BAYCAMP 2013 @ 川崎市東扇島東公園

2011年2月より夏と冬の年2回開催されてきたイベント「BAYCAMP」も、今年で夏の開催は3回目。川崎の海のすぐそばで、工業地帯に囲まれた川崎市東扇島東公園で行われ、タンカーや羽田空港に向かう飛行機を眺められるという特殊なシチュエーションと、オールナイトにこだわったイベントのコンセプトもあって、すっかり晩夏の首都圏の風物詩として定着してきた。今年は予想外の出来事もあったけれど、髭と一緒に朝日を迎えたときは、このイベントならではの幸福なヴァイブに溢れていた。その一夜をレポートしていきます。

今年もステージは3つで、隣り合わせで交互にライヴ・パフォーマンスが進んでいくメインステージ「EAST ISLAND STAGE」と「PLANT STAGE」、DJやアコースティック・パフォーマンスも展開する「FREE THROW TENT」という構成。全18時間40組以上に亘るアーティストがパフォーマンスを行ったが、すべてのアクトを一人で観ることは物理的に不可能なので、ここではフェス全体の雰囲気を伝えていきたい。

川崎駅のシャトルバス乗り場の長蛇の列と、様々な今夏のイベントのTシャツに身を包んだ観客の姿を見て、夏の締めくくりのフェスとしての「BAYCAMP」の定着を実感するが、会場に着くと、「FREE THROW TENT」では忘れらんねえよのパフォーマンスが始まっている。暴走覚悟でオーディエンスに火をつけていくライヴはいつもの彼らの真骨頂。最後の“バンドワゴン”ではイントロをトチるものの、それすらもこのバンドの「らしさ」に変えて、この日の日中の気温同様、熱く観客を沸かせてしまう。

一方、「EAST ISLAND STAGE」と「PLANT STAGE」の昼間の時間帯は、新世代とも呼べるバンドが目白押し。最後、ディレイやリヴァーブの嵐とともに、ヘッドアンプを駆使しながら爆音を叩き付けたSuiseiNoboAzもすごかったが、現代のUSインディ・シーンとも呼応しながら、あくまでポップなパフォーマンスを展開していたCzecho No Republicも多くの支持を集めていたし、毒吐きまくりの歌詞をハイブリッドなロックンロールでドライヴさせていくキュウソネコカミは、自ら「ウォール・オヴ・デス」と客席を真っ二つに分けての狂騒空間を生んでいた。

夕刻が迫り始める頃には、ベテランアクトが流石のステージを展開する。初登場となったeastern youthは、「サヨナラだけが人生だ、って言ってね」と盟友・bloodthirsty butchers吉村秀樹のことを想起せずにはいられないMCを挟みながら“グッドバイ”など、代表曲を連発。3日前にニュー・アルバムをリリースしたばかりのFRONTIER BACKYARDは、過去の名曲で彩られたピースフルなステージを展開し、ZAZEN BOYSは、鉄壁の演奏は相変わらずすさまじいが、“泥沼”ではオーディエンスも巻き込んでのインタープレイを実現してみせる。

しかし、ZAZEN BOYSが終わったところで、主催者から予想だにしない告知が行われる。21時45分から出演を予定していた[Champagne]が、メンバーの川上洋平の交通事故による怪我のため、出演をキャンセルすることとなったことが発表された。詳しくはこちら(http://ro69.jp/news/detail/88498)を御覧いただきたいが、主催者からも本人の無事が説明され、それに胸をなで下ろす。

会場に動揺も走るなか、昨年に続いての出演となったThe Birthdayは、「今ちょっと海の近くに来ています」と歌詞を変えて“涙がこぼれそう”を披露。Dragon Ashは、KjもMCで説明していたが、「BAYCAMP」の主催者である青木氏とは10代の頃からブッキングでお世話になったとのことで、“Fantasista”の前に「ミクスチャーロックは好きですか?」と呼び掛け、圧巻のステージを展開した。

そして、出演中止となってしまった[Champagne]とはいわずもがなの間柄であるthe telephonesは、[Champagne]に触れ、「全然大丈夫なので」と説明する。そして、翌日9月8日に[Champagne]は栃木でベリテンライヴの出演することになっていたのだが、代わりにthe telephonesが出演することも明かされる。「よりイケメンになって帰ってくる」とは、石毛の弁。そして、パーティに集中と、“Urban Disco”“HABANERO”“Monkey Discooooooo”といったアンセムが投下され、最後には今秋発売のニューシングル“Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!”も披露された。

いよいよ日付が変わって9月8日になり、group_inouは「どの曲やろうかと思ったんですけど、この曲しかないなと思って持ってきました」と“RIP”でステージをスタートさせ、eastren youthの『極東最前線』参加曲“SWEETIE”を含む超濃縮のパフォーマンスを叩き付け、GRAPEVINEは、本当に出音が綺麗だったのだが、“ナツノヒカリ”“風待ち”というこの季節ならではの楽曲をやってくれた。

今年は平床政治も加わっての出演となったHermann H. & The Pacemakersは新世代バンドのお手本と言えるような和洋折衷ハイブリッド・サウンドを展開し、ともに大阪でOTODAMAのステージをやって、ダブルヘッダーで車移動してきた東京カランコロンと0.8秒と衝撃。は、両者とも終盤のオーディエンスに火をつけるようなエネルギッシュなパフォーマンスをやってのけた。LOSTAGEは機材のトラブルもあったものの、それも淡々と語るMCでジョークにかえてみせる。

そして、いよいよ大トリ髭ちゃんの登場である。リハの後、無音で登場し、須藤は「SEなし!」と宣言。こんなところでも笑いをとってみせる。“ダーティーな世界 (Put your head)”“ロックンロールと五人の囚人”“黒にそめろ”“テキーラ!テキーラ!”という演奏曲からも分かる通り、超鉄板のセットリストで、次第に明るくなっていく会場に最後の火をつけていく。須藤は途中「おはようございます。髭です。BAYCAMP初めてきました。僕の感想としては……最高です!」と語っていたが、朝日を迎える大トリのポジションは満更でもなかったんじゃないかな。“それではみなさん良い旅を! ”で本編を鮮やかに終わらせ、アンコールは“ギルティーは罪な奴”を投下して、すべてのライヴ・パフォーマンスが終わった。

一方、その後も続いた「FREE THROW TENT」は、今日聴くことのできなかった声を届けたいと[Champagne]の“Starrrrrrr”で締めくくられた。18時間に及ぶ、夏の終わりの祭典は、これにて終了。都市型オールナイト野外イベントとしてすっかり定着した「BAYCAMP」、来年はどんなアクトが登場し、どんな出逢いがあるのか、それを楽しみに待ちたい。(古川琢也)
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