LIVE SPEEDSTAR EXPRESS @ 渋谷AX

一合一会。千載一遇。とにかく、贅沢な夜だった。このカップリングを見ただけで、「おおおおっ!」とロック・ファンなら誰しも唸るに違いないが、そんな想像を超えたいくつもの驚きと感動があった。

まずは18:30を過ぎた頃、場内アナウンスのカゲアナの声を聴いた瞬間、……あれっ!? Coccoの声! Coccが非常口や撮影禁止の注意事項をたどたどしく読み上げている。この手作りの温かい、そして初々しい空気感こそ、このイベントの趣旨そのものだった。

この一夜限りのスペシャル・コラボレートライブは、UA、くるり、Cocco、斉藤和義、つじあやの、THE BACK HORN、髭(HiGE)、風味堂、レミオロメンなどなどが所属するレーベル、スピードスターレコーズの、15周年記念イベントとして企画された。その一環として、コンピレーションCDのリリース、新人オーディションも同時に行っている。

そうした流れもあってか、最初に今年デビューのニューカマーが登場。まずは369のラップで会場を盛り上げ、CHERRY LYDERはプロデューサー阿部義晴(元ユニコーン)率いるバック・バンドの演奏で元気にはじけまくる。

転換中、所属アーティストが15歳の時の写真を披露し、その時に「初体験」したことを語るコメント映像がずーっと流れていて、鮎川誠のカッコよすぎるロック少年っぷりやTHE BACK HORN・菅波栄純の入学式当日の微妙な表情、Coccoの制服姿など、ついつい面白くてトイレに行くのも我慢してしまう。
 
そして最初のセッション、つじあやの×ザ・バックホーン山田将司が登場。KYONのピアノをバックに、“ゆびきり”“夢の花”というそれぞれの持ち歌、フィッシュマンズのカバー“いかれたBaby”。そして、「事務所も同じなのに、リハーサルでも話しが続かなかった」というぎこちないふたりが、なんと書き下ろしの新曲“15歳”まで披露してくれた。それぞれの思春期の思いが痛いほど詰まった名曲だ。轟音サウンドから離脱した山田のヴォーカルは、こんなに柔らかで優しかったのか、と新鮮な驚き。

ここでいきなりスペシャル・ゲストとしてハラフウミ(原由子×風味堂)がオーケストラとともに飛び入り。「最初で最後のライヴです」と言いながら、“オレンジジュース”、そして 11月17日リリースのシングル“夢を誓った木の下で”を披露。サプライズに会場が沸く。

続いて、お待ちかね、こっこちゃんとしげるくん。会場は一気に熱くなる。白いワンピース、赤い花を髪に挿したCoccoの「清らかな心で行ってみましょう!」という声で、 “エーデルワイス”が始まった。岸田繁のアコースティック・ギター1本の素朴な歌。なんて素敵な曲なんだろう! 学校で習った時には気づかなかった曲の深さに驚愕し、続くCoccoのヒットシングル“強く儚い者たち”で圧巻。なごやかなMCを交えながら新曲も2曲も披露してくれた。

この日のトリを飾るのはUA×細野晴臣。「僕はスピードスターの専属ではないんだけど。なんでいるんでしょう?」と言いながら5曲も演奏してくれた。新作『FLYING SAUCER 1947』でUAと共演した“夢見る約束”はもちろんのこと、はっぴぃえんどの“夏なんです”や“ありがとう”を生の声で聴けるとはただただ至福。“アイウォイワイアオウ”の間奏で、UAが突然“ライディーン”のサビをドラマティックに歌い始めた時は、うわあ!と喜びの声があがった。

クセの強いアーティストたちばかりなので、意外と気づきづらいのだが、スピードスターが「よい歌」へのこだわりを持ちつづけてきたレーベルだということが、ひしひしと伝わってきた。と同時に、そんな「歌が生まれる瞬間」を新曲やセッションで共有できた喜びが会場を満たしていた。(井上貴子)
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