KING BROTHERS @ 代官山UNIT ゲスト:THE BAWDIES

KING BROTHERS @ 代官山UNIT ゲスト:THE BAWDIES
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 KING BROTHERS主催のタイマン対バンイベント「喧嘩記念日」、16日の「黄金の刺客編」(VS 9mm Parabellum Bullet)、24日の「死のブーメラン編」(VS STRAIGHTENER)に続く第三戦目となる今夜。招かれた相手はTHE BAWDIESだ。ライヴ中ROYが、活動初期に当時面識もなかったKING BROTHERSにライヴのゲスト・アクトとして指名された時のことについて、「初めてでっかい舞台ででっかいバンドとやって度肝を抜かれたのがKING BROTHERSだった。終わってからケイゾウさんが「SOULだね。俺らに曲書いてくれよ」と言ってくれて感動した」と語っていた(後に本人にそのエピソードを話したら覚えていなかったというオチ付き)が、良い関係で結ばれた先輩後輩だからこそ相手に最高の姿しか見せられないという、極限の気合と熱量が会場を満たすライヴとなった。

KING BROTHERS @ 代官山UNIT ゲスト:THE BAWDIES
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 まず先攻となったのはTHE BAWDIES。おなじみのSE“SOUL MAN”が流れ出すと、それだけでフロア中に一糸乱れぬハンドクラップが起こる。そして、彼らの演奏が始まると、一気に会場のボルテージはマックスに。結果を先出ししてしまうと、約45分のステージの間、彼らが観客をその絶頂から逃すことは一度たりともなかった。
観ている途中でふと気付いて驚いたのが、グルーヴのフィット感。彼らは今や明らかに武道館クラスのスケールのバンドになっていながら、このくらいのサイズのハコにもジャストのグルーヴを出せるのである。こうしたところは、ライヴハウス叩き上げのバンドならではの強みだろう。
 また、曲が盛り上がるタイミングでも決して前のめりにならないリズム隊(もちろん、その方が踊りやすいからだろう。ロックンロールをあくまでもダンス・ミュージック、パーティ・ミュージックとして捉える信条が伝わってくる)の上で、これまでも最も自由に演奏を楽しんでいる印象だったJIMのギターの、奏でる音色のバリエーションが増し(エフェクターだけではなく、恐らく弾き方によるところが大きいと思う)、1曲の中でより広い世界を描くようになっていたのが頼もしかった。そんなJIMはなんと今日が誕生日とのことで、フロアから祝福される一幕も。
 ライヴの終盤は鉄板曲の連発で、また、ROYによる「ロックンロールとは感情が爆発して目の前に出てしまったもの」という名言も飛び出し、彼らの先制パンチは文句なしの威力を持ってKING BROTHERSへと打ち込まれた。

