『Livemasters Summer CHOICE』@ SHIBUYA-AX

『Livemasters Summer CHOICE 2012』と題された今宵のイベント。今年1月に立ち上がった新しいライブ・エージェント:Livemasters Inc.が主催するもので、モーモールルギャバン、ねごと、アルカラ、そしてオープニング・アクトにTHE★米騒動と、シーンの中核を担うべき――あるいは既に中核に食い込んでシーンを引っ掻き回しているバンドが一堂に会するとあって、平日にも関わらずAXには早くから大勢のオーディエンスが詰めかけた。
開演前には、道産子3ピース=THE★米騒動が登場。ひとたび音を掻き鳴らせば一種異様な妖気がAX中に拡散され、まだ10代とはにわかに信じがたい一枚岩のサウンドに圧倒される。中でもドラムス・坂本タイキはバツグンの安定感で狂ったビートを叩き鳴らしていて、見ていて気持ちが高ぶってやまなかった。圧巻は終盤の2曲――「残りあと2曲です! なんか、みんな大人しいんじゃないの! イケるか!? イケるかー!!??」(石田愛実/G&Vo)と気勢を上げて、“家政婦はなにも見ていない”から怒涛のスパート! 坂本と沖田笙子(B&Vo)の生み出す黒魔術系グルーヴが不可抗力的に聴き手を揺らし、「踊れ〜!」(石田)となだれ込んだ“ブラック・ダンス・ホール”で一斉にフロアが躍動! 半年ほど前に観た時よりも音圧やらダイナミズムやらその他もろもろが格段にビルドアップされていて、ちょっとビビってしまったくらい著しい成長を見せつけたTHE★米騒動だった。

転換時には「本日はお集まりいただき、まことにありがとうございます!」と、Livemasters Inc.代表・岩下氏も陰アナで挨拶。「今日は最後まで楽しんでお帰りください。本日、ちゅ、中高生の方、学生証をお待ちですと、1,000円をカッシュ……カッシュ? キャッシュ・バックしております」と、噛みまくりながらの挨拶にも大きな拍手が沸いた。
その後、ひと際大きな喝采で迎えられたのは、本編の先陣を切るアルカラだ。「AXやるか! やれるかー!? 最後までよろしく!!」と、首にタンバリンをぶら下げた稲村(Vo&G)が叫んで、一気呵成に“いびつな愛”へ。フロア前方は勢いコブシを突き上げてヒートアップ、瞬く間に場内のボルテージが高まっていく。続く“踊れやフリーダ”でも、稲村は挑発的なしぐさやダンスでオーディエンスを煽り、唐突に一輪のバラを客席に投げ込んだりと、“ロック界の奇行師”という異名どおりのパフォーマンスでみるみるAXを魅了。さらにMCでは、「ドルゴル、スレンギーン、ダグワドルジ……。ドルゴル、スレンギーン、ダグワドルジ……」と、呪文のようなコトバを唱える稲村。誰もがお口ポカーンとなるなか、「ドルゴル、スレンギーン、ダグワドルジ……あっ、これ、朝青龍の本名ですね! アルカラです、よろしくお願いします!」と、まんまと一杯食わせてみせる(「今日はなんの日か知ってるよね? 8月30日……“ヤザワの日”ということで、見てください、上下白のスーツでステージに立っております!」と真っ赤なウソも! 手に負えね〜!笑)。人を喰ったようであり、ある場合には露悪的ともいえるアルカラだが、その演奏力は10年というキャリアに裏打ちされた強固にしてしなやかな一体感を誇っていて、エネルギーが乱反射するような気狂いパートと、熱狂のど真ん中へと一路突き進む直情パートを巧みに描き分け、終始フロアを沸騰させ続けた。9月23日から始まる初の全国ワンマン・ツアー「ドラマティックあげーるよTOUR」も楽しみ!

