真心ブラザーズ @ 中野サンプラザ

「王道真心 ジャパン・ツアー2013」

2月末に地球三兄弟のツアーを終えて、ほとんど間を空けることなく、今回の「王道真心 ジャパン・ツアー2013」を発表した真心ブラザーズ。今週5月29日(水)には日本テレビ系アニメ『宇宙兄弟』のオープニングテーマとなっているシングル『消えない絵』もリリースと、YO-KING、45歳、桜井秀俊、44歳、なんとも新人バンドかのようなワーカホリックぶりである。この日は毎年恒例の真心ブラザーズ@中野サンプラザ。例年は、冬に行われてきたこの公演だが、今年は春の開催となった。そして、この日の公演は、アルバム『Keep on traveling』と地球三兄弟の活動を経て、ノンストップで旅を続ける現在の彼らの充実っぷりを、あますことなく見せてくれるものだった。

開演時間である18時、まずステージに登場したのはオープニング・アクトであるnicoten。本サイトのアマチュア・アーティストのためのコンテスト「RO69JACK」の10/11で入賞を果たした彼らだが、7月24日(水)にSony Music Associated Recordsより『アルドレアe.p.』でメジャー・デビューすることが決定。ドラムの岡田一成のところに集まってメンバー全員で拳を合わせ、Vo&Gの宮田航輔が高々と腕を上げて始まったステージは、そんなニューカマーならではの爽やかさとニューカマーとは思えない安定感を感じさせてくれるものだった。「真心ブラザーズ先輩のツアーファイナルに出させてもらって、ありがとうございます。仲良くなりたいんですよ、真心ブラザーズと」と初々しさの溢れるMCがありつつも、いざ曲が始まると、大舞台にもまったく動じてない。岡田とベースの広瀬成仁によるリズム隊はタイトで、宮田の歌と言葉はすっと身体に入ってくる。“ふわふわ”“Day trade”と昨年リリースの『メトロナポリタン』からの楽曲を披露しつつ、最後はメジャー・デビューの表題曲となる“アルドレア”。ハイトーンのサビを持つ、この王道のギター・ロック・ナンバーが、このバンドの真っ直ぐさを体現していた。

nicotenのステージが終わっても、客電はつかず、場内は薄暗いまま。セットチェンジが速やかに行われ、nicotenのライヴが終わってから約10分後の18:30、場内にはスタートレックのテーマが高らかに鳴り響く。そして、ステージ後ろの幕が開くと、そこには「MB」と記された電飾の看板が登場。それと同時に、桜井秀俊をはじめとしたMB'sの面々がステージに入ってくる。マウンテン・ホーンズと共に桜井秀俊が“新しい夜明け”のイントロを奏で始めると、遅れてYO-KINGが駆け足でステージに登場。年に一度の中野サンプラザ、いよいよスタートである。昨年は公演タイトルが「燃えよ!ドラゴン桜(井)」、一昨年は「中野区にから ~'11寒中見舞~」と、基本的にやりたい放題とも言える特別な日のわけだが、今年は「王道真心 ジャパン・ツアー2013」ということで、まさにベスト中のベストとも言えるセットリスト。昨年の様子はこちらで御確認いただきたいが(http://ro69.jp/live/detail/62803)、本人たちいわくこうした「悪ふざけ」がなくても真心の曲だけで十分ということで、“空にまいあがれ”“ENDLESS SUMMER NUDE”といった楽曲が早々に序盤から披露される。

でも、この日ならではのホームグラウンドとしての中野サンプラザの空気というものもやっぱりあって、それを堪能できるのがMC。3曲目を終えたところでYO-KINGによる「今年は季節がズレましたが、またサンプラザができて嬉しいです。どうもありがとうございました。次で最後の曲です…………もうね、えーも何も起こんない」なんていうやりとりもあったけれど、勝手知ったるお客さんと真心の間には阿吽の呼吸が存在している。“愛のオーラ”“ループスライダー”“I'm in love”を披露した後には、シンガーとしての脱皮という話から→サナギマン/イナズマン→石ノ森章太郎→仮面ライダー……と話は脱線していき、そのMCの長さゆえ名古屋公演では遠方のお客さんから怒られたというほど、話は次々と転がっていく。その一方で、《飛び越えるか 泳ぎきるか 力尽きるか》というフレーズが胸に刺さる“FLY”や“流れ星”、桜井秀俊のヴォーカルによる“メトロノーム”といったシリアスな楽曲も披露され、そうしたMCとのコントラストもまた真心のライヴの醍醐味だ。

その後もvivaさんことドラムの須貝直人の持ち物をいじったり、NHK Eテレで朝6:55に放送されている“朝が来た!”がくれば、ひとしきりNHKネタで盛り上がって、『あまちゃん』トークが差しこまれたり、自由気ままなMBトークは絶好調。セットリストも、最新ナンバー“消えない絵”から“Let’s 感動”“どか~ん”という昔の曲まで自在に行き来してみせる。そして、このあたりからライヴはいよいよ終盤戦に突入。この日、桜井は「量、多めでいきますんで。お腹、空けといてください」と言っていたが、「王道真心」の看板通り、“愛”“BABY BABY BABY”“JUMP”といった真心クラシックスが次々と演奏されていく。こうした楽曲のよさ、そして、いまだにパワーを増していくライヴでの成長を本人たちも冗談めかして語っていたが、どの時代の曲も今の真心がやると、ちゃんと真心ブラザーズの現在地として鳴るのがすごい。筋力が増したとでもいうような、およそ真心らしくないストイックさとストレートさが今の真心のパフォーマンスにはある。その象徴とも言えたのが、本編最後に演奏された最新作『Keep on traveling』からの“Keep on smilin'”だった。カントリー調のあたたかなヴァイブを持った曲だが、こうした曲も今の真心だからこその強さと懐の深さがある。アンコールは、“拝啓、ジョン・レノン”“RELAX ~ OPEN ~ ENJOY”という鉄板中の鉄板の2連打。飛び道具は一切なし。いつもの真心が、いつもの真心であるだけで、自らを更新し、勝利をおさめてしまう、鮮やかなライヴだった。しかも、この日の模様は、WOWOWで7月14日(日)23:30からオンエアされることも決定。こちらも是非ご覧ください。(古川琢也)

セットリスト
1. 新しい夜明け
2. 空にまいあがれ
3. ENDLESS SUMMER NUDE
4. 愛のオーラ
5. ループスライダー
6. I'm in love
7. FLY
8. 流れ星
9. メトロノーム
10. それが本当なら
11. 朝が来た!
12. 消えない絵
13. Let's 感動
14. どか~ん
15. 突風
16. 愛
17. BABY BABY BABY
18. JUMP
19. Song of you
20. EVERYBODY SINGIN' LOVESONG
21. Keep on smilin'
(encore)
22. 拝啓、ジョン・レノン
23. RELAX ~ OPEN ~ ENJOY