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 30分程度のセットチェンジを経て、「ロックの準備はいいですか? ロックの準備は、いいですか!? OKじゃあいこう! デカイ音でいこう!!」というケイゾウのMCでKING BROTHERSのライヴは幕を開けた。1曲目は“☆☆☆”。いきなり、眼前で巨大な鉄球がブン回されているような、凄まじい音圧が放たれる。これを浴びたら、KING BROTHERSのことをあまり知らずに来たTHE BAWDIESファンにも一瞬で伝わったはず。彼らがまぎれもなく本物であることが。
 ほとんどシームレスで繋がれる曲の間で、やはり目を引くのは、両手で交互に下手突きをしながら「ヤゥッ!」と繰り返しシャウトしたり、クラウドサーフィンでフロアを一周しながら、「後ろ、もっとおいでよ」とやさしく語りかけたりしている、マーヤだ。ギターヒーローというよりもはやロックンロールヒーローと呼ぶべきその圧倒的な存在感と格好良さは今日も全く鈍っていなかった。彼を見るといつも子供の頃ヒーロー番組を見ていたときと同じ気持ちにさせてくれるし、さらに凄いのは、かぶり物のヒーローと違ってそれがきっと10年後も変わらないということだ。
爆音ゆえにリリックがなかなか聴きとれないこともある彼らのライヴだが、“Kill Your Idol”~“spaceship”と新作EP『KILL YOUR IDOL』からの曲が連発される流れでは、言葉がはっきり、ストレートに入ってきた。ケイゾウが、3.11を経て悩みながら書いたというこの作品のリリックだからこそ、確実に聴き手に届けたかったのだと思う。特に、“Kill Your Idol”の≪何もかもが信じられないような世の中だけどな 俺とお前が生きてる世界なんだ 転がって転がって転がり続けよう ブッ倒して進むしかねぇじゃん ダンシング!≫というラインは、ライヴで直に歌われることで、音源で聴くとき以上に響くものがあった。また、「みなさんのやり方で全部ブッ倒しに行きましょうよ!」、「(客席の電気を全部点けて)皆さん目を覚ましてください! ロックンロールが目を覚ましますよ!!」、「俺も、あなたも、ロックンロールで無敵になることができる!!」など、MCが悉くそのまま正規の歌のように思えてしまう、アジテイターとしてのセンスも改めて素晴らしいと思った。
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 ライヴのハイライトとなったのは本編の最後に演奏された“ルル”。今日1番の重く太いビートに、覚醒と昏睡を絶えず行き来するようなサイケデリックなギターが乗り、異常なまでの快感が生み出された。50年代~60年代前半辺りのロックンロールと、ロックンロールにリアクトしたソウルミュージックのスタイルをどれだけそのままの形で現代の大衆(日常的に音楽を聴かない人たちも含めて、という意味で、こう書く)に刺すか、というトライアルを一貫してやってきているTHE BAWDIESを見た後だから余計にそう思うが、KING BROTHERSの音楽は、異形である。音数の多さだけをルールに好き勝手やりまくってるようにしか見えないのにしっかり噛み合うリズム隊に、感性が鋭すぎてどれだけ王道のフレーズを弾いても正しくポスト・パンクやポスト・ロックと呼ぶべき「次」の音になってしまうギター、そしてトーキング・ブルーズ調のヴォーカルが一体となる音楽など、世界中のどこを探してもそう見つからないはず。そもそも彼らは少なくともここ数作において、コード進行にしてもリズムパターンにしても典型的なブルーズやロックンロールの型に沿った曲をほとんど作っていない。なのに、ライヴを見て脳裏に浮かぶ言葉は、確実にロックンロールなのである。何故か。それは、彼らがロックンロールを心底信じているからだろう。自分を犯し続けるロックンロールであればこのくらいハミ出した音楽を内包しても当たり前、これだけ新しくて当然、という確信があるのだろう。だから、あれだけ躊躇なくフロアに飛び込むことができるのだ。ロックンロールの渦の中にいる観客がその一部になっていないはずがないと信じているから。そしてもちろん、彼らの信仰は観ている我々も包む。“ルル”の終盤でも、マーヤは「ロックンロール、いや、堕天使が飛び込むぜ。堕天使は色んなことはできない。でも、突然君の上に飛び込むぜ。それはとっても、ロックンロールに似ていないかい! 俺もそう思う!!」と叫んでダイヴし、フロアに支えられ立ちながら「BAWDIES!西宮!」とコール&レスポンスを煽る場面があったが、最高のロックンロールの中で、我々がそっぽ向くことなど疑いもしていないようなあんな目で呼びかけられたら、こちらは大きな声を返すしかないだろう。

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 アンコールの2曲目“☆☆☆☆”では、恒例となっている客席のど真ん中での演奏を見せてくれたが、ここでサプライズがあった。ライヴ中何度もMCでバースデーを祝福されていたJIMが飛び入りで参加し、マーヤよろしくフロアの上に立ちながら、ケイゾウに渡されたギターを弾いたのだ。ジミヘンを真似て背面で弾いたり歯で弾いたりするJIMは、心底楽しそうだった。スタイルは違えど、THE BAWDIESとKING BROTHERS、両者のロックンロールがその祝祭性と肯定性を接点に交わった瞬間だったと思う。アメリカで生まれたロックンロールという無敵のアートフォームを、この2012年において誰よりも体現する男たちが日本にいる。それが証明された記念日だったのだ、今夜は。(長瀬昇)


≪KING BROTHERS セットリスト≫
1 ☆☆☆
2 のりおくれんな
3 Big Boss
4 ×××××
5 マッハクラブ
6 Kill Your Idol
7 spaceship
8 Big Beat
9 ソニックス
10 GET AWAY
11 ルル

アンコール
12 ロマンチスト
13 ☆☆☆☆
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