GOTR×歌詞太郎、ふたつの歌声がもたらした肯定の光。相思相愛の2マンレポ!
2015.08.06 13:00
GOOD ON THE REELによる企画「HAVE A"GOOD"NIGHT」。2015年7月30日、ゲストに伊東歌詞太郎を迎えたVol.31が恵比寿LIQUIDROOMにて行われた。RO69では、この模様をライヴ写真とレポートでお届けする。
--------------------------
最新ミニアルバム『七曜になれなかった王様』を携え、名古屋・大阪・東京でそれぞれ対バンとワンマンを一夜ずつ繰り広げるGOOD ON THE REEL presents 「HAVE A “GOOD” NIGHT Vol.27〜32」。名古屋でねごとと、大阪では夜の本気ダンスと相見えてきたGOOD ON THE REELが東京初日の夜に迎えるのは、伊東歌詞太郎である。さしずめ、現シーンで勢いに乗るアクトの中でも、強烈なインパクトを残す「歌声」同士の共演と言えるだろうか。
先行する伊東歌詞太郎は、本人含め総勢6名のバンド編成で登場。いわゆる「歌ってみた」シーンで強い支持基盤を獲得してきた彼らしく、ニコニコ動画で注目された“アストロ”(buzzGによる書き下ろし曲)や、みきとP“夕立のりぼん”カヴァーを豪快なバンドサウンドと雄々しく伸びやかな歌声で披露してゆく。GOTR『七曜になれなかった王様』については、「僕は個人の名義でやってますが、バンドが好きなんですよ。バンドっていいなあ、ってアルバムになってて」と語り、一度は歌詞太郎側からの対バンの誘いを断られた経緯を面白可笑しく伝えながら、今回の共演を喜んでいた。ピアノイントロに導かれたオリジナルの美しいバラード“夏の匂い”や、「音楽という存在を応援して欲しい」という思いを込めて届けられる“約束のスターリーナイト”、そしてGOTRに気持ちよくバトンを繋ぐ“僕だけのロックスター”と、ひたむきな情熱と感謝を伝えながら歌の力を引き出す全8曲、素晴らしいステージであった。
後攻にしてホスト役のGOOD ON THE REELは、千野隆尋(Vo)がグッズの「七曜タオル」を高く掲げて登場。バンドの重厚なアンサンブルが新作収録の“夜にだけ”を奏で、千野は魂の震えをそっくりそのまま歌声に乗せてしまうようだ。続いては“存在証明書”。岡崎広平(G)は光が差し込むようなギターフレーズを奏で、高橋誠(Dr)は鋭くも雄弁なタッチでドラマティックな楽曲を支える。宇佐美友啓(B)のベースラインはラウドにぐいぐいとドライヴし、伊丸岡亮太(G)によるハーモニーは、あの千野の恐るべきヴォーカルと鮮やかなコントラストを描くほど印象深いものになっていた。
MCとなると一転、控え目に、穏やかに囁くようにして挨拶する千野。「歌詞太郎先生、出演して頂き、ありがとうございます……」という感謝の言葉に続き、「七曜というのは、月火水木金土日のことで、『七曜になれなかった王様』というのは、天王星・海王星・冥王星のことを表します。えっ、冥王星?って思う人もいるかもしれないけど、僕が小さい頃に習ったときは太陽系に入ってて(笑)」と新作タイトルについて説明していた。七曜に入れなかったとしても、王様は宇宙でたったひとつの星なんだよ、と。誰もがそれぞれの生きる世界で王様なんだよ、と。GOTRの作品タイトルはいつも詩的で美しく、興味深い。
波が寄せるようなサウンドスケープが歌詞の情景と重なる“限りなく透明な”、そして陽性のロックナンバー“うまくは言えないけれど”を披露すると、宇佐美は「歌詞さんのいい人っぷり、ヤバかったねえ」と語り出す。そんなふうに楽しいムードを振り撒きながらも、演奏の場面では“ぼっち部屋のティティ”のエモーショナルな疾走、高度なアンサンブルと感情表現がしっかり手を取り合う“匿名”、そして人間のエゴを曝け出す歌詞と共に、千野が自らの頭を激しく殴打しながら歌う“ユリイカ”と、GOTRの深部に突入していった。
「何もないところに放り出されて、好きなように進んでいいよって言われたら、どこに進んでいいか分からないじゃん。楽しいことがしたいんだけど、そのためには辛いことや苦しいことを経験しないといけない。手探りで進んで、いろんな人に会っていろんな経験をすると、今度はその環境に慣れてしまって、なんでここにいるんだろうって。そういう迷子の人って、たくさんいると思うんです。でも、いろんな人に出会って、いろんな経験をしたことは、すべて間違いじゃないってことです。いろんな出会いを経て、ここに辿り着いてくれてありがとう」。千野がそんなふうに語って、本編の最後に披露されたのは、新作収録の“迷子センター”であった。
幸せと不幸せは遠く掛け離れたものではなくて、実はいつでも紙一重であるということを、GOOD ON THE REELは知っている。哀しくて悔しくて一人泣きじゃくった夜の向こうに、輝かしい明日があることを知っている。当初予定になかったダブルアンコールの催促に応えての“シャワー”まで、ひたすら濃密な時間であった。ただ、GOTRのライヴに触れるといつでも、あれも聴きたい、これも聴きたい、という思いが強く残る。彼らは8/9(日)、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015の最終日に、SOUND OF FORESTにも登場予定だ。こちらもぜひお楽しみに。(小池宏和)
〈GOOD ON THE REEL セットリスト〉
01. 夜にだけ
02. 存在証明書
03. 限りなく透明な
04. うまくは言えないけれど
05. ぼっち部屋のティティ
06. 匿名
07. ユリイカ
08. 迷子センター
(encore)
09.2月のセプテンバー
10. シャワー
--------------------------