Chara @ 渋谷公会堂

Chara @ 渋谷公会堂

Chara @ 渋谷公会堂
デビュー20周年を迎えた2011年は、近年のユニバーサルミュージックでのキャリアを振り返るベスト盤『Very Special』とニュー・アルバムとなる『Dark Candy』、さらには東日本大震災を踏まえて制作された配信シングルや、『Dark Candy』と対になるという作風のミニ・アルバム『うたかた』まで、怒濤のリリース・ラッシュを繰り広げたChara。11月下旬から約1ヶ月、14公演に渡って展開してきた全国ツアーは、東京・渋谷公会堂でのファイナルによって締め括られようとしていた。暗転した場内にミラー・ボールがゆっくりと煌めき、ツアー・タイトルを踏まえたロマンチックかつソウルフルなオープニングSEはデブラ・ロウズの“Very Special”。バッキングを務めるオーロラバンドの面々、そして照明を浴びるCharaに、客席からの大歓声が巻き起こるのだった。ファンキーなリズムとともに繰り出される1曲目は、アルバム『Dark Candy』のオープナーでもある“カウントダウン”だ。ステージ上は、最も上手寄りと下手寄りの位置にそれぞれドラム・セットが置かれたツイン・ドラム編成。そして、それ以上に目を引くのがCharaの出で立ちである。フリンジ状にひらひらと揺れるショールをマントのようにはためかせ、その姿はガーリーなのにゴージャスに着飾った女王のようでもあり、また真っ白い尾を振り回す動物のようでもある。ステージ上の一点から発せられる「Yeah! Yeah! Yeah!!」のシャウトが、まるで放射状の模様を場内に描き出してしまうようだ。続いては、キュートなソウル・ナンバー“ゆらしたがる”へ。『Dark Candy』の曲順そのままに、しかし今にも破裂せんばかりの勢いでオーディエンスを力強く巻き込んでゆく序盤である。「オー、よく来てくれましたありがとう。今日は『Very Special』ということで、嬉しいです。はしゃぎたいね。いつもはしゃいでるけど? 足りないのね(笑)」。そんなふうにさらりと人懐っこいコミュニケーションをこなしてしまう姿も変わらない。ステージ上手でドラム・プレイとマニピュレーション、ハーモニー・ヴォーカルまでを一手に担うmabanuaとともにドリーミーな“永遠の詩”を披露し、そしてキーコこと山崎透(Key.)による華々しいシンセ・サウンドが飛び交う“Toy Soldier”と、新旧の頼もしいバック・アップを受けながらめくるめくCharaワールドが繰り広げられてゆくのだった。mabanuaはこれまで、ヒップ・ホップ畑での活躍が目立っていた人だが、Charaのステージでの活躍ぶりにも目を見張るものがある。Chara自身を含めてそれぞれが強烈な個性の持ち主であるにもかかわらず、そのキャリアの中で多くの才能あふれるミュージシャンと素晴らしい化学反応を生み出し続けてきたことが、音楽を通じて発揮されるCharaの人間力の素晴らしさでもあるだろう。「あたしね、感じるアルバムを作りたかったの。『うたかた』っていうんだけど。考えすぎると感じられないじゃん? だからときどき、目を瞑って聴いてもいいのよ」。この日のステージで『うたかた』の収録曲が披露されるのはもう少し後のことになるが、あの音数は控え目なのに極めて刺激的で、感覚を開いてくれる音楽の魔法に満ちた『うたかた』のフィーリングは、ステージ全編を通して受け止められていた。名越由貴夫のギター音響は瞬間に強いインパクトを残し、白根賢一とmabanuaのツイン・ドラムはビートを叩きまくるというよりも音色で楽曲を彩るようにプレイされる。そして加藤哉子(Cho.)やCurly Giraffeこと高桑圭(B.)に白根・mabanuaらも加わる甘美で奥深いヴォーカルのハーモニー・ワーク。その真ん中にあのCharaの、Charaでしかない歌声が響いているのである。フレッシュな要素を持ち込みながら強い信頼で結びついたその音楽の力は、触れるもののすぐそばに寄り添って感覚を「あっち側」へと連れ去ってしまう、一歩引いて見ればアートの最もヤバい効力を備えてしまっているものなのだ。
Chara @ 渋谷公会堂
Chara @ 渋谷公会堂
