という話を、私、優勝のひとつ手前、入賞した時にアップされるライヴ映像の撮影で会った折に、本人にきいて知りました。この「RO69JACK」というコンテスト、「優勝すれば夏の(冬の)フェスに出られる!」という動機でエントリーする人がほとんどなので、ちょっと新鮮でした。で、「優勝できるといいですねえ」みたいな話で終わったが、その後、見事に優勝に輝いた、というわけでした。
「RO69JACK 12/13」の公式サイトの「歴代優勝アーティスト」のコーナーに入れば、彼の入賞時・優勝時のライヴ映像や、応募時の音源や、ミニインタヴューや、『ピンホール透過光』のディスク・レヴューなどに触れられるようになっていますので、ぜひアクセスしてみてください。『ピンホール透過光』の試聴もできます。こちらです。http://jack.ro69.jp/history/index.html
そこでイツキライカ、アコースティック・ギターの弾き語りで6曲を披露。1曲目、「RO69JACK 11/12」にエントリーした曲である“カントリーロード”でスタート。以下のセットリストは、こんな感じでした。
1.カントリーロード
2.リリー
3.モーション・ピクチャー・サウンドトラック
4.folk song
5.タイランド
6.under the sun
1,4,6は『ピンホール透過光』収録曲。2は未収録曲。3はレディオヘッドのカヴァーで、「こないだフジロックに行きまして、そこで観て、やっぱりええバンドやなあと思ったので、そのカヴァーを」というような説明ののちに歌われた。5は英語の曲で、とても美しい歌なんだけど知らなかったので、ライヴ後に楽屋に行って教えてもらいました。王舟という、東京を中心に活動しているアーティストの曲で、前に対バンしたことがあって、その時に聴いて、「いい曲だなあ」と好きになったそうです。
で。ライヴ、どの曲も、もう本当にすばらしかった。人の声とアコースティック・ギターの音。言葉とメロディ、あるいはコードとメロディ。という、必要最小限のもので、こんなにも豊かなことができます、というのの、最良の例のようなステージだった。もちろん、誰でも、ではない。という才能を持ち合わせている人が、ごくまれにいます、この人はそうです、という話です。
「この音楽はこれこれこうだから優れている」みたいに、ロジカルに説明できるような音楽もあるが、そうじゃなくて、なんだかわからないけどすばらしいというか、なんだかわからないからすばらしいというか、そういう音楽だと思う、イツキライカは。
曲にこめられた意味を考えたり、作り手の意図を汲み取ったりする以前に、耳に入ってきた瞬間に意識がどっかにもって行かれたり、一瞬、今自分がどこにいて何をしているのかわからなくなったりする音楽。アレンジや曲構成がぶっとんでいたり、ラジカルな実験性に満ちたりしてるわけじゃない。ごくあたりまえで、シンプルで、オーソドックスで、わかりやすくて、でも、とてもマジカル。そういう歌だった、どれも。自分の歌じゃない2曲にも、そういう魔法がかかっていた。いや、元々そういう魔法を持っている歌だからカヴァーした、というのもあると思うが。