「『Premium V.I.P. Party』ってことで、どんなライブにしようかなって言ってたんだけど……今日しかやらないセットリストにしようぜ!って」と磯部寛之(B・Cho)もMCで話していたが、4月19日・千葉LOOK公演から6月29日・SHIBUYA-AXまで全国16会場をサーキットする『Tour Schwarzenegger 2012』を目前に控えて行われたスペシャル・プログラム。「今日は3rdアルバム『Schwarzenegger』が発売されました! 無事にここまでこれたのは、長男の1st、長女の2ndがあればこそなんで、振り返りながら行こうと思います!」(川上)という言葉通り、1stアルバム『Where's My Potato?』(2010年1月)、2ndアルバム『I Wanna Go To Hawaii.』(2011年2月)、そしてまさにこのライブ当日にリリースされたばかりの3rdアルバム『Schwarzenegger』の3作からほぼ均等に楽曲をセレクトして本編を構成しつつ、[Champagne]自身の道程と現在地をクアトロ満員のオーディエンスとともに分かち合う、という内容。6日の大阪公演を残しているのでセットリスト全掲載は割愛するが、触れるものすべてロックンロールに変えていく[Champagne]の「今」を十二分に体現するものだった。
ありとあらゆるロックの欠片をジャンクでダイナミックなロックンロールへ昇華してフロアをがっつりと揺らしてみせた“Rocknrolla!”も、全編クライマックスのようなこの日のアクトの中でも1つのピークを刻んでいた。が、たとえばスパニッシュの如き情熱的なギターと野性的なビートが巨大な赤黒いカオスを描き出す“Waitress, Waitress!”。たとえばサーフ・ロックが痙攣しながら狂喜の絶頂へ駆け上っていくような“Dear Enemies”……といった『Schwarzenegger』の楽曲(川上いわく「生まれたての三男坊」)が、これまでの楽曲以上に切れ味と攻撃性をもって響いてくるのには、感激と戦慄に同時に襲われるような高揚感を覚えずにいられなかった。
浜辺の砂のように無数に存在する音楽の表現の中で、歌謡的だったりJ-POP的だったりする要素には一瞥もくれることなく、ひたすらゴツゴツしてたり異常に尖ってたりするロックの塊だけを丹念に拾い集め、一見洋楽的でありながら間違いなく「今、ここ」以外のどこにもあり得ない唯一無二の音を作り上げた[Champagne]。時に変拍子を織り込んだりビートをブレイクさせたりして「今、ここ」ロックンロールの狂騒の意味をオーディエンス自身に突きつけながら、混沌を突き抜けた先の覚醒の場所へと観る者すべてを連れていく――というマジックを可能にするだけの強烈なヴァイブが、[Champagne]の音には紛れもなく備わっている。ということを、この日のライブが何より雄弁に物語っていた。
時にヘヴィ&メタリックに空気を切り裂き、時に繊細なアルペジオで胸震わす白井眞輝のギター。長い髪を振り乱しながら荒々しいプレイでバンド全体にドライブ感を与えていく庄村聡泰のドラム。ボトムからメロディまで自在に行き来しながら楽曲のエッジ感を際立たせていく磯部のベース。そして、孤独と博愛とがせめぎ合うような川上のハイトーン・ヴォーカルが熱気を貫く……そんな4人の音が、大きな進化作でもある『Schwarzenegger』を完成させたバンド自身の「今」の手応えと渾然一体となって、轟々たる多幸感を生み出していく。上気しまくったオーディエンスを見回して「いい顔してんね! こんなにいい顔してるってことは……普段、溜まってる? その溜まってるエネルギーを普段出せてれば、もっとうまくいくのに、ねえ?……うそうそ!(笑)」と話しかける川上の声からも、アンコールの冒頭でステージ/観客一丸となって “Kids”PV用ライブシーン撮影を行っていた時の「ブサイクな人はモザイクかけるから!」(川上) 「それ誰が判断すんの?」(磯部) 「や、それはヒロ(磯部)が……」(川上) 「俺?(笑)」(磯部)という軽やかな会話からも伝わってきた。洋楽カバーも織り込みながら、全編にわたってむせ返るような熱気を巻き起こしてみせた渾身の2時間。「愛してるぜ!」という川上の絶叫が、全国ツアーとさらに「その先」へと驀進する[Champagne]の高らかな号砲のように、熱く胸に響いた。(高橋智樹)