10周年を迎えたPUNKSPRING 2015、最終日の模様を速報レポート

10周年を迎えたPUNKSPRING 2015、最終日の模様を速報レポート

2006年の初開催から今年で10周年を迎えたパンク・ロックの祭典、PUNKSPRING。今回はフォール・アウト・ボーイとランシドをヘッドライナーに据え、3月26日(木)・27日(金)名古屋、28日(土)神戸、29日(日)幕張の3会場にて開催された。

RO69では同フェス最終日、29日(日)幕張メッセ公演のオリジナル・レポート記事を公開しました。

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【PUNKSPRING 2015 @ 幕張メッセ9・10・11ホール】
R&B/ダンス系の「Springroove」、メタル/ラウド系の「LOUD PARK」とともに2006年にスタートした、ジャンル別フェスの草分け的存在=「PUNKSPRING」も今年で9回目。初出演にして大トリを務めるフォール・アウト・ボーイ、2008年のヘッドライン・アクト以来の出演となるランシド、2006年・2010年に続き3度目出演のゼブラヘッド、6年ぶりの登場のライズ・アゲインストをはじめとする洋邦パンク・バンドが、名古屋(3月26・27日:Zepp Nagoya)、神戸(3月28日:神戸ワールド記念ホール)に続きここ幕張メッセに集結。「RED STAGE」「BLUE STAGE」の2ステージで計14組のアーティストが繰り広げた灼熱のライヴを、以下ダイジェストでレポート!

今年1月にリリースされたばかりの最新アルバム『アメリカン・ビューティー/アメリカン・サイコ』を携え、「PUNKSPRING 2015」に新たな歴史を刻んだのはヘッドライナー=フォール・アウト・ボーイ。前作『セイヴ・ロックンロール ‐FOBのロックンロール宣言!』のオープニング・ナンバー“The Phoenix”で勇壮に幕を開けたこの日のアクト、トータル1時間ほどのアクトの中に“Irresistible”“Immortals”など『アメリカン~』の楽曲を積極的に盛り込みつつ、歴代シングル楽曲群も巧みに織り重ねながら、パンク/ロックのみならずヒップホップ/R&B/ダンス・ミュージックなどUSポップ史のエッセンスを高純度凝縮したフォール・アウト・ボーイ最新型の威力をパワフルに体現していた。“Thnks fr th Mmrs”のような鉄壁のFOBアンセムのみならず、最新作のタイトル曲“American Beauty / American Psycho”でも熱いシンガロングを巻き起こしていたのも印象的だった。

そして、約4年半ぶりとなる来日を果たしたパンク・アイコン:ランシド。冒頭の“Radio”の骨太なビートとバンド・サウンドが鳴った瞬間、幕張メッセはあっさり狂騒空間のど真ん中へと導かれる。FOBと対照的に、昨年リリースの最新作『...オナー・イズ・オール・ウィー・ノウ』の曲はアルバム・タイトル曲1曲のみ、“Roots Radicals”や“Maxwell Murder”、ティムのソロ・プロジェクトでもお馴染みのケヴィン(ジ・インタラプターズ)のオルガンをフィーチャーした“Old Friend”など、3rdアルバム『...アンド・アウト・カム・ジ・ウルブス』(1995年)の収録曲を軸に据えた圧巻のステージを展開。「今年は『...アンド・アウト・カム・ジ・ウルブス』から20年、初めて日本に来てからも20年。支えてくれて……ドモアリガトゴザイマス!」と呼びかけるラーズの言葉に熱い歓声が湧き上がった場面は、今年の「PUNKSPRING」を代表する名シーンだった。ラストは“Time Bomb”“Ruby Soho”連射で圧巻のフィニッシュ!

2010年にはヘッドライナーも務めたゼブラヘッドは今回も絶好調。“Call Your Friends”などポップ・パンク重戦車的なサウンドでフロアをアゲ倒したかと思えば、ベン&マッティが「ラッスンゴレライ」「チョトマテ、チョトマテ、オニイサン」と8.6秒バズーカーのネタを繰り出し、マッティが「◯ン◯ン、ビンビン、ボクダイスキ!」の一大コール&レスポンスを巻き起こす。MAN WITH A MISSIONからサプライズで運び込まれたケーキを手掴みで投げ合う狂宴ぶりと、そのままMWAMチームとともに轟かせたJean-Ken Johnny参加曲“Devil On My Shoulder”のハイパーな爆発力が同じパース内に存在するゼブラヘッドの凄味をまざまざと感じさせるアクトだった。一方、パンク/メロコアの硬質なストイシズムを体現するアクトを展開していたのがライズ・アゲインスト。ギターをかき鳴らし“Ready To Fall”を絶唱するティムが“Give It All”ではハンドマイクでステージ下に飛び降り、パンクの化身の如き逞しさでもって柵前でオーディエンスを狂騒の彼方へと煽っていた姿も、“Chamber The Cartridge”の激速ビートでフロアにサークルを描き出していた強烈なヴァイタリティも、そのすべてが決定的瞬間と呼ぶべき名演。最新作『ザ・ブラック・マーケット』(2014年)の楽曲を“I Don't Want To Be Here Anymore”以外にももっと聴きたい!とは思ったが、それでもなお魂を揺さぶるに十分すぎる内容だった。

