BRAHMAN @ SHIBUYA-AX

BRAHMAN @ SHIBUYA-AX - Photo by Tsukasa MiyoshiPhoto by Tsukasa Miyoshi
去る2月20日に発表された待望のニュー・アルバム『超克』。そのレコ発となる『Tour 相克』が、この日のSHIBUYA-AXから幕を開けた。BRAHMANの求心力を見せつけるように、開場直後から場内は大勢のキッズでごった返し、そんな血気盛んな野郎どもを、まずはゲストに招かれた東北ハードコアの雄・雷矢が迎撃する。

「東北ライブハウス大作戦」の旗を掲げ、「今日3月12日、ここでやれることに感謝します!」とヴォーカル・ヤスオが高らかに叫んで、冒頭の“残された呼吸”から4人は直球の8ビートで疾走。「未来を作れ! 何度でも!!」とたびたび檄を飛ばすヤスオに駆られて、フロアにも力強いコブシが突き上がる。胸ぐらを鷲掴むような苛烈なアジテーションであり、一見コワモテの雷矢だが、MCでは相好を崩して「みんなのおかげで宮古、大船渡、石巻にライブハウスが出来ました。本当にありがとうございます! 今度三陸の方に来てください」と東北への支援に精一杯の感謝を届け(「水戸の筋肉馬鹿、ありがとう!」と先輩だからこそ許されるアプローチで対バンにも最大級のリスペクト!)、ラストの“UNFEELING BLOOD”ではヤスオが盛大にステージ・ダイブもカマして、十分すぎるほどAXを過熱させた雷矢だった。

BRAHMAN @ SHIBUYA-AX
午後8時15分、客電が落ちると共におなじみのSEが流れると割れんばかりの歓声が沸き、同時にいくつもの合掌がフロアに掲げられる。まずRONZI(Dr)がひとりステージに現れ、シンバルでリズムを刻みはじめると、ステージ後方に『超克』ジャケットの巨大なバックドロップが掲げられ、MAKOTO(B)とKOHKI(G)が加わって重量級のアンサンブルを響かせるなか、おもむろにTOSHI-LOW(Vo)が登場すると、思わず「うおぉ!!」と感嘆の声を上げずにはいられないスリリングにして劇的な幕開けに場内大沸騰。2曲目へと雪崩れ込む刹那、「BRAHMAN、『Tour 相克』始めます!」とTOSHI-LOWが高らかに宣言し、バンドはまさに疾風迅雷の猛攻を開始する。これからツアーに参戦される方の楽しみを損なわぬよう曲名は伏せますが、楽曲を重ねるごとにバンドとオーディエンスは加速度的にヒートアップし、AXは異常な密度の熱気で充満。ここは高円寺20000Vか!?

BRAHMAN @ SHIBUYA-AX
リリースツアーとあって当然『超克』収録曲がセットリストのメインとなるわけだが、全編日本語詞となり、苛烈さと共に歌心やドラマ性も増幅された楽曲群は予想以上にライブ映えするものばかりで、絶え間ないモッシュ&ダイヴに加え、時には大合唱も巻き起こして幾度も沸点は更新されていった。本編終盤には、フロアに飛び込んだTOSHI-LOWがオーディエンスに支えられながら10分以上に及ぶMCを披露。ワンデー アキュビューを2週間も替えてなかった話、視力が0.02とかなので眼鏡はeastern youthの吉野寿みたいだという余談、震災から間もない居酒屋で雷矢・ヤスオと殴り合った秘話など、何度も爆笑を巻き起こしながら、コンタクトの買いだめを前回買ったのは2年も前の2011年4月だったことから、震災以降を巡るTOSH-LOWの回想が始まる――「あれから2年経つんだ。何が変わったのか、何が変わらなかったのか。俺は何を変えたくて、俺は何を変えらんなくて……。ほとんど変わってねえのかも知れねえ。と思ったけど、今日こうやってライヴやって、この真ん中で感じてると、やっぱり俺の中で伝わってるものや風景は変わったんだなって、確信してます」。その言葉に、温かい称賛に満ちた万雷の拍手が沸いた。

バンドの壮絶なテンションは最後まで衰えることなく、激しいアクションで突っ走ってなお一糸乱れぬアンサンブルと、雄弁かつ声量を保ったTOSHI-LOWのヴォーカルには改めて驚嘆。ツアーを通して、バンドとしての筋肉は更にビルドアップされていくことだろう。ツアーファイナルは6月8日の幕張メッセ国際展示場(『Tour 相克 FINAL「超克」the OCTAGON』)。完全に血肉化された『超克』にブッ飛ばされることを心待ちにしたい。(奥村明裕)
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