GREAT3×フジファブリック @渋谷クラブクアトロ

GREAT3×フジファブリック @渋谷クラブクアトロ
今年でオープンから25周年を迎えるライヴハウス・渋谷クラブクアトロが、オープン記念日の6月28日から8月にかけて様々な対バンを行うアニバーサリー企画「QUATTRO QUARTER」。その7本目となる「Tuesday Night Fever」が開催された。今夜の出演者は、GREAT3とフジファブリック。フジファブリックのメジャー・デビュー当時のシングルとアルバムのプロデューサーを片寄明人が務めるなど、かねてから親交の深い「師弟バンド」の競演である。

GREAT3×フジファブリック @渋谷クラブクアトロ - pic by 森下友加里pic by 森下友加里
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先攻はフジファブリック。客電が落ちたステージにSEなしで登場すると、「イチ、ニイ、サン」というお馴染みのカウントからスタートしたのは“夜明けのBEAT”。たちまちフロアは大歓声とハイジャンプの嵐と化す。「どうもこんばんは、フジファブリックです」という山内総一郎(G/Vo)の短い挨拶を挟んで“自分勝手エモーション”へ突入すると、金澤ダイスケ(Key)の凍てつくようなキーボードの旋律と、加藤慎一(B)のグルーヴィーなベースラインに惜しみなく送られる、フロアのハンドクラップ。そのまま“Upside Down”へノンストップで雪崩れ込み……と、今日のライヴはいつにも増してタイトでスピーディーな流れだなと思っていたら、ここですかさず“Mirror”投下! 1年前の「徒然流線ツアー」でも、サイケなジャム・パートが加わって10分強の大曲に生まれ変わっていたこの曲には目を見張ったが、そのマニアックな変容っぷりがさらに増していて驚いた。ギター、キーボード、ベースの絡み合いでアンビエントな音世界を形成し、サポート・メンバーのBoBo(Dr)と名越由紀夫(G)によるリフとビートでドラッギーな高揚感を加速させていく、15分を超える音のスペクタクル。類まれなる演奏スキルと尽きぬ音楽的探究心を原動力として、生き物のように進化し続けるフジファブリックの「今」を象徴する名演だったと思う。

GREAT3×フジファブリック @渋谷クラブクアトロ - pic by 森下友加里pic by 森下友加里
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「クアトロ25周年おめでとうございます。僕たちが初めてワンマンをしたのが、ここクアトロで。すごく思い入れのある会場なんです。しかもGREAT3の片寄さんはファースト・アルバムのプロデューサーでもあって。そんな大先輩と久しぶりに対バンできて嬉しいです」。そんなクアトロとGREAT3への想いを真摯な言葉で述べた後は、クライマックスへ向けて猛ダッシュ。極彩色のアンサンブルで眩いほどの多幸感を描き出した“徒然モノクローム”、跳ねるビートでフロアを燃え上がらせた“Sufer King”でグイグイと引き上げられた場内のボルテージは、続く“銀河”でスパーク! ラスト“STAR”では、またたく照明の下で宇宙規模の広がりを見せる壮大かつ煌びやかなサウンドを押し広げ、ドラマティックな幕切れとなった。

GREAT3×フジファブリック @渋谷クラブクアトロ
そして、後攻GREAT3の登場。まずは昨年11月に9年ぶりに発表した最新アルバムから、“Santa Fe”を披露。片寄明人(Vo/G)/白根賢一(Dr)/新たに加入した23歳のベーシストjanのオリジナル・メンバーと、サポート・メンバーの堀江博久(Key)/長田進(G)の5人が呼吸を合わせながら丹念に紡いでいくグルーヴとハーモニーの美しさに、棒立ちのまま酔いしれるオーディエンス。続く“Emotion”では、深淵たる世界にズブズブと足を踏み入れていくようなビートによって、めくるめく白昼夢のような磁場が形成されていく。さらにイントロで歓声が上がった“METAL LUNCHBOX”と繋げ、フロアを温かなハンドクラップで満たしていった。

GREAT3×フジファブリック @渋谷クラブクアトロ
MCでは、片寄がフジファブリックとの親交にまつわる話を展開。自らプロデューサーを務めた“銀河”について「最初はあんな変な曲が売れるとは思ってなかった」とユーモアを飛ばしつつ、「だからGREAT3のライヴもマニアックな曲から始めさせていただきましたが、さすがフジファブリックのファンの方々は温かく迎えられるだけの心の広さがありますね」と締めて、オーディエンスの喝采を浴びていく。その後は“DISCOMAN”“GLASS ROOTS”“Little Jの嘆き”“玉突き”と、往年のシングル・ナンバーを連打。キャッチーなのに親密で、スイートなのに不意に聴き手に真理を突きつけるような鋭さがあって、上質な羽根布団のような温もりと包容力を持ったGREAT3サウンドが、今ここで鳴っていることに堪らなく嬉しくなる。

GREAT3×フジファブリック @渋谷クラブクアトロ
2度目のMCでは、志村正彦の話題に。フジファブリックのプロデュースを行っていた当時、志村に「もう一回GREAT3をやってくださいよ」としょっちゅう言われていたというエピソードを明かし、「今のGREAT3があるのは彼のおかげです」と片寄。そして「そんな志村正彦くんに捧げる曲を作りました」と、“彼岸”へ。心にぽっかりと空いた喪失感を吐露しながら、《諦めず命を燃やそう》と帰結する音と言葉のリアルな響きに、この日、魂を大きく揺さぶられた人は私だけではないはずだ。さらに、さざ波に抱かれているような穏やかな酩酊感を生み出した“綱渡り”、janとのツイン・ボーカルによってファニーなサウンドスケープを描き出した“エデン特急”と続けて、本編ラスト“SOUL GLOW”へ。これまでの浮遊感あふれる音世界が嘘のように強靭なリズムで突き進むダンサブルなサウンドを、カラフルな照明が華やかに彩って大団円。「どうもありがとう!」と片寄が告げてメンバーがステージを去った後も、フロアに沸き起こる拍手と歓声はしばらく収まることはなかった。

GREAT3×フジファブリック @渋谷クラブクアトロ
アンコールでは、フジの山内を伴ってGREAT3が登場。「フジファブリックのファンを信じて、すごい暗い曲をやってもいいですか?」(片寄)との前振りから山内のギターを加えた6人体制で“Under the Dog”を披露して、3時間弱に及んだステージは終幕となった。アンコールでの共演はもとより、フジファブリックとGREAT3それぞれのアクトから、互いへの尊敬と情愛が溢れた、親密な対バン。長らくバンドシーンを支えてきた渋谷クラブクアトロの25周年を祝うイベントとしても、とてもエモーショナルな味わいを持った至福の時間だったと思う。今後も「QUATTRO QUARTER」では、魅力あふれる対バンが行われる予定。今後のラインナップは「QUATTRO QUARTER」特設サイト(http://www.club-quattro.com/25th/)でチェック。(齋藤美穂)

セットリスト
フジファブリック
1. 夜明けのBEAT
2. 自分勝手エモーション
3. Upside Down
4. Mirror
5. 徒然モノクローム
6. Sufer King
7. 銀河
8. STAR

GREAT3
1. Santa Fe
2. Emotion
3. METAL LUNCHBOX
4. DISCOMAN
5. GLASS ROOTS
6. Little Jの嘆き
7. 玉突き
8. 彼岸
9. 綱渡り
10. エデン特急
11. SOUL GLOW
アンコール
12. Under the Dog
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