。石鹸が歌う5曲目で、破壊はいっぺんはけて次の準備をするはずなのに、そのままステージでお客さんをあおったりしていて、はけるのが遅れたので、ここの僕のMC、長くなると思います、と。客席、大笑い。戻ってきた破壊、「うっかり、お祭り気分になっちゃって」とコメント、また大笑い。そのあと「男、腐りかけ 作詞コンテスト その2」のところでも、「興奮しちゃって」またはけるの忘れてました。

・その「男、腐りかけ 作詞コンテスト」というのは、サイト上で“男、腐りかけ”の作詞というか替え歌を募集し、優秀な作品14本をツアー各地で石鹸が歌ってきて、ここ武道館でその中から優勝作品を決める、というもの。審査員は石鹸。セットリストに書かれているタイミングで、ゲストボーカルが登場して歌いました。3位は金沢で発表された作品で、歌うは怒髪天増子さん、2位は名古屋でピエール瀧、審査員特別賞は熊本でなんと夏木マリ(本物。歌い終わってひとこともしゃべらず去る。カヲルさん大興奮)。そして1位:福岡で歌われた曲、は、誰かと思ったら、和田アキ子に扮した荒川良々でした。なお、瀧さん、破壊のいつもの衣裳(革ジャンに七部丈黒スパッツにブーツ)を模したコスプレで、頭にはジャイアンツのキャップ。歌の途中でかっこよく譜面台をふっとばしたが、後半歌詞がわからなくなり、「歌詞、歌詞!」と叫んでローディーを慌てさせておられました。で、歌い終わって、「愚かに鈍いと書いて愚鈍です!」と名乗り、「さあ次の曲いこうか、“アナーキー・イン・ザ・JK”」ってむちゃぶりして、メンバーを困らせておられました。

・8曲目と9曲目の間に、“ストイックマン”というコントみたいなのあり。カヲルさんがストイックマン、バイト君がその連れの子どもに扮して、いろんなことをがまんしては「ストイック!」と叫ぶ、というもの。カヲルさん曰く、そもそもこれ、アルバムに入れる用に録ったのに、ボツになったそうです。コントの作者=クドカン曰く、ボツの理由は、そのコント、ストイックマンが子どもをボコボコにするというオチであり、「幼児虐待はちょっと……」と、レコード会社からストップがかかったから、だそうです。ならば、と、そのあとのシングル“だだだ”のカップリングで入れようと思ったんだけど、「子ども向けのアニメのタイアップが付いてる曲なのに、カップリングでこれはありえない」と、またボツになったそうです。
そのボツになった“ストイックマン”、本編とアンコールの間に、流れました。

・14曲目はバイト君が歌う曲。石川遼のコスプレで登場しました。

・カヲルさんの衣裳替えは、全部で7回くらい。前述のソデなし革ジャン、女子高生(皇居のあたりで売春やってるという設定。通り名は「ナマズ」、1回800円だそうです)、マイケル・ジャクソンのダンサー(当然マイケルは破壊。“職務質問”でのことです)、ストイックマン(のタイツ)、銀タキシード、ヒモパン一丁、アンコールでまた別のタイツ、などなど。もっとあった気がするが、忘れました。

・1回目のアンコールのライムサワーの説明は割愛しますが(わかりますよね? ご存じない方は、このサイト内でもあちこちで書かれてきたので各自検索)、“しにものぐるい”は、石鹸がカホン、小園がアコギ、遅刻がサポートメンバーでギター、カヲルさんがボーカルのユッコ(ゴリラ)に扮して、アルバムに入ってるあの曲を歌いました。で、それに続いて、いわき兄弟の“アンモナイト音頭”を、破壊以外のメンバーでアンプラグドで演奏。

・その時、なんで破壊がいなかったかというと、前述の通り、その次の“大江戸コースアンドレスポンス”のために、歌舞伎のフルメイク(びっしりクマドリして髪の毛がカニみたいになったあれ)をしていたからでした。“大江戸コースアンドレスポンス”、今回ももう、胃腸に支障をきたしそうなくらい、笑いました。

あと、まだまだほんといろいろあったけど、キリがないので割愛します。最後は、全員でフロントに出て三々七拍子、続いてカヲルさんの「『ウルトラマーン、エイティ!』のひとことで終わる“君が代”斉唱」で、3時間半の舞台は、幕を閉じました。

とにかく、すばらしくおもしろかった。DVD化希望。って、言わなくても出ると思うけど。本当におつかれさまでした、メンバーのみなさん、スタッフのみなさん。(兵庫慎司)