2009年以来の出演となる、レジェンド:マーキー・ラモーン率いるマーキー・ラモーンズ・ブリッツクリーグは、ヴォーカルにアンドリューW.K.を擁して登場。“Blitzkrieg Bop”“Do You Remember Rock 'N' Roll Radio?”などパンクの歴史的名曲群をエネルギッシュに今この瞬間に轟かせてみせた。今回が「PUNKSPRING」初出演となるUKレゲエ・ミクスチャーの雄=スキンドレッドは、その強靭に鍛え上がったビートでもってメッセを震わせながら“Doom Riff”で高らかなシンガロングを巻き起こし、“Warning”で業火の如き混沌の風景を描き出していった。さらにもうひと組の海外初参戦組は、デンマーク出身&NY発のヴォーカル/ギター/ドラム異色3ピース=ニュー・ポリティクス。デヴィッド(Vo)が時折キメるブレイクダンスやドラムからのバク宙を織り交ぜながら、ポップ・ミクスチャーとでも呼ぶべき躍動感あふれる音像を生み出し、フロア一面のクラップを沸き起こしていた。

そんな海外勢を迎え撃つ邦楽アーティストも精鋭揃い。「日本で一番『PUNKSPRING』が好きなバンド、WANIMAです!」という松本健太の宣誓とともに“1CHANCE”などスカ&メロコアの嵐を吹かせたオープニング・アクト=WANIMA。「かかってこいよ『PUNKSPRING』!」(Hiro)と万感の情熱でフロアを煽り、最新アルバムのタイトル曲“虚言NEUROSE”から“Second Limit”“The Story Is My Life”まで自らの足跡すべてを結晶させたようなアクトを観せたMY FIRST STORY。今年1月リリースのアルバム『Mr.Foundation』の“RIOT”“Take You”で前回出演からの2年間の爆裂進化ぶりを見せつけつつ、 “JET”“Paint It Out!!!!”など過去曲まで格段に大きなスケールで響かせていたKNOCK OUT MONKEY。“夏のトカゲ”であたり一面にタオルをぶん回らせ、「どんだけ楽しみにしてたか、俺たちと勝負しようぜ!」(Shun) 「日本で一番でっかいサークル見してくれよ!」(Jose)と熱く叫び上げていた「PUNKSPRING」5度目の出演・TOTALFATは、ラストの“Good Fight & Promise You”まで高密度な歓喜で会場を満たしてみせた。“Get up, Get up”“Fallen idol”“Blah Blah Blah”とカオスにカオスを塗り重ねて熾烈な音空間を編み上げたSiMは、「俺が世界で一番大好きなランシドというバンドが来ています! スカってめっちゃかっけえ!って思わせてくれたバンドです!」いうMAHの想いの丈をハイブリッド・スカ的ナンバー“GUNSHOTS”に託し、フロアを揺さぶってみせた。

そして、各ステージのトリ前を務めたFear, and loathing in Las Vegas&MAN WITH A MISSION。2012年&2013年に続き3回目の出演となるFear, and loathing in Las Vegasは、最新シングルからの“Let Me Hear”“Abyss”をはじめ、全神経を覚醒させるような“Rave-up Tonight”の狂騒感から“Twilight”の華麗にして凄絶な混沌まで、その無限の可能性を観る者すべての脳裏に鮮烈に焼きつけていった。一方、3年連続「PUNKSPRING」出演となるMAN WITH A MISSIONは、“database”“FLY AGAIN”などキラー・ナンバーに加え、「オ祭リデスノデ、オ祭リニ相応シイ、アホナオ兄サンタチヲ――」とゼブラヘッドのアリ/ダン/マッティを呼び込んで、スプリットEP共作曲“Out Of Control”を炸裂させたり……といった具合に、国境を越えて弾け回るエネルギーと存在感を存分に発揮していた。パンクの歴史と「今」が交錯し合った、至上の音楽祝祭空間。10回目を数える来年は果たしてどんな顔ぶれが?と今から勝手に楽しみで仕方がない。(高橋智樹)
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