「今日は悲しいだけの卒業式じゃなくて。それぞれの未来への入学式です!」――ライヴ中、ファンキー加藤は印象的な言葉を何度も口にしていたけれど、この言葉にこそ、彼らの想いがもっとも強く託されていたと思う。DJケミカルが実家の住職を継ぐため、この日をもって解散するFUNKY MONKEY BABYS。そのラストライヴには「もう最後」という感傷や涙が確かに溢れていたけれど、それ以上に「ここから始まる未来」へと我々を力強く鼓舞するパワーに満ちあふれた、とてもポジティヴな時間だった。と同時に、DJケミカルはもとよりスタッフやファンの一人たりとも欠けたら成立しないとも言わんばかりのファンモンの歌が、かつてない熱を帯びてダイナミックに放たれた、感動的な一夜だった。
会場に入ると、驚くほどシンプルなステージにまず驚かされる。外野側に設けられたメインステージにあるのは、FMBのロゴが記されたターンテーブルのみ。その上部に3つのオーロラビジョンが設置されているが、目立ったステージ装飾は一切ない。さらにアリーナ席に伸びる花道やサブステージもなし。スタジアム規模のライヴとは思えないほど簡素な作りだが、身体を張ったパフォーマンスを最大の武器としてきたファンモンには最もふさわしいスタイルだ。17時を少し過ぎた頃に幕を開けたライヴは、恒例のマネージャーによるファンモンエクササイズからスタート。さらに開演直前にMONGOL800の“小さな恋の歌”の大合唱が行われるなど、無言の了解をひとつひとつ実行していくファン=BABYSの姿にも力が入っている。そして、寝坊したDJケミカルが東京ドームへ猛ダッシュで駆けつけるというオープニング映像を経て、アリーナ後方からパジャマ姿のDJケミカル登場! そのままパジャマを脱いでお馴染みのランニング&短パン姿でステージへダッシュでたどり着くと、「準備はいいか、東京ドォォーーム‼」という第一声からライヴは勢いよくスタートした。
1曲目は“WE ARE FUNKY MONKEY BABYS”。ステージ上のセリからファンキー加藤とモン吉が現れ、いきなり煌びやかな銀テープが発射される。さらに“アワービート”“希望の唄”などファンとの絆を確かめ合うようなナンバーが続くと、場内はシンガロングとハンドクラップの嵐に。周りを見渡せば小さな子供から中年男性まで本当に幅広い観客が集っていて、彼らを一人残らず熱唱させる楽曲のキャッチーさやスケール感には改めて驚くばかりだが、やはり何と言っても心を揺さぶられるのは、ステージの端から端まで全力で駆け回り、エネルギーを届けていく3人の姿だ。「泣いても笑ってもラストライヴ。5万人全員の思いを俺たちが背負い込んで、音楽人生をかけて全身全霊でアナタのために歌っていきます!」と最初の挨拶でファンキー加藤は言っていたけれど、そこに1ミリの嘘もないと思えるほどの渾身のパフォーマンスこそが、ドームの規模をものともしない彼らの熱狂を支える最大の原動力なのである。
「サブステージがない代わりに、車で皆さんの近くに行きたいと思います」と、ジャニーズのコンサートばりのフロートカーに乗ってアリーナ外周を移動したシーンでは、DJケミカルが気球に乗って上階の観客にアピール。するとアリーナ後方にサブステージが出現し、場内から大きなどよめきが! “告白”“夏の終わりに”“大切”の3曲をサブステージで披露して、後方スタンドの観客とも熱いコミュニケーションを交わしていく。さらにブレイクの大きなきっかけとなった4thシングル“Lovin’Life”で5万人の大合唱を導き、再びメインステージに戻ると、気球から降りたDJケミカル、何故か木の被り物で登壇。「お前、本当に住職になるの?」とファンキー加藤に突っ込まれる一幕もあり、心憎い演出と親しみあふれる掛け合いで、観客を軒並み笑顔にさせてしまった3人だった。