20時を少し回った頃、澤村小夜子(Dr)、藤咲 佑(B)、沙田瑞紀(G)、そして蒼山幸子(Vo&Key)と、ねごとのメンバーがひとりずつ喝采を浴びて登場し、“NO”から威勢よくキックオフ! 幸子が伸びやかなボーカルを響かせる傍らで、瑞紀と佑は長髪を振り乱して激しくパフォーム。オーディエンスの視線と気持ちを釘付けにし、続く“メルシールー”では盛大にハンド・クラップ! サビでの躍動的なメロディとビートにのって高揚感はうなぎ登りだ。去る5月12日の渋谷AXワンマンも素晴らしかったけれど、より安定感と輝度を増したステージでファンタジックな景色を描いてみせる。ひと息ついて、「みなさん、こんばんわ!」とドラムス・小夜子が挨拶――「明日で8月終わるし、夏も終わるけど、みんな冷やし中華とか食べた? 今年は忙しくて2回しか食べられなくて、今日の打ち上げで食べたいな。今日は、これから冷やし中華がはじまる勢いでやっていきたいと思います!」との一風変わった決意表明を経て(笑)、「次の曲(“Tonight”)は、みんなで一緒に歌いたいと思います!」(瑞紀)と呼びかけて「ベイビーベイビー!」の大合唱! 「明日、私たちワンマンがあるんです! 新曲もたくさんやろうと思ってます」と佑が明日に迫ったワンマンへの意気込みも語って、白眉は「ここにいるみんなで一緒に宇宙へ行きましょう!」と幸子が呼びかけてなだれ込んだ“ループ”。<♪ループループして〜!>の必殺サビメロにあわせてフロア中のハンズがウェーブする光景は、間違いなくこの日のハイライトといえるものだった。「今っていう時間はすぐに過ぎてしまうし、今日っていう日もすぐに終わってしまうけど、今日のこの瞬間が今の自分を作ってるって私は思う。最後、全力でやるよ!」と幸子が呼びかけて、ラストはアップビートな“sharp ♯”がオーディエンス丸ごと熱狂の果てへ! かけがえのない今を目いっぱいに輝かせた、なんともフレッシュなステージだった。

トリに抜擢された……というか、ここにしか配置できなかったというべきか、最後に登場したのは先ごろZepp Tokyoワンマンを成功させたばかりのモーモールルギャバン! 当人たちも立ち位置をよ〜くわきまえているようで、「まぁ、俺たちの出で立ちを見ればわかると思うけど、本日のトリっつーか、オチのモーモールルギャバンです!!」と、登場するなり早くもキレ気味でゲイリー・ビッチェ(Dr&Vo)がシャウト! 冒頭の“いつか君に殺されても”からモーレツな勢いでスパートし、「かなしくないよ! かなしくないよ!」とT-マルガリータ(B)も必至の形相で悲痛な叫び声を上げる。立て続けに“ユキちゃん”になだれ込めば「わーっ!」とひと際大きな歓声が沸き、饒舌かつ凶暴なユコ・カティのキーボードが場内アドレナリンを急加速。「燃え尽きろー!!」と放たれた“POP! 烏龍ハイ”でもフロアから熱烈な「ハイッ!」が沸き上がり、異様な3人のテンションが異常なまでの熱狂を巻き起こしていくのだった(とにかく全ての瞬間が楽しい!)。ステージングこそ突飛かつ奇抜ながら、その尋常ならざる爆走っぷりには彼らの至極真っ当な“ひたむきさ”がひしひしと感じられて、恥ずかしながら少なからぬ感動を覚えずにはいられなかった筆者である(恥ずかしがる必要もないのだけれど…)。音楽とオーディエンスの快楽にただひたすらに奉仕するモーモー・エンターテインメントが絶頂(あるいはオチ?)を迎えたのは本編ラストの“サイケな恋人”――「いろんなジャンルがあるけど、音楽を愛するココロはみんな一緒だぜ! 殺すぞ! すいません!!」と、ローションでもぶっかけられたように全身ベトベトになったゲイリーが叫び、盛大なパンティ・コールのなかヒョウ柄ブリーフ脱ぎ捨ててフルチ……いや、その下にもブリーフが! 「これが J-POPの限界だー!!」と誇らしげにシャウトし、「今・ここ」にあるもの以外の全てをシャット・アウトして観る者を残らず狂騒の果てへと導いていったのだった。

アンコールでは“悲しみは地下鉄で”をしっとりと聴かせ、「最後、みんなで燃え尽きて帰ろーぜー!!」と“スシェンコ・トロブリスキー”投下で今一度クライマックスへ! イベントが終わった直後はちょっとぐったりしてしまったくらい、何しろ濃密かつ刺激的な3時間半だった。4バンドとLivemasters Inc.の今後に期待!(奥村明裕)
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