MONOBRIGHT @ 下北沢 CLUB Que

桃の節句はMOMONOの日! ということで、昨年に引き続き下北沢CLUB Queで行われたMONOBRIGHT企画にして2012年初ワンマン。前回はファン投票を反映した選曲が行われたり、PVで共演した吉高由里子がサプライズで登場したのだけれど、桃の節句に因んで『五人囃子』と銘打たれた今回のステージは、なんと全曲新曲ライヴ。「大概のバンドマンに言えることなんだけど、新曲って緊張するんだ」と零していた桃野だが、すこぶるノリのいいオーディエンスの好サポートも手伝って、すわ新作ツアーか、と思えてしまうようなパフォーマンスが繰り広げられた。

おなじみのドット柄腕章付きモノトーン衣装で揃えた五人囃子が登場し、ヒダカによる80’sマナーの波形がけたたましく響き渡るシンセ・フレーズと共に繰り出されるナンバーは“let it ride”。音楽に人々を繋ぎ止めんとする意志の歌が込められた、骨太で力強いオープニングだ。続いて、捩れたメロディを松下のパンキッシュなギター・リフが捩じ伏せて走る“ジャイアントステップ”。モニターに乗り上って、桃野も熱いギター・ソロを繰り出している。

桃野:「全曲新曲ライヴってことで、いいの? こんなに(お客さん)来ちゃってるけど。みんな知らないからね!?」
ヒダカ「もしかしたらリリースもされないかも知れないからね」
桃野:「そうだよ、ただ新曲やるってだけだからね!」

ごもっともな両者の掛け合いが挟み込まれるものの、華々しいディスコ・ロック・チューン“アンチヴァイオレントセクシー”ではクラップ&スウェイで更に上がりまくるオーディエンス。ゴリッとした桃野リフとドタバタした瀧谷のビートが取っ組み合い、焦燥感に満ちた歌詞が投げ掛けられる“未来のデストロイ”は、MONOBRIGHTの悶々とした男臭さが匂い立つ。ヒダカがギターを抱え、桃野がハンド・マイクで弾け飛ぶのはタイトルどおりに前のめりな1曲“アクション!”である。オーディエンスのノリの良さもあるが、何しろすべてがライヴ映えのするナンバーなのだ。

桃野:「ありがとうございます! さも知ってるかのように」
ヒダカ:「すごい演技力。これだから恋愛ってコワいね!」
桃野:「楽曲って、ライヴでやることで成長するんですよ。なので、今年は新曲をどんどんやって、最高の状態でパッケージしようと」
ヒダカ:「後であちゃーってなる人もいるかも知れないね。最初の方は良かったんだけど付き合ってるうちに、みたいな。恋愛ってコワいね!」

何かにつけて恋愛のコワさを強調するダカさんなのだけど、「オトナなナンバー」と紹介して披露された“ウォークウォークウォーク”は エモーショナルなメロディとダンサブルな推進力を併せ持つナンバーで、トリプル・ギターによる音響が感情表現の深みに到達する。さらには確信に満ちた強靭なメロディで歌われる“ココロニー”も、力強い演奏なのだけど一心不乱に聴き入らせてしまうところがある。個人的に、この2曲はシングル候補ではないかと予想してみた。「非常にいい曲ばかりだったね」と桃野もニヤリ。でも、すごくいい曲をサラッとシングルのカップリングに回したりするからな。MONOBRIGHTは。

出口による今後のライヴ告知が行われ(THEラブ人間、四星球、blood thirsty butchers各バンドとの対バン・ツアーも)、本編終盤はMONOBRIGHT史上最速という“マキシマムマキシマム”、スカンキン・ビートと呪文に踊り狂う“アブラカダブラ”、これまたポジティヴなメッセージと共に爆走する"E.Z.O”と熱狂のライヴ・ナンバーを連発する。「ここを新曲ライヴの故郷として、最後にこの曲をお届けしたいと思います!」と披露されたのは"旅立ちと少年3”! なんともドラマティックなメロディ。どうにも感動的なサウンド。これ以上ないというぐらいの新曲ライヴであった。

アンコールは、瀧谷による「Queには、お忍びでよく来ます」というセレブ発言に爆笑が巻き起こってからの、吉高由里子と下北沢に捧げられた"DANCING BABE”。ダブルアンコールは"アナタMAGIC”でトドメを刺すという周到ぶりで、さすがに新曲だけというのは心配だったのだろうか、サーヴィス精神を発揮してくれた。

それでもやはり、本編が素晴らしかったと僕は思う。「最高の状態でパッケージしたい」と桃野は語っていた。そのために新曲をライヴでやると。先に完成した音源があると、どうしてもアレンジなどは音源の形に引っ張られてしまう部分があるのではないか。リスナーとしても、音源とライヴ演奏とが余りにかけ離れていると違和感を感じてしまうはずだ。それが今回のステージでは、「ライヴが先」という目的があるため、1曲1曲がMONOBRIGHTらしく粒立っている上にライヴ向けのアレンジとして一貫していた。だからオーディエンスは飛び込み易かったし、熱狂が収まらなかった。

5人のバンド・サウンドは「ライヴ向けに」がっちりと纏まり、ダカさんはMCで流石な部分を見せながらも、楽曲では大人の立ち位置で献身的に関わっているように見えた。そんな志もあっての『五人囃子』だったのではないだろうか。ポロシャツ卒業や『DO10!!攻約宣言!』もそうだけれど、MONOBRIGHTは節目節目で必ず驚くべき大きな変化を自らに課すバンドだ。ライヴで新曲を聴いてもらい、音源をリリースする。時代と逆行するような活動姿勢は、しかしファンとのより密な信頼関係を目指すものでもあるだろう。ファンとの信頼関係=恋愛はコワい。だからおもしろい。ダカさんはそういうことを言っていたのではないか。まだ気が早いかも知れないけれど、今から新作が楽しみだ。(小池宏和)

セットリスト

01:let it ride
02:ジャイアントステップ
03:アンチヴァイオレントレフリー
04:未来のデストロイ
05:アクション!
06:ウォークウォークウォーク
07:ココロニー
08:マキシマムマキシマム
09:アブラカダブラ
10:E.Z.O
11:旅立ちと少年3

アンコール1
12:DANCING BABE
13:COME TOGETHER
14:踊る脳

アンコール2
15:アナタMAGIC