その後は、会場一丸のジャンプでドームが揺れた“LIFE IS A PARTY”、ステージ前方でぶっとい火柱が噴き上がった“ガムシャラBOY”、色とりどりのレーザー光線が場内を駆け巡った“メロディーライン”と、スタジアムライヴらしいド派手な演出の連続。かと思えばファンモンきってのスロウバラード“涙”を投下、結成当時からの思い出を振り返った長いMCを経て、「これまでの感謝の気持ちを綴った」というラストシングル“ありがとう”へと流れ、さらに“あとひとつ”“サヨナラじゃない”とメロウなナンバーを畳み掛けていく。いよいよライヴもあと僅かと思わせるこの感傷的な展開に、ドーム全体が涙、涙。ライヴ序盤から観客の様子を頻繁に映し出していたオーロラビジョンには、熱唱するメンバーとともに、タオルで目頭を押さえる女性の姿や、必死にシンガロングする男性の姿が次々と映し出されていく。しかし、そんな湿っぽい空気を振り払うように本編ラストに届けられたのは、“ALWAYS”“ちっぽけな勇気”“悲しみなんて笑い飛ばせ”のアッパー・チューン3連打。ドーム中のタオルが旋回し、特大花火が打ち上がり、紙吹雪がひらひらと舞ったフィナーレを彩っていたのは、大きな達成感に満ちたメンバーと観客の晴れやかな笑顔だった。
“太陽おどり~新八王子音頭~”で威勢よくスタートしたアンコールでは、“ヒーロー”で再びアリーナ外周をぐるり。最後の挨拶でモン吉は、「10年あっという間だったけど、楽しかったです。ファンモンは解散しちゃうけど、住職(DJケミカル)が一線を越えて『ああ、ファンモンいいかも』って戻ってきたらまた再開するかも」とジョークを交えながらも「ターンテーブルを使ったミュージシャンが東京ドームでライヴするのは初らしいです!」と堂々発表。DJケミカルは「今日のことは一生忘れません。もうライヴ会場で会うことはできないけれど、僕たちの曲はずっと生き続けるので。また新しい形で会いましょう!」と声を張り上げる。そしてファンキー加藤は「この2日間、ファンモン史上“最幸”のライヴになりました。本当にありがとう」と深々と頭を下げ、「BABYSと共に歩んできた日々は幸せだらけ。幸せだけしかありませんでした。俺たち3人だけじゃ苦しくて辛くて諦めていたと思います」とファンに感謝。さらに声を詰まらせながら、「ともに歩んできた軌跡は一生消えません。この先つらいことがあったら、心の奥底に耳を澄ませてください。きっと東京の西の方(彼らの出身地である八王子)から変わらぬ3人組が、『負けるな、がんばれ』とアナタの人生を応援し続けます」と語りかけ、冒頭の言葉を繰り出す。そして「僕たちが一番もがき苦しんでいたときの曲を歌います」とデビュー・シングル“そのまんま東へ”、“西日と影法師”を最後に届けて大団円。「FUNKY MONKEY BABYSは永久に不滅です!」と3人でガッチリと握手を交わすと、「ここにいるみんながFUNKY MONKEY BABYSです」とファンキー加藤の「WE ARE」の掛け声に、5万人全員で「FUNKY MONKEY BABYS‼」と応えて10年間の活動にピリオドを打った。ふと時計を見ると、時刻は21時を回る頃。実に4時間にわたる長丁場だったわけだが、3人が肩を組んでステージを去った後も、“ありがとう”を大合唱し、温かな拍手を送るファンの姿で、客席はしばらく埋め尽くされていた。(齋藤美穂)
セットリスト
1. WE ARE FUNKY MONKEY BABYS
2. アワービート
3. ナツミ
4. 希望の唄
5. 恋の片道切符
6. 明日へ
7. 夢で逢えたら
8. 告白
9. 夏の終わりに
10. 大切
11. Lovin’Life
12. LIFE IS PARTY
13. ガムシャラBOY
14. メロディーライン
15. 涙
16. ありがとう
17. あとひとつ
18. サヨナラじゃない
19. ALWAYS
20. ちっぽけな勇気
21. 悲しみなんて笑い飛ばせ
アンコール
22. 太陽おどり~新八王子音頭~
23. ヒーロー
24. そのまんま東へ
25. 西日と影法師