pic by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)日比谷野外大音楽堂の開設90周年、及び、イヴェントなどの企画・製作・運営を行うホットスタッフ・プロモーションの設立35周年を記念して開催された対バン企画。開演前にはザ・ローリング・ストーンズの名曲の数々が響き渡り、多くの来場者を出迎えてくれる。先行してステージに立ったTHE BACK HORNの松田晋二(Dr.)は序盤に、「暑すぎるでもなく、雨が降るでもなく、最高のロック日和となりました! こうして都会のど真ん中で、自分たちの好きな音を鳴らせるって最高に嬉しいことだと思います」と上機嫌で挨拶する。野音が幾度かの改築を経つつ90年の長きに渡って残されてきたその理由を、一瞬のうちに肌で理解してしまうような、絶好のコンディションに恵まれたライヴ・イヴェントであった。
pic by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)重厚で不穏極まりないアンサンブルのイントロから、急激に切り上がるスリリングなバンド一体型のリフと、“カウントダウン”のオープニングでさっそくオーディエンスを丸呑みにしてゆくバクホンの4人。菅波栄純(G.)はその鬼神の如きギター・プレイで、うろこ雲の下の心地良い空気を切り裂く“罠”へと繋げていった。マツの繰り出すビートが荒馬のように駆ける“声”まではバクホンらしい怪物的な音塊が立て続けに放たれていたのだが、「今日はTK(from 凛として時雨)と2バンドですけど、至福な、幸せな時間を作っていきたいと思います」と挨拶を経た後には、まさに有言実行といった感じで、レゲエ・ビートを野音の空気に馴染ませながら展開する“甦る陽”、そして優しい包容力に満ち溢れた“トロイメライ”と、新旧のナンバーによって表現レンジの広さを発揮してくれる。
pic by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)「野音90周年、ホットスタッフ35周年、おめでとうございます……90年ってすごいよね。90回、じゃないからね(松田)」「松田さんもねえ、35周年。2ヶ月前ですけど(山田将司/Vo.)」「僕が福島で産声を上げた年に、ホットスタッフが東京で立ち上げられて。まあ、遠くから見守っていましたよ(笑)。いつか出会えたらな、と思いながら(松田)」と、笑いを交えながらアニヴァーサリーに向けた祝福の言葉を投げ掛け、いざまた演奏となれば、瞬く間に荒ぶるサウンドを叩き付けてしまうのであった。岡峰光舟によるファンキーなベース・プレイがオーディエンスを跳ね飛ばす“涙がこぼれたら”の後には、“コバルトブルー”、“シンフォニア”と雄々しい爆走チューンを連発し、喉も張り裂けよとばかりに渾身の歌&シャウトを繰り出していた山田の「まだまだこれから何十年、THE BACK HORNも良い音楽を作って……日本を支えられるような音楽を作って……俺らを支えてくれるのはみんなだから、ありがとうございます」という言葉に喝采が上がる。最後に披露された1曲は、彼らがキャリアを積み重ね、生き延びてきたからこそ辿り着いたクラシック“世界中に花束を”だ。万感の思いに包まれるステージを、暮れ行く空から朧月も見つめていた。
pic by 河本悠貴さて、辺りはすっかり暗くなったというところで、大歓声に包まれながらTK from 凛として時雨の登場だ。メンバーは、ステージ上手から順にBOBO(Dr.)、大古晴菜(Key.)、中央のTKを挟み、沖増菜摘(Violin)、そして日向秀和(Ba.)という顔ぶれである。冒頭の“flower”では、空間系エフェクトを噛ませた巧みなアコギのフレーズが印象的だ。BOBOのビートが鋭角に響き渡り、激しくその身を揺り動かすひなっちのベース音に突き上げられ、大古と沖増が放つサウンドは野音の空間を楽々と掌握してしまう。TKは曲中でエレクトリック・ギターに持ち替え、天井知らずにヒート・アップするバンド演奏の中から、孤独な魂の形を昂ったハイトーン・ヴォイスで投げ掛けてくる。この、自己表現の伝達力の高さ/スケール感はどうだろうか。
pic by 河本悠貴屋外のステージで彼(ら)のパフォーマンスに触れるのは初めてだったのだが、TKのデザインする自己表現/コミュニケーションの規模というのは、予めこれぐらいのサイズを想定していたに違いない。アップリフティングにひた走る“12th laser”から、ギターと鍵盤がスリリングに交錯し、アコースティックな音とエレクトリックな音がシームレスに連なってゆく“phase to phrase”へ。巨大なスペクタクルと繊細緻密な美が共存するアート・フォームを、きっちりと提示してゆく。ソロでは、TKという表現者のどこに底があるのだか知れないクリエイティヴィティが露になっていく。一曲毎に、囁くような控えめな声で「ありがとう」と告げる姿にギャップを感じるほど、圧倒的な内容のパフォーマンスである。
pic by 河本悠貴ステージは、音の劇物としか思えない“Abnormal trick”、《暗闇は僕が切り裂いておくから》という歌詞のとおりに楽曲そのものが発光するような“haze”と続き、昨年末のイヴェント『DECEMBER’S CHILDREN』でも披露された“Fantastic Magic”へと傾れ込んでゆく。未音源化のナンバーでありながら嬌声を巻き起こしてしまう程の、既にハイライト級と言える力強い1曲だ。本編終盤は凄絶なシャウトと共に放たれる“film A moment”、そして「いつか、こういう所でできたらな、と思っていた曲でした」と紹介し、優しげなアコギの調べと柔らかい照明効果の中で“fourth”が披露される。アンコールの催促に応えて一人でステージに戻って来たTKは、「野音90周年、ホットスタッフ35周年、おめでとうございます。あと、うちのドラムのPちゃんが……あ、ピエール中野っていうドラマーが(凛として時雨に)いるんですけど、一昨日、めでたく33周年を迎えまして。改めて、おめでとうございます」と言葉を投げ掛ける。当のピエールは、バクホンのときから客席でステージを見守っており、叫ぶような肉声で「ありがとうー!!」と返していた。そしてTKはソロ弾き語りで新曲を1曲と、再びのバンド編成で時雨の“Shandy”をセルフ・カヴァーするという展開へ。この顔ぶれによるスリリングなコンビネーションの“Shandy”というのも、アンコールのボーナスみたいで最高だ。
何よりも、出演者それぞれが圧巻のロックを披露することで、アニヴァーサリーを祝福するといった印象の一夜であった。なお、開催迫るROCK IN JAPAN FES. 2013においては、THE BACK HORNが8/2(金)のLAKE STAGEに、TK from 凛として時雨は8/4(日)のLAKE STAGEに、それぞれ出演予定となっている。今回の様子からすると、どちらも素晴らしいステージを繰り広げてくれそうだ。(小池宏和)
THE BACK HORN
01. カウントダウン
02. 罠
03. 声
04. 甦る陽
05. トロイメライ
06. 涙がこぼれたら
07. コバルトブルー
08. シンフォニア
09. 世界中に花束を
TK from 凛として時雨
01. flower
02. 12th laser
03. phase to phrase
04. Abnormal trick
05. haze
06. Fantastic Magic
07. film A moment
08. fourth
EN-1.(新曲)
EN-2. Shandy