曲間で常にオーディエンスに呼びかけられているCharaは、口に水を含んでいる間にも「んー!」と律儀に応じてしまう。こんなにも親しみやすいアイコンが、ヤバいアートの入り口として機能してしまっているのである。今度は自らがピアノを奏でつつ歌う“ここにいて”、そして『うたかた』から“真夜中の約束”を披露すると、「今日、初めて来たって人いる? けっこういますね。いらっしゃい! 20年目にして会えたねって感じ? あたしの声、ちゃんと聴こえる? 友達と電話してると聴きづらいとか言われるんだけど、ちゃんと集中して聴けば分かりますから。音楽って不思議よねー。でも声に集中しすぎるとバンドのアンサンブルが聴けなくなるから、6割ぐらい分かればいいです(笑)……こうやって喋ると落ち着きます。いつもどおり」。そんなことをしれっと告げてしまう。こうして人々を繋ぎ止めてきたからこそ、Charaの20年はあるのだ。今のオーロラバンドでゆったりと、慣れ親しんだメロディはそのまま、行間にグルーヴが宿るジェントルなアレンジの“タイムマシーン”や“Swallowtail Butterfly ~あいのうた~”といった往年の名曲群も披露される。その間には「そう、わたし20周年なの! いくつなんだわたし。我が家では、ママは36歳、永遠の36歳って言ってます。中途半端じゃない? とか長女にはツッコまれてますけど、けっこう気に入ってます」というMCも飛び出した。“ミルク”での白根は素手による語るようなドラム・プレイも見せてくれる。そしてオーロラバンドの面々によるソロや歌も交えたメンバー紹介を経たのちには、“FANTASY”に続く90年代のヒット曲メドレーだ。メンバー紹介やメドレーといった、半ばライヴのお約束と言えるひとコマにおいても、たっぷりとエンターテインメント性や執拗にシンガロングを求めるインタラクティヴ性を詰め込む。すべてにコミュニケーションの必然が受け止められる、そんな展開だ。バンドによる“しましまのバンビ”の美し過ぎるハーモニーに聴き惚れていると「あら? 届いてないかしら?」とChara。そんなの、釘付けになってしまうに決まっているだろう。多くのオーディエンスが我に返るように歌い出すさまが可笑しかった。ピアノで切々と歌われる“わかんない”から、一転して賑々しくソウルフルに弾ける“やさしい気持ち”へ。「役割がある、っていいですね。Charaの役割はCharaだもんね。音楽しか出来ないけど、音楽が出来るって幸せだな、って思った年でした」。本編終盤に、東日本大震災のチャリティー・シングルとしてリリースされた“伝言”の、ひときわメッセージ性の強い歌が届けられる。優しい包容力と猛々しい生命力を、同時にいまにも壊れてしまいそうな脆い少女性を宿したまま生きてゆく、アンビバレントかつ両極端だからこそアートとしてリアルなCharaの歌声。それがこの上ない形で、2011年末に響き渡る。「〇〇の役割は〇〇だもんね」。そんなふうに言える人は、確かに幸福だ。Charaの20年は、Charaであり続けることだった。本編最後の“才能の杖”へと至るクライマックスは、とても気高く、美しいものであった。
Chara @ 渋谷公会堂
アンコールは、黄色いネコの着ぐるみを被ったmabanuaが姿を現し、ピンクのクマの着ぐるみ姿の白根がCharaをエスコートして再登場。なんと、オーロラバンドが並んで振り付きで踊る“Rachel”だ。この凄腕バンドの面々が控え目な音数を絶妙に交錯させるというアレンジの本編も贅沢だったけれど、ここでは遂に「演奏しない」という究極の贅沢になってしまっていて笑える。と、ここでクマ(白根)がCharaの20周年を祝うケーキを運び込むサプライズが。他のメンバーはクラッカーを打ち鳴らして、オーディエンスも大喝采を贈る。さすがに感極まったかChara、「……これからも愛してください、Charaを。じゃあお替わり、最後にみんなと歌いたいと思います!」と少しだけ声を振るわせながら笑顔で語り、“世界”の大団円へと向かうのだった。20周年を締め括るワンマンでありながら、その年に発表した楽曲をたっぷりと披露したステージ。その新しい楽曲たちが、「CharaはCharaであることの魅力」をひたすらに浮き立たせ、物語っていた。女子フィギュアの浅田真央ではないが、「いつもどおり」ということの凄さと素晴らしさを思い知らされたパフォーマンスであった。キューンレコードへの移籍が決まっているCharaは来年、新天地からどんな表現を届けてくれるのだろう。また、12/29、彼女はCOUNTDOWN JAPAN 11/12のGALAXY STAGEへの出演を予定しているので、こちらもぜひお楽しみに。(小池宏和) セット・リスト
01:カウントダウン
02:ゆらしたがる
03:永遠の詩
04:Toy Soldier
05:Dark Candy
06:ここにいて
07:真夜中の約束
08:タイムマシーン
09:月と甘い涙
10:Swallowtail Butterfly ~あいのうた~
11:ミルク
12:メドレー(FANTASY~HAPPY TOY~heaven~あたしなんで抱きしめたいんだろう?~DUCA〜しましまのバンビ~Junior Sweet~恋をした)
13:わかんない
14:やさしい気持ち
15:伝言
16:才能の杖
EN-1:Rachel
EN-2:世界
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on